1.不快感を覚えた自分に驚いたんだよね
……マジ高に入学してはや2ヶ月。俺たちは1番最初の大きなイベントに差し掛かろうとしていた。
教卓に立った、真面目そうな黒髪ショートのメガネ少女が口を開く。
「えー。それじゃあ今から、文化祭の出し物を決めていきたいと思う」
そう、文化祭である。
どうもこの学校は文化祭のクオリティが高いらしく、他校からも注目されているとの噂だ。そして驚くべきことに4日間もやるらしい。
そんな超一大イベント。当然、俺はとても楽しみにしている……
……ワケないだろ。いい加減にしろ。
どうして愛しい愛しい放課後の時間を使って、陽キャ共の手伝いをしなきゃならんのだ。
面倒ったらありゃしない。それに……ヒナノとのマジックショーの時間が無くなるじゃないか。これは深刻な問題だぞ。訴えるぞ。
……そんな負の感情を持った俺のことなど、誰も気にすることなく。無慈悲に話し合いは始まってしまった。
「それじゃあ。何か案のある人はいないか?」
チョークを手に取った少女が言う。するとクラスメイト達は口々に、やりたい出し物を挙げまくった。
「わたがし屋!」「たこ焼き屋!」「クレープ屋!」
歌舞伎かお前ら。
「……他は?」
少女は挙げられた候補を黒板に書きつつ、他の案を求めてくる。すると……後ろの方から男子2人の声が。
「あっ、ハイハイ!メイド喫茶ならぬ……小学生喫茶ってはどうよ! 女子がランドセル背負ってやんの!」
「いやオメーそれ、雨宮ちゃんのランドセル姿が見てぇだけだろ?」
「だってぜってー似合うじゃん!?」
……それを聞いて俺は。とてつもない不快感に襲われてしまった。
何だよ、それ。ホントに何だよ。その発言がオモシロイとでも思ってんのか。思ってるとしたら、本当にオメでたい頭してんな。
「……」
……見るべきではないとは分かっていたけれど。どうしても気になってしまった俺は、チラッと横目でヒナノの表情を確認した。
ヒナノは……笑っていた。笑っていたけれど……それが作り笑顔なのは、俺でも瞬時に理解出来た。
……辛くなった。そして怒りで身体が震えてきた。
「オメーも見てぇだろ!?」
「まあ、見たくないと言えば嘘になるが?」
「ほらな?」
うるせぇ……うるせぇよゴミ共……!!
遂に堪えきれなくなった俺は…………自分の机の底を蹴りあげてしまった。
『バァン!!!』
「…………あっ」
予想以上に音が響いてしまったので、教室は一瞬にして静まり返り……全員の視線がこちらへと向けられた。
うわっ……ヤバいヤバいヤバい。やっちまった。やっちまった……やっちまったなぁ!
「……」
脳内でクールポコが暴れまくるけれど。無意味だ。
……全員の視線が銃口のように思えてくる。そりゃそうだ……傍から見れば、会議中に急に狂ったヤツなんだから。今の俺は。
だから……ここまで視線を集めちゃった以上は……何か。何かを言わなくては……!!
どうにか紡ぐんだ……言葉を……!!
「……え、えっと。あの。そういった類のイジりは止めた方がいいんじゃない……かな……?」
そして長いような短いような沈黙の後……
「……そっ、そうだよ! アンタ達、雨宮さんの気持ちを考えられないの!?」
切込隊長になってくれた、ギャルっぽい女の子を先頭に。
「陽菜乃に謝りなさいよ!」
「そうだよ!」
クラスの女子達が味方になってくれた。
ああ……女子は群れると強いってのは、小学校の頃から変わらないんだ……と謎の感動を覚える。
そしてとても心強ぇ……ありがてぇっ……! !
「おいおい……ただの冗談じゃん?」
……で。何でお前らは素直に反省が出来ないんだ?
あとこれは個人的なことだが……俺は変な空気になった時に「冗談」の一言で逃げようとする奴が死ぬほど嫌いだ。
「ほら、空気悪くなったじゃんかー?」
「坂下のせいでな?」
「いやいや上村、お前だろ?」
両方だカス共。
そして、これ以上は会議が進まないと判断したのか、教卓の少女は。
「……えっと。今日はこの辺で終わっておこう。また明日も聞くから考えていてくれ」
そう言いつつ、チラッと俺の方を見て……自分の席へと戻って行くのだった。




