(プロローグ)2人だけの秘密基地
放課後の屋上。それはエモの象徴。
そんな場所に立っている俺は、ギラギラと輝いている夕日をバックに、コインを瞬間移動させるマジックを披露していた。
ここにいる……たった1人の少女の為に。
「……で、この手にフッと息を吹き掛けると……」
「あっ! 消えちゃった! どこに行ったの!?」
「コインは……そこに」
そうやって俺が彼女の肩の上を指しながら言うと、目の前の少女も首を動かし、自分の左肩を確認した……そして目を見開く。
「えっ!?」
どうやらコインを発見したようで、彼女は手にそれを持ち、ぴょんぴょんと音を立てて飛び跳ねた。
「えーっ! 何でぇー!?」
その驚嘆している顔に満足した俺は、肩に触れる際にこっそり置いていたコインを返してもらい、右ポケットに仕舞った。
「……はい。今日はこれくらいにしておこうか」
「あー面白かったー!やっぱりシュン君のマジックはとっても凄いね! 惚れ惚れしちゃうよ!」
彼女は満足そうに、パチパチと拍手をする。
しかし他人に褒められ慣れていない俺は……少しだけ小っ恥ずかしくなってしまう。だから袖で顔を隠しながらお礼を言った。
「……ありがとう。お世辞でも嬉しい」
「もーそんなに謙遜しないでよ! 私、本っ当にビックリしたんだからさー!」
「……それは。何よりだよ」
その俺の返事に納得したようで彼女は。
「うん! それじゃあまた明日ね! シュン君!」
と笑顔で俺の名前呼んで手を振りながら、屋上の扉から帰って行くのだった。
……あの少女の名前は陽菜乃。俺の隣の席の女子だ。
背が小さくて、小動物みたいな彼女はとても可愛い。性格も明るくて、友達も多い。困っている人にもすぐ手を差し伸べる、心の優しい子だ。
もちろんクラスでも圧倒的な人気を誇り、陽キャ男子共が勝手に作った『可愛い女子ランキング』『優しい女子ランキング』『付き合いたい女子ランキング』全て1位の三冠女王である。
……当の本人は絶対に知らないだろうけれども。
そんな超絶人気の美少女と陰キャな俺。こんな明らかに別世界の住人である俺達が、2人きりで俺のマジックを見てくれるような関係になったのか……
それを詳しく説明するには、今から1か月前の話をする必要がある。




