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大忙しの初日

 僕とシオリとカバーと、それからゴブリンの奮闘により店はなんとか回っている。


 で、次は誰を救援に呼ぶかなんだけど……。


 =========

 ■現在召喚可能

 ・ヴィクトリア ♀54歳 ゾンビ

 ・タロウ ♂18歳 ゴブリン

 ・ルード ♂169歳 スケルトン

 ・ポチ ♂ 5歳 ワーウルフ

 ・すらっち ♂1歳 スライム

 ・すら子 ♀3歳 スライム

 ・カツオ@フレンド募集中 ♂9歳 ゴブリン

 ・ハイプロテクト 一定時間味方全員の防御力を上げる

 ・ハイオフェンス 一定時間味方全員の攻撃力を上げる

 =========


 そうそう、実は召喚できるのは魔物だけじゃないんだ。どういうわけか知らないけれど、補助魔法を召喚して擬似的に使用することもできる。とはいえ、今回は意味なさそうだからやめておこう。


 まずゾンビのヴィクトリアは選択肢から外すとして、ワーウルフとゴブリンにしようか。そしてすぐにまた召喚をし、急いでピンクのエプロンを着せてシオリのサポートにつかせる。これでかなり楽になるはずだ。


「ギ! ギギギ!」


 さっきのゴブリンはもうすっかり店員が板についてきてる。ビビりまくっていたお客さんも抵抗感がなくなってきたらしく、普通に話しかけてくる人もいたくらい。ただ、僕の言葉しか解らないから、必然的に通訳することになるのだけれど。


 ワーウルフはシオリの料理を手伝っていて、意外と包丁捌きが手慣れていた。うん、この調子なら問題ないね。


 お客さんの出入りも頻繁になってきて、カバーもなかなか忙しそうにしてるが、どうやらサービスが遅れているということはなさそう。


 そして夜になって、ようやくオープン一日目が終了したんだ。


 ◇


「ありがとうございました!」


 最後のお客さんに僕は大きく挨拶をして、マンガ喫茶の開店一日目が終了した。店の中央に集まったメンバー達にまずはお礼を伝えないといけないだろう。


「みんな。今日はとても大変だったと思う。予想よりずっとお客さんが入ってきたし、まるで戦場みたいに忙しかったね。それでも最後までやりきってくれたみんなのおかげで、無事にオープン初日が終わった。本当にありがとう!」


 カバーは照れ臭そうに頭を掻いて、シオリはニコニコしている。まるで疲れなんか感じない。それと召喚した魔物達もなんだか興奮気味だった。


「滅茶苦茶忙しかったけど、面白かったっす。これからも宜しくです!」

「ギギギ! ギギ!」

「ワンワン! ワンワン!」


 召喚した魔物達は騒ぎながらも、現れた魔法陣から帰っていく。


「でも、やっぱり一番活躍したのはリーベルだよねっ」

「え? なんで?」

「だって、結局リーベルが魔物さん達を召喚してくれなかったら、きっといろいろ間に合わなかったよ。昔から、いつも困ったことを解決してくれるじゃない」


 心なしかシオリは普段より声がよく通り、明るくなっている気がする。そして、いつだって僕のことを過大評価するきらいがあるんだ。不思議だなぁって思う。


「僕の力なんて大したことないよ。さて、どのくらい儲かったのかな」

「数えてみるっすよ! ちょっと待ってください」


『本日の収入はコマンドで確認できます』

「え!? あ、カバー。ちょっと待って」


 僕はステータスウインドウを開いてみる。すると、こんな画面が出ていた。


 =========

 ■売り上げ詳細

 ・利用金額の売り上げ:217938G

 ・フードの売り上げ:10796G

 ・売り上げ合計:228734G

 =========


「便利! 数えなくても合計の数値が出てる。今日の稼ぎは228734Gだよ」


 この一言に、シオリとカバーが飛び上がらんばかりに驚いた。


「え、えええ! 一日でそんなに稼いじゃったの!?」

「ヤバ! マジヤバイっすよぉ」

「だよね。僕もビックリだよ」


 それだけじゃなかった。どうやらマンガ喫茶のLvそのものも上がっているらしい。詳しくはこんなことが書かれていた。


 ==========

 マンガ喫茶 Lv17(+12)

 名前:ブルーバード

 所持設備Lv5

 店員:3名

 攻撃:899

 防御:752

 移動速度:303

 サービス力:641

 魔法数:37

 売り上げの詳細は【コチラ】

 ==========


「おおお。どうやら設備とか、配置できるものとかも増えてるようだ。よし、明日からはもっとお客さんが座れるようになるし、本の数も増やせるよ」

「凄い……これからどんどん大きくできちゃうね。私達が開いていた喫茶店より、ずっとずっと人が集まってて、なんだか楽しかった!」


 シオリはちょっと興奮気味になりつつも店内の掃除を頑張ってくれてる。彼女がいなくちゃ絶対無理だった。もう感謝しかない。


 それにしてもこのオリジナルスキルは面白い。ステータスの画面をよく見ていくと、どうやら支出についても細かいところまで調べられるっぽい。これは事務作業とかも必要ないのかも。

 しかし店員の補充は急務だ。これさえクリアできれば当面の問題はなさそうだし、シオリ達も出ずっぱりになっちゃうという事態は防げるだろう。


「じゃあお疲れっすー。また明日!」

「お疲れー。明日も宜しく」


 店内の掃除も終了し、僕はまたお客さんがいなくなった喫茶フロアを見渡して、それから一つの本棚に歩みを進める。

 確か真ん中の本棚上くらいにあの本があったはずだ。


「そうだそうだ。これこれ!」


 手にとったマンガのタイトルは、【サムライソード無双伝説】という、もう名前だけでワクワクするような響きがある冒険モノだ。最近のマンガ召喚で三巻まで召喚することができたんだけど、ちょうど続きが読みたくてしょうがなかったところだった。


「あ、リーベル。何を読んでいるの?」


 椅子に腰かけ読み始めていたら、エプロンを外したシオリが僕の向かい側に座った。彼女もまた一冊のマンガを手に取っている。


「東洋の剣士の話だよ。こんな剣技が使えたら超楽しかっただろうなって、いろいろ想像しながら読んでるんだ」

「ふふ。リーベルって昔から冒険が好きだよね! 男の子ってみんなそうなのかも」

「シオリは……この前のやつか」


 確かタイトルは【幼馴染みが帰ってくるなり私に……】だったかな。幼馴染みとのストレートな恋愛模様を描いたマンガだって言ってたっけ。もしかしてまだゲイムのことを引きずっているんだろうか。


「うん。私は人が戦ったりするより、優しく過ごしている世界を眺めていたいの。だからこのマンガが好き。それに……」


 言いかけて彼女は何かをいうのを止めたらしい。気にはなったけど、それよりもマンガが面白い展開に突入してしまったのでそれどころではなくなってしまった。


「キュー。キュキュキュ」

「きゃ! ……ぱんた君。今頃起きたの? 寝坊助さんだね」


 ぱんたがどこからかやってきてシオリの、どことは言わないが立派な部分に着地した。きっとマスコット的な風貌の奴だからこそ許される離れ技だろう。僕がやったら殺される。


 以来、僕らは店が閉店すると店内でまったりしたり、シオリや僕の家でご飯を食べたりするようになった。仕事は順調でプライベートも楽しく過ごせるようになり、もう何も問題なんて起こらない筈だった。

 読んでいただきありがとうございましたー(^ ^)

 良かったら下にある☆より評価をお願いします!

 次回は勇者パーティの話になる予定です!

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