78.武器との対話は少年マンガのお約束です
さて、ボルさんたちと一緒にレベル上げ兼ソウルイーターの修業だ。
その前にステータスを確認する。
現在の私のLVは23。
途中でモンスターを倒したり、シェルハウスを手に入れる為にアル・コラレを大量に倒していたおかげで、大分市を出る時に比べてLVが4上がっている。
所有してるポイントはSPが11ポイント、JPが8ポイントだ。
色々あってポイントの振り分けもしてなかったし、そちらも済ませてしまおう。
職業の方は聖騎士と魔剣使いどっちを上げた方が良いだろうか?
検索さんのお勧めはどっちですか?
≪聖騎士を推奨します≫
≪魔剣使いの付随スキル『魔剣能力拡張』及び『吸魂』は特定の条件を満たすことによってしかLVが上がりません。ソウルイーターとの同調を高めてからの方が効率的です≫
なるほど。
それじゃあ『聖騎士』をLV5に上げよう。
スキルの方は、『斬撃強化』をLV3に、『肉体強化』、『魔物殺し』をLV4にする。
これでポイントの方は完了だ。
クジョウ アヤメ
LV23
HP :293/293
MP :179/179
力 :279
耐久 :262
敏捷 :174
器用 :165
魔力 :88
対魔力:88
SP :0
JP :3
職業 聖騎士LV5
魔剣使いLV3
固有スキル 検索
スキル
剣術LV4、纏光LV2、聖属性付与LV2、浄化LV2、魔剣能力拡張LV2、斬撃強化LV3、吸魂LV1、受け流しLV6、肉体強化LV4、刺突LV1、ストレス耐性LV2、恐怖耐性LV2、毒耐性LV1、麻痺耐性LV1、ウイルス耐性LV1、毒薬生成LV1、応急処置LV2、番狂わせLV1、逃走LV2、鑑定LV3、メールLV1、魔物殺しLV4
パーティーメンバー
ハル 猫又 LV7
ヤシマ シチミ LV13
ナイトメア LV18
ミキ シオリ LV8
リヴァイアサン LV15
現在のステータスはこんな感じだ。
メアさんのLVは変わってないけど、ハルさん、先輩、栞さんはそれぞれ少しLVが上がっている。
次に魔剣ソウルイーターを強くする方法についてだけど、これも検索さんに調べて貰う。
≪魔剣ソウルイーター 第二解放 条件≫
≪魔剣ソウルイーターとの対話を行う 達成率10%≫
≪魔剣ソウルイーターへの魂の捕食 達成率15%≫
≪魔剣ソウルイーターを使った戦闘を100回行う 達成率36%≫
これが次の条件だった。
『こんなにあっさり分かるとは……。やはりあやめのスキルは規格外だな……』
「ありがとうございます」
検索さん、褒められてるよ。
やったね。
≪……≫
何となく検索さんからもまんざらではない感じが伝わってくる。
『……むしろこれだけ素晴らしいスキルを持っていながら、何故こうも持て余しているのだ? いくらでも使い道はあるだろう?』
≪同意≫
≪私のスキル保有者はもっと私の有意義な使い方をするべきです≫
おっと、なんだか急に風当たりが強くなったぞ。
はい、ごめんなさい。
確かにこんな凄いスキル持ってるのに、全然使いこなせてない私が悪いです。
「あはは、そ、それよりなんか新しい条件が出ましたね? 下二つの条件は分かりますけど、ソウルイーターとの対話ってのはなんですかね?」
しかも達成率が10%になってる。
全然身に覚えがない。
『対話か……。恐らくはソウルイーターに内蔵されている魂と対話する事だと思うが、調べてみればいい』
「はい」
という訳で検索さん、教えて下さい。
≪魔剣ソウルイーターとの対話の方法≫
≪魔剣の所有者はソウルイーターに内蔵されている魂と対話をすることが可能です≫
≪対話する方法はソウルイーターに意識を集中させる事で行えます≫
成程、そうなのか。
私はソウルイーターを顕現させて、剣に意識を集中してみる。
意識を集中、集中……こんな感じだろうか?
(んん……なんだろう……何かが流れ込んでくる感じがする……)
そう思った次の瞬間だった。
『ガルォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!』
「なっ――!?」
突然、目の前にベヒモスが現れた。
その圧倒的な巨体と威圧感を持って私を見下ろしてくる。
な、なんで?
どうしてベヒモスがここに?
どこから現れたの?
『ガルゥゥゥ……』
「……え?」
だがベヒモスは私に襲い掛かる事も無く、ただじっと私を見つめている。
不思議に思っていると、更に気配が増えてゆく。
『キュー、キュー!』
『キシッ、キシシシシ』
『ガルル……』
ゴブリンが、レッサー・ワームが、マイコニドが、スライムが、それまで倒した様々なモンスターが現れたではないか。
「どういう事……? ボルさん、これって――」
私はそこでようやく気づいた。
ボルさん達の姿が無い。
私は真っ黒な暗闇の中に居た。
『ガルゥゥゥ……』
『キシシ……』
『ゴァ、ゴゥゥゥ……』
暗闇の中で、ベヒモスを含めた様々なモンスター達が私を取り囲む。
襲って来る事も無く、ただ私を見つめている。
真っ暗な筈なのに、私にはその姿ははっきりと見えた。
「……もしかしてこれがソウルイーターに内蔵されている魂なの? 私が今まで倒してきたモンスター達……?」
『その通りだ』
「え?」
独り言に返答があった。
振り返ると、そこには一体の骸骨騎士が居た。
『よう、久しぶりだな』
骸骨騎士は気安く手を振った。
ボルさんじゃない。ベレさんとも違う。
でも私はこの骸骨騎士を知っている。
何故ならこの世界になってから、私が一番最初に出会ったモンスターなのだから。
ボルさんたちの仲間であり、彼らのリーダーであった最強の骸骨騎士。
たった一体でベヒモスを倒した規格外の存在。
「……アガさん」
『正解だ。ようやくこっち側に来たか、新しい所有者さん』
カタカタと骸骨騎士改め、アガさんは楽しそうに骨を鳴らす。
『ずいぶん遅かったな。ソウルイーターを強くするためには剣との対話が不可欠なのに、何をそんなにのんびりとしていたんだ?』
「あ、いや、それはその――……」
まさか忘れてました、なんて言えるわけもない。
『そうか、忘れてたのか……』
若干残念そうに、アガさんは肩を落とした。
「て、あれ? 私、今声に出してました?」
『ここはソウルイーターの内側、いわば精神の世界だ。声に出さなくても考えは相手に伝わる。しかし、そうか忘れてたのか……』
「す、すいません。本当にすいません。というか、アガさん? はどうしてここに居るんですか? あの時、死んだはずですよね?」
いや、既に死んでいるアンデッドに死んだって言う表現はどうかと思うけど。
『ああ、死んだよ。死んで俺の魂はソウルイーターに宿った。次の持ち主が誰なのか興味があったからな』
「そ、そんな理由で……」
なんか変わった人だな、この人。
『カッカッカ、アンデッドに『変わった人』だなんて言う君も相当な変わり者だと思うがな。何はともあれ、これで対話の条件はクリアだ。達成おめでとう』
「え……?」
達成って、こんな簡単でいいの?
てっきり何かしらあるのかと思ったけど、本当にただ内蔵されている魂と対話をするだけって事なのか……。
『ああ、第二解放の条件はただの対話だ。本当に大変なのは次からだ』
「次……?」
ソウルイーターの解放条件ってまだ次があるの?
一体どんな条件なんだろう?
『まあ、それは後で君のスキルを使って調べりゃいい。まあ強くなりすぎればアレに眼を付けられるかもしれんが、第二、第三程度なら問題ないだろう。ほら、お前らももう戻れ。会いたがってたんなら、もう十分だろ。散れ散れ』
『ゴゥルルルゥゥ……』
アガさんの声に応じて、ベヒモスや他のモンスターが姿を消してゆく。
……ベヒモスだけは最後まで私の方を見てたけど、やっぱり私の事を恨んでるよね、きっと。
「あの、なんか今色々気になるセリフが聞こえたんですが。アレって――」
『ん? ああ、なんでもねーよ。んじゃ、ボルやベレにも宜しく言っておいてくれよ』
すぅーっとアガさんの姿が薄くなってゆく。
「え、いや、ちょっと待って下さい。なんか露骨に話を逸らされ――」
だんだんと意識が薄れてゆく。
そして私は現実に引き戻された。
「……」
私は無言でソウルイーターの達成条件を確認する。
≪魔剣ソウルイーター 第二解放 条件≫
≪魔剣ソウルイーターとの対話を行う 達成率100%≫
≪魔剣ソウルイーターへの魂の捕食 達成率15%≫
≪魔剣ソウルイーターを使った戦闘を100回行う 達成率36%≫
……対話の部分が100%になってた。
なんだかよく分からない内にソウルイーターとの対話が終わってしまった。




