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現代剣聖物語 モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝  作者: よっしゃあっ!


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69.力技


 走るハルさんを追いかける。

 ハルさんは時折、すんすんと確かめるように地面の匂いを嗅ぐ。


「……みゃぅ」


 そして再び走り出す。

 私達でも付いてこれるようなスピードで。


「……本当に大丈夫なのか?」

「今はハルさんを信じるしかありません」


 訝しげな視線を送る上杉さん。

 まあ、言いたいことは分かる。

 ドラマとかで犬が犯人を追跡するってのはよく見るけど、猫ってそんなイメージないもんね。

 でも栞さんも言ってたけど、猫の嗅覚は人間の数万倍から数十万倍もある。

 人間には分からない匂いも、猫なら分かる――らしい。

 ちなみに犬の嗅覚は個体によっては一億倍近くあるとか。わんわん凄い。

 

 走っていくとどんどん住宅街へと進んでゆく。

 一体どこに隠れているのだろうか?


「みゃぅ」


 するとハルさんはとあるコンビニの前で立ち止まった。

 電気は消えているが、遠目でも窓ガラスが割られ、中のモノが散乱しているのが分かる。


「……ここに犯人が居るの?」

「みゃぅ」


 ハルさんは私の足元にすり寄ってくる。

 頭と喉を撫でてあげると、気持ちよさそうにゴロゴロと鳴いた。

 可愛い。でも気を引き締めないと。


(気配は……何も感じない)


 でも犯人は気配を消すスキルを持っている。

 隠れているとしたら、迂闊に中に入るのは危険だ。

 最適なのは――、


「……先輩、あのコンビニに向けて火球ファイヤーボールをお願いできますか?」

「え? で、出来るけど……大丈夫かな?」


 先輩は不安そうな目で見つめてくる。

 あの中に犯人が居るのなら、周囲を囲んでからいぶり出せばいい。

 病院とか人が多い所では使えないけど、この状況ならこれが一番いいはず。

 私が眼で訴えると、先輩も頷いた。


「分かった。それじゃあ――」

「待て。それでは万が一、犯人をいぶり出せても周囲に引火する可能性がある」


 だが先輩がスキルを使おうとした瞬間、上杉さんが待ったをかけた。


「私がやろう。犯人が逃げないよう周囲を見張っていてくれ」

「……?」


 上杉さんは先輩みたいな遠距離攻撃のスキルを持ってなかったと思うけど?

 とはいえ、上杉さんの言う事も一理あるので、私たちは身を隠しながら四方からコンビニを見張る。

 一体どんな方法を使うのだろうか?

 私達が見守っていると、上杉さんは驚きの行動に出た。


「えっ――?」


 なんと上杉さんは姿を隠そうともせず、堂々とコンビニへと近づいてゆくではないか。

 一体何を考えているのか。

 上杉さんは入口の前までたどり着くと――、


「ふぅー……」


 大きく息を吸い込むと、


「オラァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 その拳を、コンビニに向けて思いっきり突きだした。

 次の瞬間――ズドンッッッ! と凄まじい炸裂音と共に、コンビニが宙に浮いた。


(……え? ……えええええええええええええええ!?)


 ちょ、ちょっとまって?

 なにこれ、どういう事? 

 何が起こったの?


≪ウエスギヒナタはコンビニに向けて正拳突きを放ちました

 その結果、拳圧で地面が割れ、地中の支柱やパイプが切断され、コンビニが宙に浮いたようです≫


 すいません。何を言ってるか、よく分からないです。

 検索さんが今しがた起こった現象について説明してくれるが、意味が分からない。

 なんで拳で建物が宙に浮くのさ?


≪凄まじいステータスの成せる技です

 いや、技と言うよりも力技ですね≫


「え、えぇー……」


 なにそれ、反則じゃん。


「ふぅー……、オラァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 更に上杉さんは宙に浮かぶコンビニ向けてもう一撃。

 飛んでパンチをどーん、である。

 なにあれ? スーパーマン?

 コンビニが隕石でも衝突したかのように破裂した。


(こ、これが『力』3000越えの威力……)


 確かに上杉さんは大量に保有していたSPで、絶戮、修羅、猛攻のレベルを上げた。

 その結果、スキルを使用した場合、彼女の『力』、『耐久』『敏捷』は凄まじい数値へと上昇したのだ。

 でも、それにしたってこれは反則でしょう?

 ただの殴る、蹴るがもはや必殺技の領域に入ってる。


(こんな威力、ソウルイーターの盾でも防ぎきれるか分からないよ……)


 この人、単独でベヒモス倒せるんじゃない?

 呆然としていると、不意に足元のハルさんが声を上げた。


「みゃぁー! みゃぅー!」

「ハルさん……? あっ」


 見れば誰かが地面へと落下していた。

 上杉さんじゃない。

 真っ黒な長い髪の凄く整った容姿の女性だった。

 碌に受け身も取れなかったらしく、彼女は地面に落ちると苦しそうにうめき声を上げた。


「がはっ……な、何が……?」


 彼女は何が起こったのか理解出来てなかったようで、身を起こすと周囲を見回し――私と目があった。

 その瞬間、私は理解した。


「――見つけたっ!」

「ッ――」


 コイツだ。

 顔を変えても、姿を変えても、誤魔化せない程の歪な気配を感じる。

 そして先程までは分からなかったが、彼女からはむせ返るような血の匂いがした。

 

「ふっしゃー!」

 

 ハルさんが毛を逆立たせて威嚇している。

 これ程にハルさんが嫌悪感を示すのも珍しい。

 

「これはこれは……まさかこんなに早く再会するとは思いませんでしたよ」


 彼女は表情をひきつらせながらも、私を睨みつける。

 

「もう逃がしません。今度こそ、ここでアナタを止めます」

「みゃぁー!」


 絶対に止めてみせる。

 これ以上犠牲者を出さないためにも。


捕捉

上杉さんはSPを使って、絶戮と修羅をLV10、猛攻をLV7まで上げました。

その結果、上杉さんの『力』のステータスは3800程まで上昇してます。

しゅごぃ……

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― 新着の感想 ―
[気になる点] こんな極悪人でも殺しちゃうと同族殺しになっちゃうの?
[気になる点] シリアルキラーは追跡を考えてなかったのか? 意外と無防備。
[一言] わんわん凄い→クロ『フーン!』→モモ『ペチン』までがワンセット…犬だけにっ!
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