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現代剣聖物語 モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝  作者: よっしゃあっ!


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41.ベヒモス攻略戦 その2


『よう、遅かったじゃねぇか』


 ベレさんはそう言って、こちらに手を振った。

 こちらにってか、ボルさんにか。

 

『よく耐えてくれたな、ベレ』

『大したことじゃねぇよ。丁度いい準備運動になった』


 ベレさんはそう強がるが、相当なダメージを負っているのはすぐに分かった。

 鎧は所々ひびが入っているし、纏っている雰囲気もどこか弱々しい。

 私達が駆けつけるまでの間に相当な戦闘を繰り広げていたのだろう。


「グルル……」


 新たに参入した私達を警戒してか、ベヒモスはじっとこちらを見据えている。

 超怖い。

 レベルやステータスが上がって、レアなスキルも手に入って、私も少しは強くなった自覚はある。

 でも、だからこそ――強くなった今だからこそ、より正確に分かってしまう。

 ベヒモスは本物の化物だ。

 ゴブリンやマイコニドとは比べ物にならない文字通りの別格。


(ほ、本当にこんな化け物を倒せるの……?)


 冷や汗が止まらない。

 出来る事なら今すぐにでも逃げ出したい。

 でも逃げても意味が無いとボルさんは言った。

 今この場でベヒモスを殺さない限り、永遠に私はこの恐怖に囚われ続けることになる。


『あやめよ、吞まれるな』

「ボルさん……」


 ボルさんは弓を構えたまま、私の方を見る。

 

『恐怖は生物にとって重要な感覚だ。これが麻痺すると、自らに歯止めをかける事が出来なくなる。だが逆に飲み込まれても、その生物は歩みを止めてしまう。飼いならすのだ。己の中の恐怖を。難しいかもしれぬが、生物はそうやって強くなる』


 アンデッドの身でありながら、その言葉には陽だまりのような温かさが込められていた。

 体の中でじんわりと、ボルさんの言葉がしみこんでゆく。

 すぅーはぁーと深い呼吸を繰り返す。

 うん、だいぶ落ち着いた。


「……すいません、大丈夫です」

『ふっ、良い顔だ、頼もしいぞ』

「はいっ」


 同じように、私は前で震える先輩を抱きしめる。


「ふぇ!? あ、あやめちゃん!?」

「大丈夫です、先輩。私達が付いてますから」

「う、うん……!」


 先輩も落ち着いてくれた。

 てか、私よりも切り替えが早い。

 ちょっと耳が赤いのが気になるけど、この感じなら大丈夫だよね?


『さて、本番はここからだ、と言いたいところだが……』


 ボルさんは未だ警戒を続けるベヒモスを見て、次いで私と先輩を見る。


『あやめよ、盾を出せるか?』

「あ、はいっ」


 私は馬から降りて、魔剣ソウルイーターを取り出す。

 えーっと、盾を出すにはどうすればいいのかな?


≪魔剣を出すのと同じ要領で出来ます≫


 あ、そうなんだ。ありがと、検索さん。

 という訳で、盾さん出てきて。

 すると、禍々しい光と共に、直径一メートルくらいの盾が現れた。

 

(あれ、形が違う……?)


 アガさんが使ってた盾は十字型のゴツゴツとした形状だったのに対し、私の盾はちょっと細長い五角形の形をしたシンプルな造りだ。

 多分、所有者に合せてサイズが変化しているんだと思うけど……。


(てか、全然重さ感じない……)


 右手に持った魔剣同様、盾もまるで重さを感じない。

 重量感はあるのに、自分の体の一部のような感覚さえしてしまう。

 剣と盾を少し動かしてみる。

 聖騎士の職業補正も入ってるからだろうか?

 何とか出来そうな感じがする。


『ほう、中々様になってるな』

「あ、えっと、ありがとうございます……」


 えへへ、ボルさんに褒められちゃった。

 目の前にベヒモスが居るというのに、ちょっと気分が高揚してしまう。


「む、あやめちゃん、なんか嬉しそう……」

「みゃーう……」

「え、そんな事ないですよ、先輩。てか、なんでハルさんまで?」


 なんでそんなむっとしてるのさ?

 すると、ガンッとベレさんが槍を地面に叩きつけた。


『テメェら、浮かれんのはそこまでにしとけ』

「う、浮かれてなんて――」


『――来るぞ』


 その瞬間、空気が変わった。

 極寒の氷の中に閉じ込められたかと錯覚するような強大な威圧感プレッシャーと殺気。

 

「グルル……」


 どうやら、動こうとしない私達を見て、ベヒモスは仕掛ける気になったようだ。

 爪を地面に突き立て、ぐっと体を丸めるような姿勢になる。

 ビキビキと黒い皮膚の上からでも分かるほどに、後ろ足がパンパンに膨れ上がり、血管が浮き出ている。


「グォォァァアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオンッ!」


 直後、ベヒモスは弾丸の様なスピードで飛び出した。

 

(なっ、速ッ――!?)


 その巨体に見合わぬ超スピード。

 目で追い切れない。

 一瞬で、ベヒモスは距離を詰める。

 ちょ、ちょっと待って!?

 盾を出したのは良いけど、コレどうやって使えばいいの?

 慌てふためく私の後ろから声が響く。


『――落ち着け、あやめよ』

「え……?」


 すぅっとボルさんが私の左手に手を添える。

 骨と皮しかないその手はひんやりして冷たかった。

 ボルさんに動かされるまま、私は盾を眼前に突きだす形になった。

 ベヒモスの角がもうすぐ目の前まで迫っている。


『さあ、今だ! 盾を強く握りしめろ!』

「~~~~~~ッッ!」


 ボルさんに促され、私は盾に力を込める。

 その瞬間――ガキィィィンッ!! と。

 

 凄まじい音が周囲に鳴り響いた


「え、あ……?」


 気が付けば、目の前に迫っていたベヒモスが体を大きくのけ反らせ天を向いていた。


「グォォ……?」


 ベヒモス自身も何が起きたのか分からないのだろう。

 困惑の表情を浮かべている。


『今のが受け流しだ。盾に収められた魂を消費し、敵の攻撃を弾き、受け流す』

「……」


 ぽかんと、私は目の前の現象が信じられずにいた。

 あれだけの巨体の衝撃を喰らった筈なのに、盾はヒビ一つ入っていない。

 それに私の体にも全く反動や負担が無い。

 

「ぼ、ボルさん、盾の使い方知らないって……?」

『ああ、盾の『出し方』は知らぬ。だが、盾を出した後の使い方、技はアガを見てある程度、覚えている』


 そ、そうなんですか……。

 でも助かった。

 マジで死ぬかと思いました。

 

『さて、ぶっつけ本番になるが、盾の使い方を伝授しよう。あやめよ、心して掛かれ。さもなくば、死ぬぞ?』

「は、はいっ」


 よ、よしっ! やってやる。

 ここまできたらもう腹を括るしかない。

 魔剣と盾――この二つを使いこなして、ベヒモスを倒してやる!


一応補足 

性能としては キキの反射>盾によるパリィ くらいに考えて頂ければと


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