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現代剣聖物語 モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝  作者: よっしゃあっ!


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37.雑魚狩りは廃人の道へと続いていると誰かが言った


 さて、検索さんによればスライムやレッド・スライムは水場に多く生息しているとのこと。

 ワイズマンワームと生息域被ってない……?

 なんかもうなにがなんでも私たちとワイズマンワームを戦わせようとしていないだろうか?

『鑑定』も手に入ったし、出来れば二度と会いたくないモンスターなんだけどなぁ……。


「水場かぁ。……あれ? でも、昨日河原に行った時には全然いなかったよね、スライム。あのでっかいミミズばっかりで」

「そうですよね……」


 もっと上流の方とか?

 もしくは郊外の田んぼとか、あとは溜池とか?


「そう言えば、昨日行った公園にも噴水や大きな池があったよね。水場ってそういうのも含まれるんじゃないかな?」

「いや、先輩流石にそれは――」


 ……あり得るかも。

 検索さんはあくまで『水場』としか言っていない。

 なら水のあるところなら全て水場と言えるのかもしれない。


 ――検索さん、スライムの生息できる水場って公園の池とかでも大丈夫なんですか?


≪――肯定します≫


 正解だった。

 先輩の直観すごいなぁ。

 というわけで私たちは公園へと向かった。





「……たくさん浮かんでるね」

「ですね……」


 公園の噴水には大量のスライムが浮かんでいた。

 ただぷかぷか浮かんでるだけで、こちらが近づいても何もしてこない。


『スライムは基本的に無害な生物だ。衝撃にも強く、多少の攻撃ではびくともせん』

「凄いですね、スライム」


 検索さんで調べたけど、ボルさんの言う通りスライムは物理攻撃にはめっぽう強いモンスターらしい。

 ただ代わりに火や熱にはめっぽう弱いらしいので、そこを突けば簡単に倒せるそうだ。


(加えて倒しても大して経験値も入らないらしいんだよね……)


 通常のスライムは火で簡単に倒せるが、入る経験値は物凄く少ない。

 検索さんによれば、スライム三十匹を倒して、ようやくゴブリン一匹と同じくらいの経験値だそうだ。

 レッサー・キャタピラーより低い。

 とてもじゃないが効率が悪すぎる。


(でも……その『経験値の少なさ』が役に立つ場合もあるんだよね)


 レッド・スライムを探すと同時に、検索さんに調べて貰った『あるスキル』の取得方法。

 それを試すのにスライムはうってつけなのだ。


「先輩、お願いします」

「うん、火球ファイヤーボール


 先輩の放った火球はまっすぐに噴水に打ち込まれる。

 あっという間に十匹以上のスライムを消滅させた。


≪経験値を獲得しました≫


 頭の中に流れるアナウンス。

 よし、まだレベルは上がってない。

 やっぱり『経験値』ではなく『数』を稼ぎたいのであれば、スライムは最適なモンスターだ。

 先輩の火球三回で噴水に居た三十匹以上のスライムは全滅した。


「みゃうー」

「ミャァ」


 ハルさんとナイトメアさんが水面に浮かぶスライムの魔石を食べる。

 魔石はナイトメアにとって貴重な栄養源らしい。

 ついでにハルさんにも無害と分かって安心してからは、積極的に食べさせてる。


「赤いのは居なかったね」

「ですね。次は池の方に行ってみましょう」

「うん」


 噴水に居たスライムを全滅させた私たちは次に池の方へ向かった。


「おお、凄い数」

「なんかクラゲの大発生みたい……」


 中央の池には大量のスライムが浮かんでいた。

 越前クラゲの大発生みたいだ。

 

「これ百匹以上居るんじゃない?」

「ですね……」


 よし、これだけの数なら『あの条件』を満たせるかもしれない。

 

「先輩」

「うん」


 水面に浮かぶスライムの大軍に向け、火球を放つ。

 物の数分で八割近いスライムを倒す事が出来た。

 

≪経験値を獲得しました≫

≪一定条件を満たしました≫

≪スキル『魔物殺し』を取得しました≫


 よし、条件達成だ。

 スキル『魔物殺し』はモンスターと戦闘する際、LVに応じてステータスが上昇する効果が得られるスキルだ。おまけにモンスターを倒した時の経験値もわずかに増加する。

 その条件はLV15までに百五十体以上のモンスターを倒すこと。

 割と緩い条件に見えるが、モンスターから得られる経験値は種族や個体によって異なるし、ゴブリンやマイコニド、スカルシープなどの比較的弱いモンスターでも百体ほど倒せば、LV15は確実に超える仕組みになっている。

 なので狙ってモンスターを倒さなければ、実はこのスキルの達成条件はかなり厳しいのだ。

 私もこのスキルの存在を知ったのは今朝になってから。

 対ベヒモスに向けて色々とスキルを検索している内に、偶然見つける事が出来たのだ。

 それだけではない。

 私には無理だったけど、先輩には更に強力なスキルが与えられてる筈だ。


「あ、あやめちゃん、今頭の中にアナウンスが流れて『魔物殺し』と『不倶戴天』ってスキルを取得したって」

「おめでとうございます、先輩っ」

「わっぷ、あやめちゃん、嬉しいけど苦しいよぉー」


 疑問符を浮かべる先輩を私は素直に祝福する。

 スキル『不倶戴天』は『魔物殺し』の上位版のスキルだ。

 その条件は『魔物殺し』よりもさらに厳しく、LV10に上がるまでに二百体以上のモンスターを倒す事。

 先輩は私とパーティーを組んでから、レッサー・キャタピラー、ワイズマンワーム、スケルトン、マイコニド、そしてスライムと経験値効率の悪いモンスターばかり倒してきた。

 その結果、偶然ではあるがLV10に上がるまでに『不倶戴天』の条件を満たすことが出来たのである。


『不倶戴天』 モンスターと戦う際に『不倶戴天』のLV分、ステータス及びスキルの効果を倍加させる。


 LV1であれば、ステータスは変わらないが、スキルのLVが上がれば、上がるほど先輩のステータス、そして火力は上昇する事になる。

 先輩は元々魔法スキル依存の戦闘スタイルだ。

 それが更に高火力になるのであれば、これ程心強い事はない。

 まあ、欲を言えば私も取得したかったけど、こればっかりは仕方ないよね。


『驚いたな、こんなスキルがあったとは……』

『雑魚ばかり狩ってちゃ意味ねぇと思っていたがこんな裏技があったとはな……』


 ボルさん、ベレさんも驚いてくれたようだ。

 少しはこれで戦力も上るだろう。

 さて、『倒した数』で達成できるスキルは取得出来たし、あとはレッド・スライムだけど……どこにいるかな?


「――あっ、あれじゃない?」


 先輩が池の中央を指差す。

 そこには赤い色のスライムがぷかぷかと浮かんでいた。

 

「あ、あれですね。間違いないです」


 色だけでなく、なんか他のスライムと比べて妙に愛嬌のあるスライムだ。

 なんか妙に可愛い。

 

「えーっと、あれ、倒すんだよね?」

「は、はい……」


 先輩もちょっと戸惑ってる。


「……(ふるふる)?」


 レッド・スライムはじーっと私たちを見つめてくる。

 なにかようですかー? と聞いてきそうなくらい警戒心がない。

 な、なんだろう……他のスライムは意思らしいものを感じなかったのに、あのスライムは意思や感情のようなものを感じる……。

 色違い――上位種になると、やはり通常種とは違うと言う事だろうか?

 で、でもあれを倒せば大量の経験値とポイントが得られる……!

 可愛い……凄く可愛いけど、覚悟を決めなきゃ……。


「せ、先輩、お願いしま――」

 

 だが次の瞬間だった。


「えっ?」

「あっ」


「……(ふるふる)?」


 空から飛んできた何者かがレッド・スライムを捕まえ飛び立ったのだ。

 

「な、何あれ……?」


 それは普通の鳥じゃなかった。

 その鳥には羽や肉体が無く、骨だけの骨格標本のような姿をしていた。

 その姿に私はすぐにあるモンスターを思い浮かべる。


「スカルターベ……」


 おそらくはあれが『メール』を取得できるもう一種のモンスター『スカルターベ』なのだろう。

 ボルさんの言ってた通りなんて速さだ……。

 それにレッド・スライムに接近されるまで全然気づかなかった。

 

「ちょっとー、返してよー! それ私たちの獲物だよー」

「……ポッポー」


 スカルターベは鳩のような鳴き声を上げると凄まじい速度でどこかへ飛んで行ってしまった。

 

『……油断したな。影の中でなければ、私が射抜けたのだが……』

「仕方ありませんよ。追いかけますか?」

『いや、無理だ。スカルターベは素早い上に、一日で千里を飛ぶことが出来る。一度逃せば、もう会う事は出来ぬだろう』

 

 つまり無理ってことか。

 残念だが仕方ない。


「でも何であのスライムを捕まえたんですかね?」

『さあな。スカルターベの生態までは知らぬ。あやめのスキルで調べられないのか?』

「あ、やってみます」


 検索さん、教えてください。


≪……質問の仕方が雑になっています≫


 あ、すいません。

 スカルターベは何でレッド・スライムを連れ去ったんですか?


≪スカルターベは赤色のものを好んで巣に持ち帰る習性があります≫


 ああ、成程、あのモンスターの習性だったのか。

 ハトって言うよりカラスみたいだ。

 ちなみに巣がどこにあるかわかりますか?

 

≪ここからおよそ千三百キロ程離れた人間の町に在ります≫


 遠っ!

 何それ、千三百キロって、関東通り越して東北まで入っちゃってるじゃん。

 

≪より遠くからより気に入った赤色のものを巣に飾ることでスカルターベは種としての優位性を示すとされています≫


 何その面倒くさい設定……。

 じゃあ事実上、あのスライムは諦めるしかないってことか。

 

「はぁー、まあ仕方ないか。それに東北ならいずれ行くことになるだろうし……」


 ベヒモスの件が片付いたら、そっちも考えないとなぁ……。

 あ、検索さん。それじゃあ、他のレッド・スライムが居る場所を教えてくれませんか?


≪――……ゼロです≫


 え?


≪クジョウアヤメの活動範囲内で確認出来るレッド・スライムはゼロです。同種の個体は確認されませんでした≫


 そ、そんなぁー……。

 せっかくの経験値獲得のチャンスが……。

 まあ、強力なスキルは手に入ったし無駄足じゃなかったので良しとするか。


 でもあのスライム、ホント可愛かったなぁ……。


 いつかまた会えないだろうか?

 そんな事を思いながら、私達は次のモンスターを探す為、公園を後にした。



ちなみにその後、レッドスライムは東北で運命の出会いを果たす……


捕捉

『魔物殺し』は偶然手に入れられる可能性もあるスキルですが、『不倶戴天』は検索や事前情報が無い限りはほぼ入手不可能なレアスキルとなっています。加えて本編のカズトさんのように経験値アップのスキルを持っていれば絶対に入手不可能な仕様。

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本編及び外伝よろしくお願いします
本編及び外伝どちらもよろしくお願いします

― 新着の感想 ―
[気になる点] カズトさん進化して必要経験値増えた上にレベルリセットしてるから不倶戴天ワンチャンないのかな
[一言] 一応、効率性を求めて再び火魔法でスライム狩りをしまくって『魔物殺し』と『不倶戴天』のスキルをまだレベル10以下の栞に取得してもらった方が良いかもね。 もちろん魔石大量入手もかねて
[気になる点] >『不倶戴天』 モンスターと戦う際に『不倶戴天』のLV分、ステータス及びスキルの効果倍加させる。 誤字報告しようか迷ったんですが“スキルの効果を倍加させる”or“スキル効果を倍加させ…
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