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現代剣聖物語 モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝  作者: よっしゃあっ!


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29.骸骨騎士がめっちゃ喋る件



「ハッ、ハッ、ハッ……」


 手が冷たい。汗が止まらない。

 心臓があり得ないくらいバクバク音を鳴らしている。

 どうする、どうすればいい。


『そこに居るのだろう? 二人……いや、二人と一匹か。出てこい』


 駄目だ。完全にバレてる。

 あの骸骨騎士、索敵系のスキルを持ってる。

 ああ、気付かれてないと思ってた。

 考えが甘かった。

 私達はただ『見逃されていた』だけだ。

 その気になれば、いつでも手を出す事が出来た。

 その事実を認識し、私は足元が崩れるような感覚に陥った。


「あ、あやめちゃん……」

「みゃぁー……」


 先輩とハルさんが不安げに見つめてくる。


「ッ……」


 私の所為だ……。

 せめて、二人が逃げる時間は作らないと。


「……二人はここに居て下さい」

「えっ」

「みゃぁ?」


 覚悟を決め、私はソウルイーターを顕現させ、姿を現す。

 すると、骸骨騎士が驚いた様な気配を見せた。


『……そうか。妙な気配だとは思っていたがその剣……』

 

 弓の骸骨騎士はじっと私の持つ魔剣を見つめる。

 もう一体の槍の骸骨騎士が前に出ようとするが、彼はそれを手で制する。


『答えてくれ。その剣をどこで手に入れた?』

「……」


 どうしよう?

 なんて答えればいい。


「こ、これは――……」


 考えた末、私は正直に話すことにした。

 もう一体のベヒモスと彼らと似た骸骨騎士が戦っていた事。

 その戦いの末、その二体が相打ちになった事。

 その後、スケルトンたちに追われ、剣を握ったら主に認められたこと。

 全てを説明した。

 その間、二体の骸骨騎士は黙って私の話を聞いてくれた。


『……そうか』


 私の話を聞いた後、弓の骸骨騎士は空を仰いだ。


『アイツは――アガは自分の仕事を成し遂げたんだな……』


 アイツ……? アガ?

 もしかして、あの骸骨騎士の知り合いなのだろうか?

 アガってもしかしてあの骸骨騎士の名前?

 弓の骸骨騎士が近づいてくる。

 殺意は感じない。

 でも反射的に剣を構えると、


『……言った筈だ。危害を加えるつもりはない』


 そう言って、骸骨騎士は自分の持つ弓を、私の持つ魔剣にコツンと当てた。

 

『おい、ベレ。何時まで警戒しているつもりだ? お前もこっちに来い』

『――チッ』


 頭の中に響くもう一つの声。

 槍の骸骨騎士が歩み寄り、自分の槍を魔剣に当てる。


『……馬鹿が。俺たちの居ねぇところで勝手にくたばりやがって……』

「え、あ……えっと?」


 この声、もしかしてこの槍の骸骨騎士の声……?

 凄くガラの悪いチンピラのような声だ。


『何見てんだ!? 穿たれてぇのか、コラッ!』

「ぴぃ!」

『止めろ、馬鹿が。女性を怯えさせるな』


 ゴンッ! と骸骨騎士の弓が、もう一体の頭を叩く。

 物凄く鈍い音がした。え、地面がちょっと陥没してる? うっそぉ……。


『済まない。コイツは昔から短気なんだ。気を悪くしないでくれ』

「え、あ、いや……」


 というか、この状況がまず意味わかんないんですけど?

 なんでアナタ達普通に話してるんですか?


『何だ? 我々が言葉を発するのがそんなに不思議か?』

「え、えっと……はい」


 弓の骸骨騎士は手を顎に当て、ふむと考える。

 仕草が物凄く人間臭かった。


『そうか……。見たことの無い地域に飛ばされたと思ったが、この辺りには我々のような知性を持つモンスターは少ないのか?』

「いや、あの……そもそもモンスター自体居ないんですけど……」

『モンスターが居ない? 嘘をつくな。トレントがそこいら中に生えているだろう? それにここまでくる道中、何度も他の種族に出くわしたぞ?』

「い、いえですから――」


 私はこの町にモンスターが現れた経緯も説明した。

 この世界には、モンスターなんて生き物が存在しない事も。

 ついでに検索さんに教えて貰ったカオス・フロンティアと言う、今のこの世界の事も。


『なんと……』

『テメェ、冗談抜かしてんじゃねぇぞ、こらぁ! ここが俺たちが居た世界とは別の世界だぁ? 信じられる訳ねぇだろうが!』

「ひ、ひぇ……」

『ベレ、二度目だ』

『おごっ!?』


 また叩かれた。

 槍の骸骨騎士――ベレさんは先程よりも強めに陥没した。


『しかし……そうか。ここが我々が元居た世界でないのならば、君の反応も得心がいく。しかし……』


 弓の骸骨騎士さんは再び顎に手を当てて考え込む。


『二つの世界が融合か。にわかには信じられんが……我々がベヒモス共と戦っていた間に発生したあの黒い霧が原因か……? だが、だとすれば我々の世界の人間もこの世界に来ている筈……。どこか別の場所に飛ばされたのか? いや、そもそもこれほど大掛かりな術式だ……。可能だとすれば『賢者』様、もしくは『死王』さん辺りか……? しかし彼女らにそんな事をする理由など――……』


 あの、もしもーし。

 置いてけぼりにしないで下さい。

 

『おい、ボル! てめぇこそ一人で浸ってんじゃねぇ!』

『おごっふ!?』


 あ、今度は弓さんの方が地面にめり込んだ。

 凄いな、あの巨体が体の半分近く沈んでる。


『す、済まない、ベレ……。つい……』

『ついじゃねーだろ。たくっ』


 なんだろうか、この二人。

 モンスターなのに凄く人間臭い。

 見た目は鎧を着た骸骨なんだけど、言動が完全に人間のそれだ。

 一体どういう事なんだろうか?


『面倒くせぇ話なら後にしろ。つーか、アレをどうにかすんのが先だろうが』


 そう言って槍の骸骨騎士――ベレさんは後方の『巨獣防壁』に覆われたベヒモスを指差した。

 検索さんの言う通りなら、あの障壁に覆われている間、ベヒモスはその場から動く事は出来ない。障壁の中では未だに黒い霧が発生し、ベヒモスを蝕んでいる。


『……先に言っとくが邪魔するなら穿つぞ、女?』

「へ? し、しません! 絶対に邪魔なんてしません!」


 なんなら今すぐこの場から消えますんで、どうか見逃して下さい、お願いします。


『止めろ、ベレ。アレが発動した以上、我々にはどうする事も出来ん』

『……リィンが命懸けで残した呪いだぞ? アイツの命を無駄にするつもりか?』

『無駄ではない。時間は……稼げる』

『稼いだところでどうなる? リィンもアガももう居ねぇ。俺ら二人だけでアイツをどうにかできると思ってんのか?』

『無理だろうな。だが――まだ勝算はある』


 そこで弓の骸骨騎士は私の方を見た。


『少女よ、私の名はボル。君の名を教えてくれないか?』

「えっと……九条クジョウあやめ、です……」

『クジョウアヤメか、良い名だな』


 弓の骸骨騎士――ボルさんの眼窩の炎が青白く揺らめいた。


『クジョウアヤメ、単刀直入に言おう。我々に手を貸してくれないか?』

「……はい?」

『なっ……!?』


 槍の骸骨騎士――ベレさんが驚きの声を上げる。

 

『ボルっ! てめぇ何を言って――』

『見たところ、君はまだまだ弱い。そちらに隠れているもう一人と一匹は君よりさらに弱い。碌に実戦も積んでいないのだろう? 表情や仕草を見ればわかる。力を手に入れて間もない赤子のようだ。

 だが私から見て、この地域に蔓延るモンスターの力量レベルは個体や種族にもよるが、凡そ君たちより上だ。加えてベヒモスの様に夜に活動するモンスターや、我々の様に休息を必要としないモンスターも居る。昼夜問わずモンスターの脅威が君たちに襲いかかる。その中で生き残るのは至難だろう』

「ッ……」


 そう言われて、私は息を吞む。

 この人は、私達の状況を恐ろしく的確に見ている。

 弓の骸骨騎士は籠手を外し、白い剥き出しの骨の手を私に差し出す。


『君たちには力が無い。我々にはこの世界の情報が無い。我々が君たちに力の使い方を教え、成長するまで君たちを守ろう。代わりに君たちは我々にこの世界の事を教える。どうかな?』

「……」


 その手を、私はじっと見つめる。


「……一つ、教えて下さい」

『何かな?』

「貴方たちは……人を襲いますか? 人を……殺すモンスターなんですか?」

『……』


 骸骨騎士はしばし沈黙し、やがて首を横に振った。


『少なくとも我々は人に危害を加えるつもりはない。我々の目的は二体のベヒモスの討伐と我らが王の眠る墳墓へ帰還する事。この二つだけだ。人を殺める理由はない。尤も、牙を向けられれば我らも自衛の為に迎え撃つがね』

「……分かりました」


 決めた。

 ちらりと後ろを振り向く。

 先輩はあわあわしていたが、ハルさんは私の意図を組んだのか、こくりと頷いた。

 好きにしろと言っているように見えた。


「貴方の事は何と呼べばいいですか?」

『ボルと呼んでくれ、九条あやめよ』

「……分かりました。これからよろしくお願いします、ボルさん……」


 私は骸骨騎士の――ボルさんの手を取った。

 冷たい、真っ白な骨だけの手なのに、不思議と彼の手には温もりが感じられた。



骸骨騎士について

アガ 魔剣の前所有者。3話で死んだ奴。四体の中で最強。

ボル 魔弓の所有者。紳士オブ紳士。四人のリーダー

ベレ 魔槍の所有者。ガラが悪く短気。もっとカルシウムを取れ

リィン 魔杖の所有者。鎖骨美人。紅一点。ベヒモスに置き土産をして死亡


仲間が増えたよ、やったね、あやめちゃん


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― 新着の感想 ―
[一言] >仲間が増えたよ、やったね、あやめちゃん おい、やめろ
[気になる点] 「我らが王の眠る墳墓へ帰還する」 これもしかしてティタンが守ってたあれでは だとしたら魔剣をとった知性ゾンビ、ティタンを殺したカズトたちとどう絡んでくるのか楽しみ
[一言] 鎖骨美人(スケルトン)ですね
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