21.鑑定スキルを手に入れよう!
モンスターを探して、町を歩く。
明るくなった分、町の様子がきちんと分かる。
「一晩でこんなに変わったんだね……」
「ですね……」
どこもかしこも酷い有り様だった。
いたるところからあの巨大な木が生え、道路や建物を我が物顔で占領している。
それにモンスターに襲われたのだろ。
死体があっちこっちに転がっていた。
(……キツいなぁ、これ……)
こみ上げる吐き気を必死に抑える。
先輩も口を手で押さえて、必死に我慢していた。
「意外と、外に出てる人は少ないね……」
「家に籠城しているか……。昨日のうちにどこかの避難所に避難したのかもしれませんね」
それにしたって妙に人の姿が少ない気もするけど……。
相変わらず木はごちゃごちゃしてるし、歩きづらい。
まあ気にするほどでもないか。
「そういえば、私たちのスキルは一通り試してみたけど、猫――ハルちゃんのスキルって確認しておかなくていいの?」
「うーん、確認しようにもハルさん、猫ですし……」
「みゃぁ?」
足元をとてとて歩くハルさんが反応する。可愛い。
うーん、ハルさんのスキルかぁ……。
ハルさんのステータスが見れれば一番いいんだけど、残念だが個人情報なので、検索さんが検索してくれないのだ。
今までの出来事から、持ってるのは間違いないんだろうけど……。
「うーんと、相手のステータスが見れる……えーっと、『鑑定』だったっけ? 検索を使えば、そのスキルの取り方とか調べれるんじゃないかな?」
「あ、成程、先輩流石ですね」
「ふふーん、もっと褒めるがいいー♪」
ドヤ顔してぺったんこな胸を張る先輩マジ可愛い。
頭をなでなでして上げると、凄く上機嫌になった。
先輩、マジ先輩。
(えーっと、検索さーん、『鑑定』の取り方って教えてくれますかー?)
≪スキル『鑑定』の取得方法≫
≪初期獲得スキル欄、もしくは職業により取得。
ドロップボックス、ガチャのスキルオーブより一定確率で取得。
『ワイズマンワーム』、『クレイジーエイプ』、『パラディンゴブリン』等の『鑑定』取得モンスターの討伐の際、一定確率で取得、もしくは魔石の摂取。
『観察』、『検分』、『調査』、『速筆』、『書類作成』のいづれか二つをLV3まで上げる≫
へぇー、色々と方法があるのね。
初期獲得スキルに鑑定がある人とか居るんだ。いいなぁー。
あとスキルのレベル上げでも手に入るのか。でもどのスキルも持ってないし、これは無理かなぁ。
ガチャは論外だし、ドロップボックス?てのは何だろうか?
≪ドロップボックス≫
≪カオス・フロンティアのフィールドに点在するボーナスアイテム。外見は宝箱のような形をしており、中にはスキルを取得できるスキルオーブ、ステータスを上昇させるアイテム、傷を治すポーションなど、様々なアイテムが入っている。ただし一度開けて、中のアイテムを取り出すと、ドロップボックスは消滅し、二度と同じ場所には出現しない≫
宝箱……!
そんなのもあるのかぁー。ほんとにゲームみたいね。
ちなみにどこにあるかは教えてもらえますか?
≪ドロップボックスの所在は一定時間ごとに変化します。現在、クジョウ アヤメの周囲1000メートル以内にドロップボックスはありません≫
無いのか。残念。
でも、あれば教えてくれるみたいだし、そこは融通が利くのね、検索さん。
いいね、サービス精神旺盛ですね。最高です。カッコいい!
≪…………≫
あれ? 今なんか、検索さんが白けたような気配が……。
き、気のせいだよね?
ともかく『鑑定』が手に入る方法として、現状私たちが可能なのは――、
「モンスターの討伐かぁ……」
検索さんが教えてくれた三種類のモンスター。
『ワイズマンワーム』、『クレイジーエイプ』、『パラディンゴブリン』のいずれかを討伐すれば、一定確率で『鑑定』が手に入る可能性があるらしい。
検索さん、その三種類のモンスターはこの周辺には居ますか?
あと、そいつらって、私たちでも勝てるモンスターですか?
≪『ワイズマンワーム』及び『クレイジーエイプ』はクジョウ アヤメの活動範囲に生息しています。どちらも現時点で討伐可能です≫
おお、やった。
どうやらこの近辺にその二種類のモンスターは居るらしい。
しかも今の私たちでも勝てるレベル。
「先輩、『鑑定』スキルが手に入る方法が分かりましたよ。この近くにいるあるモンスターを倒せば、手に入るみたいです」
「おー、やったねっ」
「みゃぁー」
というわけで早速、そのモンスターを探そう。
検索さん、そのモンスターの特徴は?
≪ワイズマンワーム≫
≪レッサー・キャタピラーの進化系。巨大なミミズのような見た目だが、動きは鈍い。体表から繊維質を溶かす白い体液を出す。レッサー・キャタピラーが生息する場所に共に生息している場合が多い。肉質は柔らかく美味。また胴体にある白い部分を斬れば簡単に死亡する為、討伐は非常に簡単≫
はい、却下。
要するに虫じゃんか。肉が美味しいとか、そんな情報要らんし。
無理無理、そんなの相手に出来ません。
もう一体の方でお願いします。
≪……クレイジーエイプ≫
≪大型の猿のような見た目のモンスター。非常に知能が高く、群れで行動する。『鑑定』によって敵の強さを見極め、自分より弱いと思えば、『狂化』を使い襲い掛かる。群れはクレイジーエイプ、レッサー・エイプ、ルーフェ・エイプ、ホブエイプなど数種類、数十頭で構成されることが多い。クレイジーエイプ一体のみであれば討伐可能。群れであれば達成は困難≫
こっちはこっちで中々面倒な相手だ。
一体だけなら私たちでも勝てる可能性があるが、群れだと難しいと……。
(勝てる可能性で言えば断然ワイズマンワームだけど……うーん……)
でも虫なんだよねぇ……。それもデカいミミズ……。
うー、だけどハルさんのスキルや今後のことを思えば『鑑定』は必須。
リスクと嫌悪感を秤にかけ、私たちは重い足取りで河原へ向かった。
≪ワイズマンワーム≫
≪体表から繊維質を溶かす白い体液を出す≫
大事なことなので、あとがきにも書いた。




