表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代剣聖物語 モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝  作者: よっしゃあっ!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/98

18.決意の朝


 ――目が覚めた。

 頭が痛い。脇腹がズキズキと痛む。


「あれ……私……?」


 何があったんだっけ……?

 そうだ、確か私はあの巨獣の角を喰らって、吹き飛ばされたんだ。


(その後、どうなったんだろう……?)


 もう朝日が昇っている。

 ずいぶんと長い間気を失っていたようだ。


「寒い……」


 しかも体が何故かずぶ濡れになっていた。

 もしかして私は川に落ちたの?

 小学校の近くには土手があった。

 運が良かった。もし地面や建物に落下していたら、きっと私はその時点で死んでいただろう。 

 

「みゃぁー」

「ハルさん……?」

 

 横を向けば、ハルさんがお座りしていた。

 まさか、ハルさんがここまで引き上げてくれたとか……?

 いや、流石にそれは無理だよね……?


「よ、良かった。目が覚めたんだね、あやめちゃん」

「先輩……?」


 八島先輩の姿もあった。

 酷い泣き顔だ。

 ぜっかくの可愛い顔が台無しじゃないか。


「先輩が……私を引き上げてくれたんですか?」

「うん。この猫ちゃんの後を付いて行ったら、あやめちゃんを見つけて、急いで引き上げたの……」

「みゃぁー」


 先輩が言うには、私は川岸に倒れていたらしい。


「そうだったんですか……」

「ごめんね、拭く物も見つからなくて……。その、上手く脱がせなくって……」

「いえ、このくらい大丈夫ですよ……ッ」


 ステータスが上がったおかげか、多少肌寒くは感じる程度だ。

 むしろ問題は、あの攻撃を喰らった脇腹の方だ。

 すぐに服を脱いで、怪我の状態を確認する。


(目立った外傷は……ないわね。かなり痛むけど、骨折も内出血してる様子もない……)


 正直、ダンプカーに轢かれるくらいの衝撃だったと思うけど……この程度?

 もしかしてこれもステータスが上がった影響なのだろうか?

 それとも――、


「みゃぅ?」


 ちらりと、ハルさんの方を見る。


「これって……もしかしてハルさんが何かしてくれた……とか?」

「みゃぁ?」


 ハルさんは不思議そうに首をかしげている。

 巨獣に突っ込む時も、ハルさんの声と共に、私の体は軽くなり、驚くほど足が速くなった。

 ハルさんが何らかのスキルを持っているのは間違いないと思うんだけど……。


「そ、そうだ! それよりも学校は? 皆はどうなったの?」

「ッ……!」


 私がそう問いかけると、先輩は悲痛そうな表情を浮かべて、顔を逸らした。

 どうしたの? なんで何も言ってくれないの?

 

「……ごめんなさい、あやめちゃん……」


 ぽつり、ぽつりと先輩はあの後何があったのかを話し始めた。

 私が吹き飛ばされた後、あの巨獣は周囲に居た人々に襲い掛かったらしい。

 みんな逃げようとしたのだが、巨獣は易々と追いついて、次々に踏み潰し、飲み込み、殺して回ったそうだ。

 そしてある程度まで数が減ったところで、巨獣はより多く人が集まっていそうな、中学校や高校の方へ向かって行ったらしい。


「……私は運よく助かったけど、殆どの人が食べられちゃったの……」


 それは相当な恐怖だったのだろう。

 話をするだけでも先輩は震えていた。

 その後、先輩は何とか気を持ち直すと、ハルさんと共に私を探して回ったそうだ。

 でも周囲は暗く、見つけるのにはかなり時間がかかったらしい。

 途中でモンスターに襲われなかったのは殆ど奇跡だ。


「それで……日が昇った頃にようやくあやめちゃんを見つけて……」

「そうだったんですね……」


 私は先輩をぎゅっと抱きしめる。


「ありがとうございます、先輩……。助かりました」

「私は何もしてないよぉ……。ただ自分が助かるだけで必死で……何も役に立てなくて……ごめんなさい、ごめんなさい……」


 咽び泣く先輩を、私はただ抱きしめた。

 

「……八島先輩は、悪くないです。私の方こそ、勝手な行動をとって――」

「そんな事ないっ。そんな事ないのっ! うぇぇ……」


 二人で一通り泣き終えると、ようやく気持ちが落ち着いてきた。


(でもこれから……どうすればいいんだろう?)

 

 学校に戻るべきか?

 いや、戻ったところで私には何もできない。

 もしまだ誰か生きているのなら、助けてあげたいとも思うけど、スキル『応急処置』じゃ出来る事は本当に最低限だ。

 その後も、ずっと面倒を見るなんて、きっと私には出来ない。

 ああ、そんな風に考えてしまう自分が嫌だ。

 なんて卑しいのだろう、私は。


(私は――)


 なら、どうする?

 これから、私は何をすべきだ?

 あんな理不尽を、これからも味わうのか?

 全てを奪われ、蹂躙され、ただ逃げまどうだけの生活を送るのか?

 

 ――そんなのは御免だ。


(私は――強くなりたい)

 

 自分の身を、ハルさんを、先輩を守れるくらい強くなりたい。

 助けた子供を、その母親を、あんな無慈悲に殺されることが無いくらいに強く。


 この世界に、理不尽に抗えるだけの――強さが欲しい。


(やってやろうじゃないか……)


 モンスターを狩ってやる。

 経験値を溜めて、レベルを上げて、スキルを手に入れて、強くなってやる。

 あの巨獣を倒せるくらいに強く。

 決意と共に、私は立ち上がった。


「先輩、話があります」

「話……?」

「ええ、あのモンスターと、それとスキルについて」


 まずは八島先輩に私の知ってる全てを話そう。

 濡れた服を乾かす時間くらいはありそうだ。



読んで頂きありがとうございます。

ようやく彼女も覚悟を決めてくれました。

面白かった、続きが気になるという方がいらっしゃれば、ブックマークへの追加や評価の方をしてもらえると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
本編及び外伝よろしくお願いします
本編及び外伝どちらもよろしくお願いします

― 新着の感想 ―
[一言] 本編はすごく面白かったのに…なんかつまらない…
[一言] とても面白いです(^^) 本編共に続きを楽しみにしてます♪
[一言] すごい胸熱な作品だ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ