12.やっぱ検索さんはすげぇよ
とりあえずあの剣や拾った石について調べてみるか。
なんか魔剣って言ってたし、体の中に入ってるし不安過ぎる。
初期獲得可能スキル一覧ってのにあったスキルも調べたいけど、まずはこっちだ。
思念検索ってことは、頭の中で考えるだけでいいのかな?
(えーっと、検索さーん、あの魔剣や石について教えて下さーい)
……これでいいのかな?
≪検索に該当する思念を確認しました≫
お、良かったみたいだ。
わぁー、これ凄い楽かも。
キーボード打つ手間ってけっこう大きいし、腕も疲れない。
≪魔剣ソウルイーターについて≫
≪アンデッド系上位騎士モンスターが使用する武器の一種。長い年月をかけ、敵を屠り続けた結果、持ち主と共に進化した魔剣。非常に希少価値が高く、敵を殺せば殺す程、その切れ味、強度、破壊力は増大する≫
なにそれ、こわい。
完全に呪われた剣じゃん。
聖騎士とは真逆の武器じゃないの?
そんなの私が持ってていいの?
出来る事なら捨てたいんだけど。
≪魔剣ソウルイーターはクジョウ アヤメを所有者として承認している為、破棄することは出来ません。所有者が死亡した場合のみ所有権が移動します≫
あかん、完全に呪いの装備だ。
死ななきゃ捨てれない武器っておかしいでしょ。
クーリングオフはどうしたのさ!
≪補足≫
ん?
≪現在クジョウ アヤメの所有するソウルイーターは九百九十二体の命を葬っています。その為、切れ味、強度、破壊力共に高水準となっています。魔剣ソウルイーターを標準装備にすることを推奨します≫
推奨しなくていいよ!
おすすめ装備とかマジ要らないから!
私モンスターと戦う気はないって言ってんじゃん!
≪続いて魔石について≫
ちょっとスルーしないでよ!
なんで普通に次の回答にいこうとしてんのさ、検索さん!
≪モンスターの核であり、モンスターの体内には必ずこれが存在する。生まれてから死ぬまでのモンスターの経験全てが蓄積されている。これを別の生物が摂取した場合、適性があればステータスの上昇、スキルの取得、経験や知識の共有などが可能となる≫
あーそうですか、凄いですね。
てことは、やっぱりこれって、普通の石じゃなかったんだ。
ん? てことはハルさんはこれが魔石だって気付いてた?
(……みゃぁ?)
服の中に隠れたハルさんが「なにー?」と見つめてくる。
うん、可愛い。
きっと偶然ね。
≪補足≫
≪クジョウ アヤメの所有する魔石は『エアーデの魔石』です。感情が一定値を超えていない為、摂取することは不可能です。パーティーメンバーへの譲渡を推奨します≫
いやいや、石なんて食べる気なんてないから。
パーティーメンバーへの譲渡って……、私パーティーなんて組んでないんだけど?
「みゃぁ……?」
あ、ハルさん、出てきちゃ駄目だよ。
服の中でじっとしてて。
≪ハルが仲間になりたそうにアナタを見ています≫
≪仲間にしますか?≫
……は?
何今のアナウンス?
「みゃぁー」
≪ハルが仲間になりたそうにアナタを見ています≫
≪仲間にしますか?≫
まただ。
また聞こえた。
仲間? 仲間ってパーティーメンバーの事だよね?
え? 人間じゃなくてもいいの?
≪パーティーメンバーについて≫
≪パーティーメンバーは同じ種族だけではなく、他種族とも可能です≫
≪ハルをパーティーメンバーに加えることを推奨します≫
アリなんだ。
猫をパーティーに加えるのってアリなんだ。
しかも検索さんに推奨されちゃった。
えーっと、どうすればいいんだろう?
ステータス欄にそれっぽいのは無いし、頭の中で了承するだけでいいのかな?
≪申請を受理しました。ハルがアナタのパーティーに加入しました≫
どうやら受理されたようだ。
「あ、ステータス欄の一番下にパーティーメンバーって項目が増えてる」
ハル 三毛猫LV9
三毛猫LV9って……。
いや、確かにハルさんは三毛猫だけどさ……。
でもなんでハルさんにもレベル表示があるんだろう?
あ、そう言えばあの時、大量に流れたアナウンスの中にハルさんの名前も出てた気がする。
確か私と一緒にスキルを獲得したとかなんとか。
(スキルの名前は……なんだったっけ?)
『変身』……いや、『変換』だったっけ?
駄目だ。思い出せないや。
検索さん、教えて下さい。
≪他者の所有スキル及びステータスは検索対象外です≫
あ、プライバシーはきっちり守るんだ。
なんでそういうところはきっちりしてるかなぁ。
ちっ、使えない。
≪――≫
あれ? なんだか、今一瞬検索さんが怒ったような気配が……。
き、気のせいだよね?
≪――他者のスキル及びステータスを閲覧する場合、それ専用のスキルがあるため、それを取得することを推奨します≫
あ、そういうスキルがあるんだ。
ご親切にありがとうございます。
あの……怒ってます?
≪――質問の内容が理解出来ません≫
≪このアナウンスはあくまでシステム的な補助であって、感情は存在しません≫
≪使用者の検索に応じて、最適な回答を行う事が『検索』の存在意義です≫
≪そこに感情があると感じたのであれば、それは使用者であるクジョウ アヤメの罪悪感から生じたモノであると考えられます≫
≪また『検索』対象が広義且つ曖昧な内容である場合、システムの回答もまた要領を得ない曖昧な回答になる可能性があります≫
≪情報処理に時間もかかるため、使用者への適切な回答を行うために、『検索』の前に、検索内容の精査を推奨します≫
あ、はい。すいません。
つい調子に乗っちゃいました。
使えないなんて言ってすいません。
ほんと、すいません。許して下さい。
……ちなみに他人のステータスが見られるスキルってどんなのなんですか?
≪スキル『鑑定』、スキル『盗み見』、スキル『閲覧』、スキル『略奪』≫
≪他者のスキル及びステータスを閲覧する場合、この四つが代表的なスキルとなります≫
≪但しスキル『略奪』はスキル効果に付随してステータスの閲覧が可能なため、限定条件下でしか他者のスキル及びステータスを閲覧できません≫
へぇー、色々手段があるのね。
しかし検索って調べれば、調べる程、検索したい項目が増えてくるなぁ……。
全部調べてたら時間がいくらあっても足りなさそうだ。
「まあ、ともかくこれからよろしくね、ハルさん」
「みゃぁー」
まかせてよーと、ハルさんは服の中で頷いた。
ともかくこうして私とハルさんは正式にパーティーメンバーとなったのだった。
さて、まだ眠くないし、じゃんじゃん検索してみるぞ。




