#2 醜いほどに綺麗な剣豪
シーサイド・プラント。俺に服と服従を提供した魔人街の名だ。そして俺の魔法は原点にして頂点ともいえる凄まじいものだった。無論ほかの魔法を見たことがないのであるが。
「人間よ、名を聞いてもよいか?」
mobB?いやオドの量からしてこの町のボスであろう。
「メルン」
特に意はないが、なんとなくの概系で起草した。
「メルンと申すそなたを、我々の新しい騎士に雇いたいのだがこの談に乗っていただけないだろうか?」
「騎士?」
この世界での騎士がどのようなものかわからないが、雇う=サラリー付きとみたのですんなり乗った。
騎士という職が如何なる芸当をこなすのかを知るべく、隣国の人民の街を尋ねることにした。
「見ぬ女だな。」
mobA的反応を見せたのは街の門番だ。ゴロツキに比べ整った図体と完全重装備。敵対は避けたいが一応の身分を話した。
「魔人街シーサイド・プラントの騎士、メルンという者です。この国に存在する同胞を調べるべく参りました。」
「剣のない騎士だと!その莫大な量のオドを使って戦うのか?!」
その件についても、俺はこの街に求める物がある。
「ここで剣を入手することは可能ですか?」
「それならこの街で購入するがよい。」
街の雰囲気の中にコラージュすることは成功した俺であったが、お目当ての武具屋…あった。
店内にはロングソードや曲刀など多数の種の剣がラインナップされていたが、俺は厨二病真っ最中なので、大好きな双剣コーナーを模索した。
「同じ女戦士にツインソードを好む人がいるとは…感激です。」
突然左耳に性癖を刺激された俺は慌ててその言葉に反応した。
「お前も騎士なのか」
「おおっ?そんな鋭い口調だとは思わなくて感激が上乗せ…っ」
男ですって言っても納得のナの字も有り得ない。よって俺はその感激を感激の上乗せにしかできなかった。そしてなんと言っても相手は美しい女騎士(騎士?)なのだ。
「用ないなら私はこれを買って帰る。いいな?」
一際目立つ黒と白の双剣を手にして、俺は会計に向かおうとした。しかし、
「待って。」
「?」
「手合わせ願いたいです。」
女性は一点眼のような真剣な顔つきをした。俺は断る理由もないので、腕試しがてら勝負を受けた。
精算をすませ、女性(名をマリスという)の案内のもとフリー闘技場を訪れた。
「言っとくけど剣使うの初めてだからな。お前が負けたら恥だぞ。」
すると、マリスは腰の西洋剣を抜き、牙突式の構えをとる。
「手加減はしませんよっ!」
同時に、それなりのスピードと共に俺に先制を加えてきた。
俺はとりあえず避けようと言う気持ちで少し動こうとした。すると意識よりも先に俺はマリスの背後に回っていた。
「あ、これは多分攻撃のチャンスだな。」
「バカな!」
俺は右側の黒い剣を抜き、気持ち強めで振り下ろしてみた。マリスも流石で、反射的に西洋剣を背中に回した。しかし剣は数メートル先に放たれて俺はとりあえずマリスの顔あたりに回し斬りを寸止めした。
「こうしたら多分お前の顔は赤く染まるよな。私の勝利でいいか?」
「…。」
美しい顔が台無し…とは言えなかった。マリスは名誉をぶち壊されたからか、或いは、わからないが涙を零している。
「そうです。あなたの勝利です…。」
その後数分間沈黙が続き、俺が口を開こうとしたときだった。
「大量のオド、あどけない希少童顔、未知数の力を持ちながら初対面でお前と呼び、なんかそれが今は亡き騎士団長様と似ててついこんなみっともない姿を露出してしまって…。こんなんじゃ騎士の器の礎なんて疎遠な話…。」
どうやらそうだったらしい。俺もテレパスではあるまいし人の気持ちを熟読するスキルは持ち合わせていないが、
「団長さんの話を聞かせてくれないか?」
知ることぐらいは誰にだってできる。
知ってしまうこと…なんて。