#1 強さが尋常ではない魔法
中学生になってから、俺は少しとばかり…
いやかなり退屈をしていた。
在り来りな冒頭になってしまってすまないと言いたいところだが、俺の人生は始まって12年なのもしかり。特にスポーツやお受験とかをした訳でもなく、本当の意味での退屈空虚人生を送っていたのだ。前略。
無論友達と言えば共通のゲームカテゴリのユーザーと言えど所詮ネッ友とたいそう変わらない関係だった。彼女いない歴=年齢、全てにおいてアベレージ。校門の前に転がっていたちっぽけな缶コーラを蹴飛ばした。
俺は死んだ。
死因は分からない。だがその瞬間が俺の最期だった。
「…てか死んだのに意識あるな。」
文字通り意識はある。でも景色がない。大体〇ろう系ラノベのこんな感じの展開から始まるのは異世界生活であろう。
「これが死後のセカイなのか…。」
と口ずさんだその声は俺の声ではなかった。とっても透き通っていて、〇イキャスとかで映えそうな癒し系の声だった。
気づけば景色も登場している。愉快に踊るイソギンチャクに、カクレクマノミ。そして自身に備え付けられているまな板ボディ。そう、海の中だった。
「また死ぬのか…俺…いや私は!!!」
咄嗟に水を掻き分けて水上にリスポーンした。どうやら死は2回連続で経験させてくれないようだ。
さて、まずは現状を整理しよう。俺、いや私は同年代の女の子に転生していて、浜辺に裸体でいる。
「異世界なんだし、魔法とか使えるかな?」
その前に真っ裸の女子ってのは気が引けるので服を探しに行くことにした。熱帯雨林を抜け、小さな町に到着すると、早速…。
「我が魔人族の領土に人間無勢がなんの用だ。」
mobAに絡まれた。
「なんか服くれ。」
「ふ、服ならくれてやるがそれだけのためにわざわざここまできたのか?」
mobAは話のわかる奴で、割と綺麗なローブとブーツを提供してくれた。
「先程は人間無勢と言ったが、貴様からは多量のオドを感じる。」
オド、と言うのは俺も知っていて魔力や魔素といった感じのガジェットだ。
「なぁ魔人さんよ、魔法ってどやって使うん?」
mobAはよくあるなぜ知らないの的反応は見せず丁重に説明する。
「イメージ」
うん、とてもわかりやすい。
「やってみるよそれ。」
イメージ。女の子なんだし、ちょっと可愛げな殺戮ビームとか撃ってみるとするか。
目標、あそこの岩山。目的、破壊。発生と同時に全てを飲み込む!
「ルイニング・ライト!!!」
その瞬間、俺は魔人族一帯を服従させた。