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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

チャイルドプレイ

チャイルドプレイ

作者: 突貫


1.僕は死なないよ


 そう言うと、男の子は指を切り落とした。

 笑顔で走り去る少年は、向こうの男の影に隠れ、その手を振った。


 指はある。


 翌日、同じ通りを歩いていると、昨日の少年。


「僕は死なないよ」


 足をザクザクと刺し走り去ると、女の影に隠れて足を見せる。傷は無いようだが……


 更に翌日、また少年だ。


「僕は死なないよ」


「君はマジシャンかな」


 返答する事なく、少年は腹部を裂いた。

 思わず顔を顰め、目を背ける。

 少年は警官の背後でお腹をポンポンと叩いて見せた。


 その翌日、裏通りを行く。いつもの通りは避けた。流石に気味が悪い。


「僕は死なないよ」


 上から人が降って来た。それはあの男の子。目の前で色々な物をぶち撒け、潰れている。

 思わずへたり込み、声を失っていると、半壊した少年は色々な物を引きずって歩き出した。

 そしてようやく思い至る。

 彼は生者ではない。最初から死んでいたのだ。そしてその事に気付いていない。無邪気で哀れな子供だ。

 少年は老人の影から五体満足で現れ、それを誇る。


「可哀想に」


 翌朝、新聞に目を通す。警官が死亡。その身体は腹部を裂かれていた。最近凄惨な事故が多発しています。気を付けましょう。

 工場で男性の指切断。女性の足がガラスの下敷きに。老人が転落死。


 ……体が震えだした。恐ろしくて堪らない。今日は早くに出よう。そして遠回りをして行こう。


 玄関を出ると少年がいた。


「僕は死なないよ」


 焼け爛れた少年が抱きついて来た。



2.公園の少女


 住宅街の中にある公園。そこで頻繁に見かける少女は、ブランコが特等席であるらしく、見かければいつもそこにいる。それは何故か漕ぐでもなしに、楽しそうに微笑むばかりであった。


 ある日話しかけてみた。


「お友達は居ないのかしら?」


「要らないわ。ここに座ればそれだけで楽しいもの」


 少女の言葉に首を傾げ、周囲を見渡すも、それらしい物はない。


「もう行くわ、バイバイ」


 数日後、ある家の屋根裏から複数の遺体が見つかった。

 現場は凄惨であり、至る所で這いずり回った様な血の跡があった事が漏れ聞こえて来た。被害者達が死の淵で、脱出を模索したのだろう。残忍な犯人の手口は、数日間に渡って死に至らしめるというものであったそう。人々は恐怖に慄いた。


 しかし何より自分が驚いたのは、場所が例の公園の前であった事。


 次の日、嫌な予感を抱きつつ、その公園を訪れてみた。そしてあのブランコに座ってみる。


 公園の木の隙間の向こうに、屋根裏の小窓。そこには血の手形や苦悶の表情がべったり……


 それから少女を見ていない。



3.秘密の場所


 ホームセンターのテレビ売り場。連日続く不幸な報道に対し、少年は無反応であった。それが自分の身に起こるとは思わず、何処か遠くの世界の事であると認識しているのだろう。もしくは慣れか……


「強盗事件は何処でも起こり得る」


「そうだね」


「いきなり床が抜けるかも知れない」


「よくあるね」


「怪しい大人に付いて行ってはいけない」


「子供にもだよ」


 そう言うと、少年は汚れた財布を取り出した。何やら随分と入っている様子。


「欲しい?」


「馬鹿な事を」


「よく大人が落とすんだよ。僕達の秘密の場所で」


「……本当か?」


 男は後日、町外れに放棄された施設で遺体として発見された。死因は床が抜けた事での転落による事故死。第一発見者と見られる少年達は、自分達の所為であると涙ながらに話したという。



4.鏡


 子供は純粋であり、環境次第では何色にも染まる。物事を正しく判断する為の善悪の区別も同様であり、大人が理解し教育しなければならない。放任主義は教育ではない。


 男は笑顔で手を振り壇上を降りると、息子の背を押した。


 帰りの車中において、男は息子を叱りつけると、その耳を真っ赤になる程に引っ張る。


「間の抜けた顔を晒すな、私まで間抜けに見える!」


 帰宅した男は、鏡の前に息子を縛り付けた。


「鏡を見ろ! その間抜け面が直らない限り、お前は一生そのままだ!」


 そんな事が幾度か続くと、息子の表情も変わった。それに対して男は、自らを誇った。


 しばらくの後、男の度重なる浮気を経て、妻は離れていった。それと共に息子も去った。


 その息子は最後に告げた。


「それは鏡を見ても直らない。だから一生そのままだ」


 ここが何処かは分からない。助けが来る気配は無い。



5.答え合わせ


「人はいつか死んでしまう。怖いね」


 それは、自らも含めた失う怖さ。


「人は何の為に生きているんだろう」


 それが個人の単位であるならば、小さな目標の積み重ねが過程となり、いずれ大いなる意味を生むだろう。


「魂ってあるのかな」


 魂など偶像。胸に手を当てようとも問答は脳によって処理される。あるのは心臓。


「お化けっているのかな」


 それは電気信号の残り香。言わば焼き付いたフィルム。そこに意思はない。記憶の記録。だが二次的に何らかの現象を引き起こす可能性はある。


「死神っているのかな」


 私がそうだ。



 少年達は秘密の闇の中、紙幣を並べて語らう。




※それぞれの事柄における解釈は、あくまで小説内に留まります。御了承下さい。


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