タイムスリップしたみたいー!
「つまりあなたは…二百年前の日本から今日にタイムスリップしてきた。と言いたいんですね…?」
凛と名乗った少女は、僕の顔と先程貰ったばかりの学生証を交互に見ながら、そう言ってきた。
「…どうやら、そうみたいです…」
そう、どうやらそうらしいのだ。
二〇一六年4月1日。
僕の19回目の誕生日と大学の入学式を兼ねたこの日は、二百年後への未来旅行の日も兼ねていた。
一時間程度の入学式が終わり、大学のオリエンテーションも終わり、予定が空いた僕は大学の敷地を歩いて回っていた。
すると、今まで見たことがない様な大きさの虹が目の前に現れたと思いきや、この世界に来ていた。
そして、目の前には彼女がいたというわけだ。
先程までの、大学生活のスタートを喜んでいた自分はどこかに行ってしまった。
なぜなら、原っぱの上に正座で座らされており、両腕を縄で縛られているという状況だからだ。
彼女は、僕が危険人物の可能性が有るからと言って。何やら不思議な力で僕を分縛ると、対話を求めてきた。
彼女の話から、ここは二二一六年の日本であり、全国民が超能力を持った世界だと云うことだけが分かった。
どちらもおいそれと納得できない話ではあるが、ここが明らかに大学の敷地内ではない事や、彼女が僕の体を縛った不思議な力から、常識に捕らわれない考えを持った方が良いと思う事にした。
それに、抵抗してもいいことなさそうだし。
「うーん…なるほどですね…」
と、彼女が口を開いた。
「確かに貴方は二百年前の人の様ですね」
「分かってくれて何より。」
彼女は、ここに来たばかりの僕に最近の総理大臣の名前や、起こったニュースなど様々なことを質問してきた。そして、その回答から明らかに「現代人」ではないと推測したのだろう。
「ええ、実を言うとまだ信じきれていませんけど、その方が面白そうなので」
「…楽しんでくれて何よりです」
こちらはあまり楽しくはないけれど。
「楽しんでくれたついでに、この腕の縄解いてくれない?」
敵対心がない事は伝わった様なので、解放を申し込む事にした。
「うーんと、条件があるんですが言ってもいいですか?」
「ん、なんでしょう?」
「私、昔の日本に興味が有るんです。貴方の話を聞いてみたいんです。」
「ああ、その程度ならいくらでも。」
「あと、この世界だと行く宛てもないと思いますので、私の家にご招待しますよ。」
なんだこの子、聖人か?とりあえず行く宛ては確かにないので、お言葉に甘える事にした。
後ろ手に縛られていた縄を解いてもらい、凛さんの家に連れていってもらった。
ここは田舎の様だけれど、2016年の世界の外観とあまり変わっていないようだった。