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貧乏ガール

作者: 渡辺 ゆき

世間から見たら私は至って普通の高校生だった。高校にも通っていたし、帰り道だって、友達と寄り道したり遊んだり。楽しく過ごしていた…授業中もふざけたり。


この前までは…それができた。普通の女の子。


しかし…


私の全てが変わる…


それは2週間前…


両親から告げられた。私は、言葉を失った。


"離婚"。


このたった二文字が並んだだけなのに、重い。空気が今までとは違う。暗くて沈んでいる。言葉も声さえも出ない。



父は1ヶ月前に仕事を首になり、その後、仕事を再び探す。


と、家族の誰もが思っていた。


しかし…父は、働きもせず、酒を好きな時間に外で飲み、さらに、何件も居酒屋に行き、飲みまくる。そして、酔っ払ったまま、家に帰ってくる。それだけならまだよかった。父は、2ヶ月間、お金を使い果たした。母が一生懸命働いて貯めたお金、私たちが生活していくためのお金、人から借りたお金、もう、見たことのないくらいの数字の長さの借金をつくり、あることに全部使ってしまったのだ。それは、競馬やパチンコなど遊びで使い果たしてしまった。そのため、家を出なくてはならなくなった。私たち家族は、ホームレス状態となった。学校も行けない。遊びにも行けない。食べることでさえ、大変な状態。母は、1ヶ月たった頃、私の前から消えた。もちろん、父もいなくなった。まだ、小学生の私は、働くこともできない。両親も私の前からいなくなった。残ったのは…妹。まだ、幼稚園に通いだした妹は、泣いていた。


私は、暗闇に迷い込んだ。不安を抱えながら妹とホームレスの生活を送った。食べ物は、お店から貰うしかなかった。誰から何を恵んでもらうことくらいしか、できなかった。その辺に落ちているものや、畑の物を取ったり。そんな毎日を送っていた。


中学生になって私は、歳を誤魔化して働いた。高校生と言って。見た目は疑われそうなまだ幼い感じがあるが、背は高いほうだったため、誤魔化せた。そんなにお金にはならないけど、少しでも稼がなければならなかった。必死だった。お弁当屋に、コンビニ。毎日毎日。妹は、その間、ホームレスのところに寝かせてから。昼も夜も。とにかく必死だった。生きることに。


そして、高校生くらいになった頃、もっとお金になる仕事を見つけ、だんだんとホームレスから、ある小さい喫茶店の上にあるアパートに住ませてもらえるようになった。学校なんて行けない。働く。働く。妹は、中学生になった。学校に通わせた。私はとりあえず、働いた。



そんなある日、見たことのある人が私たちのアパートのところにいた。私は、声をかけた。

「なにか、用ですか?」

と言うと、顔を私のほうへ向けた。すると、

「はなー!」

と言う。私は、その時、思い出した。母だった。

「何しに来たの?」

と言うと、

「はなー!」

と喜んでいる。私は、その時、怒りを覚えた。

「何か、用ですか?」

と怒ったように言うと、

「元気だった?」

と世間話を始めた。すると、

「お姉ちゃん!」

と妹が出てくる。妹は、

「お母さん…」

と何気なく言った。その後に、妹は、部屋まで走って行った。母は、

「元気そうでよかった。はなもなみも。」

と言う。私は、怒りしかなかった。今までの苦労と苦しさを知らないくせに。私たちの前から突然消えたくせに。私たちの前に普通現れる母を軽蔑した。私は、無言で部屋に行った。


次の日、再び、母が来た。私は、母が何を言っても聞かず無視した。母は、誤りもしないし、とことこと普通に来る。私は、

「お願いだから、もう、来ないで!私たちの前に現れないで!」

と怒りながら帰った。それから、会うことはないと思っていた。


しかし、2週間が経った時…


電話が鳴った。知らない番号だった。私は出た。すると、病院からだった。それは、母がもう少しで亡くなるということを告げられたものだった。私は、その時、頭が真っ白になった。何も考えずに、足が病院に向かっていた。私は、病院に着くと、

「お母さんは、大丈夫なんですか?」

ともう泣きそうで涙が目に溢れながら、慌てながら。病院の先生は、優しく案内してくれた。母のいる病室に行くと、母は、ベットのところで編み物をしていた。私は思わず、母のいる病室に慌てて

「お母さん!」

と叫ぶ。母は、私を見て

「何、そんなに慌ててるの?」

と言う。

「だって…聞いたから。お母さんの知り合いに。」

と言うと、母は、笑った。

「大丈夫よ。」

と言う。その時は、母のことは、大丈夫だと思っていた。私は、できる限り妹とお見舞いに行く。


バイトが終わった後もちょくちょくと。母はいつも笑っていた。何事もないように。お見舞いに行くと、母の世話をしたり、少し話したりこの10年くらいの母との空白を埋めようとするかのように。


母が亡くなる前日のこと。母は、いつものように笑っていた。でも、母は、少し元気がなかったような気がした。それでも、いつものように過ごした。母は、

「みんなで写真撮ろう!」

と言う。私と妹は、

「うん!」

と、看護師さんに頼み、撮ってもらった。その後、母は、

「最後かもね!」

と言う。私は、

「え?」

と言うと、母は笑っていた。本当に亡くなる寸前に母は…


そして、次の日、母は亡くなった。私と妹は泣いた。泣くことしかできなかった。


それから数日経って、母がいた病室の引き出しから、手紙が出てきた。看護師さんは、

「あなたたち、宛てよ。」

と渡した。私は手紙を開いた。そして読んだ。涙が溢れ出た。妹は泣き叫んでいた。

「お母さん…お母さん…」

と。私は、妹の手を握った。


はなとなみへ


あなたたちがこの手紙を読んだということは多分、もう、この世界にはお母さんがいない時だと思います。


はな、なみ、ごめんね。本当にごめんね。お母さんのことを恨んでも仕方ないよね。お母さんは、自分が病気だということを知った時1番最初に頭の中に浮かんだのは、はなとなみでした。あの時、私はあなたたちの前から去った時、はなとなみは、まだ、小学生と幼稚園。そんな2人がどうしていたのか、ずっと考えていました。でも、私は、弱くて逃げてしまいました。本当にごめんね。ごめんね。と誤ることしかできません。あなたたちが大人になった姿を見ることはできないまま、この世界からいなくなってしまう私を許してください。そして、はなとなみのことを愛しています。誰よりも。ずっと。永遠に。母より。


と書かれた手紙。私は、涙が止まらなかった。その日は、ずっと1日中泣いた。次の日起きると目が腫れるくらい。


私は、


お母さん!ありがとう!私もお母さんのこと大好きです!ずっと。永遠に。


空を見上げた。空は、きれいだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 冒頭で「2週間前(離婚前)まで普通の高校生」と書いてあるのに、中程で「(離婚後に)まだ小学生だから働けない」となっています。 推敲しましょう。
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