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精霊国物語  作者: 物語
7/12

07.赤竜討伐編‐06


「レックス様、敵来ます、その数、ざっと千を越える軍勢とのことです」

「承知した、第3陣の警戒体制を最高ランクに引き上げ、攻撃に備えよ」

「はっ!」


 谷に囲まれるような地形に位置する要塞フレーズ。

 イツラトゥスを守護するという名目で、国より離れた山々を抑え込むことが出来るところにある、軍事都市である。

 そこのトップは、精霊軍中将レックスであり、その実力はアレスも認めているほどであった。


 そんな要塞都市フレーズは、現在混乱状態に陥っていた。

 近隣の村人たちが、大勢来たかと思えば、その何十倍もの、一つ目が現れたのだ。

 そんなことは、歴史上初のことであり、当然ながら、兵士たちはパニック状態であった。


「くそ! 何故、こんなことに」


 レックスは、頭を抱え込むようにし、叫ぶ。

 ――彼は防衛策の天才だ。

 多くの人々が、レックスのことをそう呼んだ。

 それでも、だからといって、こんなことは予想外であった。


 まず、偵察隊。

 彼らの中には、高等精霊師も居た、それも、隠蔽魔法に優れており、簡単に敵に見つかる様な雑魚では無かった。

 それなのに、2日過ぎたのに未だ戻らず。


 さらに、彼の右腕であった、精霊軍中佐リッテルも、近隣の偵察に行ったきりだ、それこそ、死んだのか……?

 最悪のビジョンが脳内に浮かび上がりそうになるのを、頭を振り消しさる。


「これは、夢か……いや、違うな、悪夢か……」


 いくら、強いと言っても、中将。

 それも、相手は、自分と同等、それ以上の敵。

 レックスは、策を導くために、試行錯誤する。

 と、そうこうしている内に、伝令士の者が再度来る。


「……くそ」

「レックス様! 敵が、第3陣に到達し、交戦中とのことです。被害多数、対応策の命を授かりに来ました」

「そうか……仕方ない。魔砲弾の使用を許可する」

「はっ」


 魔砲段。

 大きさは、ちょっとした小屋ほどの大きさと、かなり巨大な武器である。

 魔力を糧に、打ち込む魔法銃の強化版。

 いかに、頑丈な一つ目であろうが、一たまりも無いはずだ。


 とりあえず、このことを精霊軍総本部はすぐに知るだろう。それから、救援が駆けつけるとして、早くて一週間か。

 ギリギリ、篭城可能であろう。


 とにかく、我らが要塞都市フレーズの底力に頼るしかほかないか。

 そう結論を出し、レックスは、武器を手に取り、戦線へと赴いた。



 ◇



「剣技、【アカファイゼン】」


 全範囲に放たれた炎の斬撃。

 それは、一つ目の体を焼きつくし、消滅した。


「ここは、通さないぞ。私が居る限り、絶対に」


 要塞都市フレーズ。

 かつて、精霊軍創設期に建設された旧王城の名残もあり、要塞都市フレーズは、防衛に特化した構造である。

 中心の都市を、三つの高壁が囲い込むように、そびえ立つ城壁。

 外側から、第3陣、第2陣、第1陣と呼ばれ、それぞれ、各門が存在する。

 歴史上、最も甚大な被害を被った、赤竜の災厄でさえ、第1陣にたどり着くことさえ、不可能であり、全世界でも有数の防御都市である。


 ――そんな要塞都市フレーズには、かつてない程の脅威が迫っていた。

 一つ目の侵攻に寄り、門は破られ、精霊軍は蹴散らされ。

 防衛7日目現在、残る防御網は第1陣を残すのみとなっていた。


 精霊軍中将レックス、アイゼンを含む、戦闘部隊は一つ目を何十時間も殺し続けているのだが、敵数が多く、全討伐は難航していた。

 それに加え、要塞の貯蓄食料も尽きそうだ。


「応援はまだなのか! くそ、こんなことが起こるなんて……私の策も、意味がない……」


 己の力の限界を越え、意識がもうろう中のレックスは己のふがいなさに怒り気味に嘆いた。

 その隣には、要塞都市フレーズ副司令官のアイゼンも居るが、魔力を使い果たしつつあり、フラフラと今にも倒れそうであった。

 だが、目は死んでおらず、ふらつく体をなんとか、立て直し。

 そして、鼓舞するために、アイゼンは声大魔法を使う。


「我らが、我らが破られれば、ここも終わりだ! みな、死を恐れず、全力で立ち向かえ! それこそが、我ら、精霊軍の務め!」


 アイゼンの轟くような声に、最前線で戦う、下等精霊士たちは、残りの力を振り絞るかのように、咆哮し、武器を振るい、魔法を使い。

 そして、一つ目が徐々にだが、第2陣へと押し戻されていく。


「レックス中将、まだ、負けておらぬ、だから諦めるな」

「……ああ、わかっている、だが、策は尽き、力も尽き、防衛力は地に落ちた。もう、要塞都市フレーズは終わりだ。長年、耐えてきた頑強な要塞といえ、数の暴力には勝てない……これで、諦めないのは、貴様くらいだ」

「がははっ、まあ、そうかもしれぬ、だが、アレス様が我々を見捨てるとは思えぬ。おそらく、もう少しで応援が来るだろう。それに部下たちが諦めないのに、我らが諦めるわけにはいかんぞ、レックス!」

「ああ、そうだな……あれは?」

「あれ?」


 レックスが見つめる方向。

 要塞より数キロ離れた平原の地。そこには大勢の人が見えた。

 そして、その一点が眩しい光源で溢れ、そして消えた。


 次の瞬間、第1陣少し前方で、爆発が起きた。それは、火薬兵器とはことなり、消炎の香りなどせず。

 それを、魔力の爆発のようにレックスたちは感じる。


「……言ったとおりだったろう? アレス様は我らを見捨てることなどないのだ」

「ああ……頑張りは無駄にならなかったか」


 二人は、ようやくすぎる増援の到着に、ホッ、とした。

 そして、嬉しそうに笑い。

 レックスは、懐から正方形の石を取り出し、そして、それを飲む。

 すると、体を真っ赤な炎が包みこんだ。


「【剣技、マゾレアック!】」


 そして、瞬く間に、遠くの地にレックスは移動する。

 そして、巨大な炎柱が天へと駆け上がるかのように、燃え上がり、そして、一つ目を巻き込み、爆発する。


「がはっ……さすがに,きついか……まぁ、これで、少しは彼らも動きやすくはなっただろう……」


 前身を激痛が襲い、レックスは顔をゆがめた。

 神器マゾレア。

 己の能力を向上させる代わりに、前身に激痛を伴う魔法道具。

 それを、レックスは使用した。それにより、一部隊なみの一つ目が燃えきり、そして、第2陣まで、敵は後退していく。

 そして、その後方から仲間たちが攻撃しているのがはっきりと見えた。


 

 神器マゾレア。

 それは、禁断の道具。

 当然ながら、レックスは限界を超えた魔力の使用により、魔力の枯渇に陥り、そして、気を失った。



 ◇



 それを、アイゼンは見ていた。

 要塞最強の男レックスによる、能力解放。

 それは、かの大将にも劣らぬ、破壊力であり、それによって、多くの部下たちが線形を建てなすことに成功する。


 また、増援の動きも効率的になった。

 これが最後の策、諸刃の剣か。

 よもや、禁断の道具を使うとは思わなかった。

 それは、もう我らのような司令官は役目いらずで、戦力のみが結果を作用するということなのかもしれない。


「……レックス。道はまだ終わらぬ。我も、臣下の期待に答えるとしよう。【魔技、マゾレアック】」


 アイゼンも同様に、神器を飲み、そして己の能力の上限を一時的に開放する。

 そして、地面に巨大な魔法円を創世し、【真神魔法、万物召喚】を作動した。


 万物召喚。

 自然物から構築する、高等魔法。

 それの最上級魔法、【真神魔法・万物召喚】。

 それにより、地面が抉られ、そして集まることにより、巨大なゴーレムが現れる。


「ゴーレムたちよ、我に力を寄越せ、我に従え、一つ目を陣より追い出せ、要塞都市フレーズを守護せよ、自立し、敵を破壊せよ!」


 アイゼンが言い終わると同時に、ゴーレムたちは、その巨体で第2陣の方へと向かっていく。途中、残党の一つ目たちが居たが、それらを、踏みつけ、殴りつけ、蹴散らしながら前へと進んでいく。


 そして、あっという間に、門へと近づいていく。

 そして、一つ目たちにより、激しい攻撃に合うが、その度、地中から岩土を吸い上げ、恐ろしい速さで修復していく。

 まさに、不死のゴーレム。

 それを見た、アイゼンは安心し、そして、レックス同様、魔力枯渇によって意識が遠のいた。



 ◇



 ―

 飛行艇の一際豪華な部屋。

 とはいえ、机に椅子それに寝台だけではあるが、窓際からは、白雲が見え、時折、巨大な鳥たちが飛んでいるのが見えた。

  ―


 精霊軍大将ミラを筆頭に、第2、第3部隊は、要塞都市へと向かっていた。

 機械型飛行艇は、燃料によって、高速で移動していく。

 そして、王都を経って7日目。

 とうとう、要塞都市フレーズ付近へと到達した。


 ミラは手に持った望遠鏡を覗き、地上を見てみるも、何も見ることができないでいた。

 濃霧。

 要塞都市フレーズ周辺では、珍しくもない自然現象だ。それにより、長い月日、上空から見つかるのを防いだわけだが、今に限っては邪魔でしかない。

 木々があればその上に着地は出来ない。

 そのため、降り立てないでいた。


「ミラ様、これでは、降り立つのは不可能であります。それに加え、一度地上に降りたら、もう一度飛行艇に乗り込むのは無理だと空人は言っておりました」

「そうか、今、改善手を考えている、すまないがしばらく待っていてくれないか」

「はっ。了解です」


 精霊軍大将ミラ。

 前身を薄く軽い防具が包み込み、手前の机には独特の形の笛が置かれていた。

 カルサス、カルフと同様、大将でありながら、彼女の攻撃力は特別強くはない。

 だが、彼女は精霊軍で唯一無二の魔獣使いであった。

 笛に魔力を上乗せし、吹くことで、あらゆる生物を籠絡する。もちろん、限度はあり、討伐lever・3以下の話だが。

 今、上空には、巨大な鳥どもがうろついている。

 それらを支配し、地上に降り立つ。

 これが、最も実現可能な手段かもしれない。

 

「……皆さん聞いてください、この状況では、飛行艇を地上に着陸は不可能です。そのため、私が鳥たちを支配しますので、背に乗り、地上へと向かってください」

「はっ。了解です」


 ミラの命令により、部下たちは了承した。

 そして、とうとう。

 精霊軍本部の部隊が、要塞都市の守衛を開始する。



 ◇



「足リヌ、足リヌゾ、人族ドモ、コノ程度カ、アヤツニモ及バヌ、ザコヘイドモ」


 草原が覆いつくす平坦な道。

 その上に、碧眼はいた。眼下には、精霊軍が立ちふさがるかのように、道を塞ぎ、侵攻を押しとどめていた。


「これが、碧眼……カルフ大将を破った怪物……」


 総大将アレスを含めた、精霊軍本部の強者たちは、碧眼と遭遇していた。

 カルサスは、腰に下げた魔法銃に手を伸ばしそうになるが、それは止める。そして、魔法の構築を開始した。


「やあやあ、僕たちの仲間をどうにも酷い目にしてくれたようだね。その代償として君たちの命を一つ残らず、奪わせさせてもらうよ」


 と、アレスは言う。

 それは、何も気負わず自然体であった。そして、先ほどカルサスが躊躇しやめた、魔法銃を腰から取り出す。


「君たちの狙いはなんだい? 人族の討伐ってところかい? それとも、憂さ晴らしかい?」

「フーム、先程ノ、人族ト同ジ、質問ヲスルカ」

「ああ、ってことは、カルフを倒したのは君で間違いないってことでいいのかな?」

「肯定スル、アイツハ、強イ、ダガ、弱イ、儂ノ、敵デハナイ……貴様ハ?」

「うーん、まあ、君よりは強いと思うけどね」

「ナルホド、ナラ、殺ス、殺シテ、貼リ付ケ、ニ、シテヤル」


 アレスの挑発めいた発言に、碧眼は激高し、その巨体を揺らしながら、高速でアレスへと襲いかかった。

 だが、その途中、地面が揺れる。


「グオッ、コレハ」

「こいつは、私たちが抑える。お前らは、一つ目討伐に向かえ」


 カルサスにより放たれた魔法により、碧眼は地下へと落ちる。その隙に、皆に逃げる様に命令した。

 それに、部下たちは了解し、その場から去っていく。

 そして、後にはアレスとカルサス、そして碧眼のみが残った。


「さーて、僕も本気で挑ませてもらおうかな」


 アレスは、笑う。

 それは、己を越えるかもしれない強さを前にして楽しいからであった。

 アレスの討伐levelは8。

 これほどの強さを誇るアレスからすれば、赤竜なんて子供をひねり倒すよりも簡単なことであった。

 それにより、王たち上層部の命により王都より離れることは珍しく、このような機械に恵まれることは希少であった。

 そのため、カルサスは徹底的に魔法補助に徹し、アレスに全てを任せることにした。


「ガハハハッ! 儂ヲ落トストハ」

「アレス様。このような感じでいいですか?」

「ああ、それでいいよ」


 碧眼は野太い声で笑いながら、穴より這い上がる。その体には土などは着いていたが、傷を負っているようでは無い。


「はあ、流石の頑丈さだな。底に土槍の雨を設置しておいたはずだが」

「まあ、物理は効かないからね、それは仕方ないさ」

「そうでしたね、でも、それにしても、かすり傷一つ負わないとは……」

「オ喋リハ、終ワリダ」


 碧眼の持つ大剣が空気を切り裂く音と同時に2人へと襲いかかった。それを見たカルサスは後方へと飛び、アレスは腕の装甲をぶつけ相殺した。


「ははっ、さて、討伐の開始さ」

「殺シテヤロウ、人族ノ英雄ヨ!」



 ◇



「これは酷い……要塞都市フレーズがこんなになるなんて」


 鳥たちの背に乗り降り立った地上は、地獄と化していた。

 要塞都市フレーズを見ると、第1陣の目の前まで一つ目が押し寄せていた。そして、城門の上からは必死に弓や魔銃を放っているが、頑丈な一つ目の皮膚には傷一つ負わない。

 そして、城門を打ち破ろうと、巨大こん棒が何回も門にぶつけられ、その度、ミシミシと何かが壊れるような音が響いた。


『クソがっぁあああ! 大将、早く支持を!』

『ええ、このままでは、落ちてしまいます』


 部下たちが甲高い悲鳴を上げ、そしてミラに討伐許可を貰うために、叫んだ。

 まさに、今仲間たちが死にそうになっているのだ。それは仕方がないことであった。


「皆の者、落ち着きなさい!」

『でも、このままじゃあ』

『家族がいるのです、助けないと』

「いいから、落ち着け!」


 ミラの大声が平地に響き渡った。

 それにより、少しは動揺も止まったのか、静かになった。


「まったく、誰も助けないなんて言ってないでしょ。でも、このまま無暗に攻撃しても、城門から離れるかわからないわ。だから、魔導砲の準備を開始しなさい!」

『はっ!』


 ミラの命令に従い、まず飛行艇から魔導砲を引っ張り出していく。

 そして、魔力を機械にどんどん流し込み。


『準備完了しました。いつでも、可能です』

「そう、なら放ちなさい」

「はっ!」


 魔導砲。

 その一つから、高密度の魔力が解き放たれる。

 魔力は砲弾より固まって飛び出し、衝撃で魔導砲は少し後ろへと後退した。

 そして、魔力の弾丸は、門の前に立つ一つ目たちの元へとピンポイントでぶつかり。



『――衝撃がきます、全員、備えよ』



 部下が呼びかけるのと同時に、空気を震わせながら凄まじい爆風が辺りを吹き抜けた。

 それにより、耳がおかしくなりそうだ。


「皆、臨戦体制に入りなさい、一つ目がこちらに向かってきますよ!」

『はい、俺たちの力、見せてやりますよ』


 精霊軍、第2、第3部隊による増援の攻撃は、一つ目を切り裂き、貫き。

 そして、少しずつだが、第2陣の方、ミラたちの方に向かっているように見える。

 それでも、まだまだだ。

 敵の多くは、未だ第1陣と第2陣の中央に居座っていた。


「魔導砲をもう一度、はなち……あれは?」

『はい……え? あれは?』


 ミラたちが見据える、先。

 第2陣付近で突如、炎の柱が天へと燃え盛る。

 それは、魔法のレベルを越えており、人知を超えていた。

 そして、辛うじてだが、人影が見える。


「あれは何なの?」

『わかりません、ですが、あの炎により多くの一つ目たちが死んでいます!』

「まあ、いいわ。私たちはやるべきことをしっかりとやり遂げなさい」

『はっ!』



 ◇



 最強VS最強。


 一つは、人族。

 精霊軍総大将アレス。

 神の名を授かりし生まれながらの天才。

 攻撃は多才、様々な策を弄し、相手の反撃を許さない。

 歴代の名だたる英雄に引けを取らない、それどころか越えてしまう。

 まさに、戦闘に特化した英雄の一人。


 一つは、怪物。

 一つ目の頂点に君臨せしもの、人族には碧眼と呼ばれる。

 金属を越える強固な皮膚が全身を覆い尽くし、物理攻撃は無効。

 魔法攻撃は、多少は効くが致命傷には程遠い。

 数千年の時を生きる、長寿の怪物。

 それにより、高知能、人語を片ことながら話す。

 名をボリュペモス、巨人族の末裔。


 どちらも、種の頂点にたつもの。

 それらが、戦う。

 それは、かつてない規模に影響を及ぼしていた。


「はぁああああっ!」

「ガァラララァッ!」


 アレスが魔法銃の弾丸を引く。

 碧眼はそれをよけ、大剣を振り回す。

 なんとも、シンプルな戦闘だ。

 ただ、彼らの周りは滅茶苦茶だ。木々は折れ、燃え、大炎上。空からは、カルサスの魔法により、多数の魔力隕石が落ち、クレーターの山で溢れかえっていた。


 戦争の跡地とでも言うべき程の破の後。

 それが現在進行形で増えていく。それは、幾多もの生物の命を奪い、大地の命をも抜き去っていく。

 数年では回復出来ない、数千年を越えてなお不可能な状態。

 それが、アレスと碧眼の全力解放による影響であった。


「そろそろ当たってはくれないか? 所詮、君は逃げることしか出来ないからさ」

「フン、貴様が言ウカ? 儂ノ攻撃ガ当タレバ、一撃デ死ニ至ルザコガッ!」

「当たってもないくせによく言うね」

「ソレハ、貴様モ同ジダ。次デ殺スゾッ!」

「はぁ、まあ、君の命を奪ってあげるからさ、少し黙れよ」


 二つの戦いは一千攻防。

 一撃で全てが決まる。



 ――そして……一撃が会する。




 ◇



 要塞都市フレーズの指揮官二人の魔法。

 それにより、勢い、戦力、どちらも人族が優勢であった。

 よって、要塞の防衛力も着実に強化されていく。


 そんな中、とある巨大物が戦場を駆け巡っていた。

 大きさは、要塞の城門を越え、全身は石や岩で覆われている。そして、姿は人間の形に酷似していた。


 名をゴーレム。

 要塞都市フレーズ副司令官アイゼンによって、召喚された2体のゴーレムは、物凄い速さで移動し、その腕足で殺しては次の場へと向かっていく。

 それを、ミラは見つめた。


「なんだかなぁ、ゴーレムって意外と使えるのね」


 と、呟くミラ。

 元来、ゴーレムはその巨体ゆえの超重量のせいで、ゆっくりとしか動けないはずであった。

 それが常識だったはずだ。

 それゆえ、主に防衛の要、防御壁として使用する、まさに、防御専門魔法であったはずだ。

 それなのに、二体のゴーレムは、高速で移動する。

 そして敵を潰していく。その姿は、攻撃専門の傭兵に見える。

 そして、ゴーレムの特徴でもある、超回復により、所どころ破損はするが、瞬く間に回復していく。


「……まさに」

「神の魔法ではないかって?」

「うん、あれ? こっちに来ていたのね、カルサス」


 部下たちを引き連れ、防衛もほぼほぼ成功し。

 防衛拠点でのんびりと休養していたミラの前には、同僚のカルサスがいつの間にかに立っていた。

 防具は、所どころ凹みがあり、そして、顔も土埃で汚れていた。

 そして……言葉の先を言われ、少々、気味が悪い。


「勝手に人の心を読まないでよ」

「ああ、ごめん。でもさ、君ほど何を考えているかわかりやすい人も居ないよ。それに、何年の付き合いだと思っているのさ、カルフもそうだけど、君たちの心内なんて、簡単に予想できるさ」

「でも……」

「それに、僕は結構あてずっぽう発言が多いしね。今回は偶然さ!」


 と、ウィンクしながらキザにかっこつけて言うカルサス。

 並の女性なら、その容姿ゆえに、惚れるかもしれないが、長年過ごしてきたミラからすれば、ただただ、鬱陶しく感じるだけであった。


「まあ、いいわ……それで、そっちはどうなの? 討伐完了?」

「いやぁ、残念なことに、引き分けさ」


 と、大げさに手を両側に伸ばし笑う。

 その姿からは、カルサスの外面しかわからず、内面でどう思っているのか、ミラは知ることが出来ないでいた。


「なんだか、引き分けたのに嬉しそうね」

「えっ? そう見えるかい?」

「何か隠しているの? ……私も大将の一人、隠し事なんて止めてよね」

「知っているさ、まあ、今回の討伐で、住民の負傷者こそでたけど、奇跡的に死者が0だったのだよ。だから、嬉しそうに見えたのさ」

「本当に?」

「うん」

「…………まあ、いいわ。それで、カルフの容体はどうなの?」

「ああ、カルフ君なら無事みたいだよ、君もお見舞いに来るかい?」

「遠慮しとくわ、カルフなら、大丈夫でしょ」

「そうかい、なら、ここで、お別れだね」

「なによ、まさか、あんた死ぬつもりなの? だったら私は止めないわよ。好きにすればいいじゃない」

「まさか、そんなつもりはないよ。ただ、アレス様から近隣の赤竜討伐を言い渡されてさ、だから、当分戻れないから、一応あいさつをしただけさ」

「そう、なら、さよなら」

「ああ、さよなら」



 ◇



 ――引き分け。


 燃え盛る平地のとこ。

 そこにアレスはいた。目の前には、もう何一つ敵はおらず、終戦を意味していた。

 碧眼。

 一つ目の主とはいえ、level6なら自分の敵では無い。それこそ、自分の討伐levelは8なのだ。ということは、碧眼も同様にlevel8だということになる。


 ……でも、それだと、赤竜のlevelをも超えている……


 通常、赤竜の呼び声によって、引きつけられるのは、自らよりも下のものだけだ。つまり、今回に限れば、碧眼たちを呼んだとは考えづらい。

 それなら、何か別の竜がいたのか?


「アレス様? どうかしましたか?」


 と、思案に耽っていると、隣のカルサスが聞いてきた。

 そういえば、前にミラやカルフと話しているところをみたことがあったが、その時はもっと愉快そうに話していた気がするな。

 ということは、カルサスは、一応は自分に敬意を示しているのだろうか?

 それとも、ただただ、自分が苦手なのだろうか?


「カルサス、一つ聞いてもいいか?」

「なんでしょう?」

「……いや、やはり止めておこうかな」

「ええっ、気になるではありませんか」

「あっ、ああ。いや、何、何か欲しいものがあれば、言ってくれ。今回君の力は、うん、役に立った。だから、礼として…」

「滅相もありません、その言葉だけで十分です」

「そ、そうか」


 何やら、途中で言うのをやめたせいで、変なことを口走ってしまうようだ。

 だが、まあ、何か褒美はやらんと、部下たちにも示しがつかんか。

 思えば、総大将になってから、十年が過ぎたが、歴代の大将たちには、何も用意してこなかった。

 ……たまには、何かあげてもいいかもしれない。


「カルサス」

「はい?」

「君に魔法銃をあげるよ」


 と、腰に差していた予備のオリジナル魔法銃を手にとり、カルサスへと渡す。

 オリジナル魔法銃。

 一つ数千もの価値を誇る、オーダーメイド武器だ。

 魔力効率が良く、さらに属性付与効果が付く。

 まさに、高級魔法道具。


「よ、よろしいのですか?」

「ああ、カルフは剣だし、ミラは笛だし、君くらいしか、使わないからね。まぁ、常日頃の感謝の気持ちと今回の碧眼討伐の報酬とでも思ってくれ」

「ありがとうございます、アレス様」

「いいって、あっ、そうだ。このことは、二人には黙っていてくれないかな?」

「ああ、二人にも送るのですね、わかりました、命に掛けて喋らないことを誓います」




 ―――

  ――

    ̄

 


 高級魔法道具、魔法銃(属性付与効果付き)の報酬。

 それが、カルサスが喜んでいた原因であった。

 そして、黙ったのも約束ゆえ。


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