表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊国物語  作者: 物語
5/12

05.赤竜討伐編‐04

 零時を過ぎる前のバルス村。

 宿谷の一室に彼らは居た。


 国一の力を持つ大男、カルム。

 国一の剣士、ラドレルク。

 高等精霊師、バクリャーン。


 皆、精霊軍に所属するものであり、カルフの部下たちだ。

 途中、反論していたのはカルム、ラドレルクであった。


「それにしても、まさか、村待機とは……てっきり、戦えると思っていたのに」


 宿谷のベッドに腰掛ける2メートルを越えそうな大男カルムは、手に持つ弓の手入れしながら、理目の前に座る二人に愚痴をこぼしていた。


「ああ、まったくだねえ」


 そう答えたのは、ラドレルク。剣技を武器に、精霊と契約せずに、最強の一角へと駆け上がった才能あふれるものである。

 そして、もう一人。

 精霊軍、高等精霊師バクリャーン。

 彼は沈黙を貫いた。


「もしかして、反論したのがいけなかったのかねえ」

「そうだぜ、きっとな」

「……」


 三人で愚痴を話すことで、少しばかり気が晴れてくる。

 ……もう少しで、討伐隊が仕掛けるだろう。そのため、三人はそれぞれに武器を片手に外へと向かった。



「でも、あの方々は、強いのでしょうか? 道中、何度も休もうといいましたし……」

「ああ、彼らは、気分やであるからな。まあ、戦闘力については、我からは文句はないとだけ言っておこう」

「まあねえ、あいつらも、やるときはやるのよね」

「すみません……勝手なことを言い……」


 予想以上に彼らの評価が高かったことを知り、シルフィアは二人に謝る。ただ、二人とも笑い、「まあ、しかたないわよ」「ああ、謝る必要は無い」、と別にシルフィアを攻めることはしなかった。


「ただ、それならば、町は安全ですね」

「ああ、バクリャーンがおる限り、崩壊しているということはないだろう。それに、我らが着くまでは、難なく耐えているだろう。あやつの力はそういうものだ」

「?」

「ああ、バクリャーンは、防御魔法を得意とする異端児で、攻撃魔法は使えないのよ。まあ、変な奴よ。一度もあいつの声なんて聞いたことないしね……ほんと、なんでしゃべらないのかしら……」

「魔法の際に喋らないのですか?」

「ええ、あいつ、無詠唱魔法を使えるのよ」

「むえいしょう?」

「己の心の中で唱え、発動させる魔法のことだ。まあ、通常のと、そこまで、威力は変わらないのであるがの。それと、バクリャーンは別に喋らない訳では無い。呪いで、重要なことしか、喋れないだけだ」

「ああ、そうだったわね、あいつが喋らないのは海王主の呪いのせいだったわね。でも、重要なことなんて、そんなに、ないし、いつ聞けることかねえ」


 通常、魔法は詠唱することで、発動する。

 それなのに、無詠唱で発動。なんとも、凄い人が居るものだと、シルフィアは感嘆し、いつか、バクリャーンの声を聞けたらいいなと、思い……いや、思わなかったのであった。

 なんせ、聞いたが最後、何らかの重要な事件が起きているということなのだから。



「……」


 バクリャーンを含めた町の護衛の三人は、町を見わたすことが出来る丘の上にいた。

 時折、遠くの地から、真っ赤な炎が見え、また、爆音が聞こえてくる。


「とうとう、始めたようですね」

「ああ、だけど、カルフが居る限り、俺たちは何もする必要なんてない気がするけどな」

「……」

「確かに、ですが、赤竜以外が、襲ってくるなんてこともありえるかもしれませんよ。なんでも、竜はモンスターを操る力があるそうですしね」

「へえ、それが本当なら来るかもな。だけど、どうせ、それも噂だろ? いい加減、情報が確かなものだけを言ってほしいものだぜ」

「噂を信じることも必要ですよ? それに、確かな情報が確かだとは限りませんし……」

「ああ、まあ、いいや、それよりも、辺りには何も来ていないのか?」

「ええ。まあ、私たちの出番がくることは、無いでしょう」


 二人は気楽に笑い、遠くの地を見据えた。

 ただ、一人。

 バクリャーンは、背後を振り向き。

 町を見つめた。そして、彼の呪いは解かれ。


「……町の入口に敵が多数……」

「なんですと?」

「まじ、かよ……10年ぶりだな。お前の声を聞くのは……まったく、最悪だ」


 バクリャーンが喋った。

 それは、すなわち。

 強敵が集い、大勢の命の危機ということだ。

 それを理解した、二人は、全力で町の出入り口へと向かっていく。


「……」


 そして。

 高等精霊師バクリャーン。

 彼だけは、その場に残り、魔法の構築を開始した。



 赤竜の討伐から帰還し、丘の上から見た町は、混沌と化していた。

 町の道路、広場を埋め尽くすかのように、巨人兵が軍隊のように行進している。

 中央には、持ち上げられた椅子の上に一際でかいのがいた。

 どれも、顔の中央に目玉が一つしか無く、上半身が裸であり、下は布を腰付近に巻いていた。

 筋肉質であり、石で出来た、こん棒を両手でしっかりと握っている。


「一つ目の巨人が何故、ここに……?」

「こりゃあ、私たち以外だったら、終わりだったねえ……いや、私たちでも無理かねえ……」

「えっ……?」


 あまりの信じがたい光景に、シルフィアは一瞬、息が止まった。さらに、家々にこん棒が振り回され、破壊されるのを見て、頭が真っ白となった。

 アンナも、予想以上な光景をみて、自分たちですら、なんとかならないかもしれないと悟った。

 カルフは、背負う大剣へと手の伸ばし、鞘から抜く。


「バクリャーンが居るのだ。そう、簡単に住民を殺させているわけではなかろう。現に、先ほどから、家が崩壊しているのにも関わらず、誰も出てこない」

「じゃあ、一つ目を殺すのか?」

「私たちで出来るのでしょうか?」

「全部は無理だ」

「全部は無理ねえ、まあ、当然ね。それこそ、カルフクラスが10人は必要か、それか、精霊軍の高等精霊師が一部隊でもくれば、勝てそうだけど、流石に私たちだけじゃあ、勝てないねえ」


 明らかに、敵わない。

 その事実を知り、シルフィアの表情が青くなっていく。

 初の実戦討伐で、いきなりの、高難度。それこそ、下等精霊士の私では、戦力にすらならないかもしれないということを想像してしまい、より一層、シルフィアは真っ青となった。


「とにかく、住民の避難を最優先とする。おそらく、バクリャーンたちも同じ考えだろう。ここから、少し離れたとこに要塞都市フレーズがある。そこまで、逃げ切れば我らの勝利は確定だ」

「まあ、それが最前手かねえ~」

「はい、でも、一つ目が多すぎて、住民の元へ着けますかね?」

「我らは、後ろから一つ目に攻撃、注意を牽き進軍を止める働きをするべきだろう。我が先陣を切る。二人は援護射撃をよろしく頼むぞ」

「ええ」

「はい」



 ――

 一つ目VS精霊軍。

 後に、伝説ともなる一戦が開始された。

 ――


 ――そのとき、赤竜は大きな口を開き、唸り、笑っていた。



 高等魔法、・【木檻】・

 それが、バクリャーンの得意魔法である。

 町全体を覆うように、多数の木が地面から飛び出し、相手の動きを止め、また、檻で囲む。

 まさに、絶対防御魔法。


「さすが、バクリャーンですね、まさか、一つ目の進撃を押しとどめるとは」

「ああ、流石に、防御専門を名乗るだけはあるぜ……住民は、要塞都市に向かっているし、俺たちはなんとか、時間稼ぎしねえと、なっ」

「ええ、よっと」


 二人は、各々の武器を片手に、一つ目を切り倒し、押しつぶしながら、話を続けていく。

 額には汗が浮かび、疲れていた。

 ただ、二人とも、愉快に笑った。


「こんな、自分の力を試せる機械なんて、そうそう、ないしな、暴れようぜ!」

「ええ、私の本気の剣技を見せてあげましょう」



 その二人より、遥か後方。

 地面に描かれた、円を用いた複雑な形の上にバクリャーンはいた。

 補助魔法と呼ばれる、絵を用いて発動させる魔法道具の力を借りながら、一つ目の位置を確認しつつ、的確にぶつけていく。

 それにより、己の魔力量は少なくはなるが、それでも、住民が逃げ延びるには十分すぎる量があるため、気楽そうに遠くを見つめた。


「……」


 そこには、もう一言も喋れない彼だけが残り。

 そのことに、バクリャーンは安堵した。



「完全充電完了。ラクラァアアアアアアアアアアイィッッ!」


 遥か天空。

 そこには、黒く広い、雲空が広がっていた。

 その真ん中。

 そこから、一本の閃光が地面に向かって落下してくる。

 それは、雷。

 音よりも、高速であり、さらに絶大な破壊力を持つ全体攻撃魔法。

 それが、カルフの十八番であった。


『ゲェエエルエエエエッ!』


 あまりの、威力に、一つ目といえ、簡単に黒焦げとなり、その場に次々と倒れていく、それにより、少しではあるが、相手の進撃が止まっていく。


『ゲェエエエエエエエルルルルル!』


 もう一発、ラクライ。

 それにより、どんどんと、一つ目は死んでいく。


「やっぱり、カルフは頼りになるねえ。さすが、大将なだけはあるかねえ」

「これが、本気のカルフ様……わたしもいつか……」

「ふん! 我を怒らせるな!」


 カルフの前身には雷が纏われ、それに触れる度、次々と一つ目は絶命していく。

 その様子を二人は見ていた。

 あまりの、絶対的な実力差を目にし、援護魔法さえ、必要としないカルフに恐れを抱き、尊敬をする。

 それこそ、自分たちが必要ないのではないかと思い始めるほどの、強さであった。


「うん?」


 そんな、カルフの先を塞ぐように、次々と来た一つ目たちも、学習したのか、カルフから、少し離れた。

 そして、どこから持ってきたのか、大岩を二体、三体で持ち上げる。

 そして、次々とカルフの方へと放り投げた。

 だが、カルフに直撃する岩はなく、ほとんどが、一つ目の足元付近へと散らばっていく。その上に、大岩が積み重ねられ、高さは3Mにも迫ろうかとしていた。

 それにより、カルフたちの視界を遮るかのように、岩の壁が広がった。


「こしゃくな、そんなもので、我を止められるとでも?」


 ただ、それも、カルフの雷の前では、邪魔にもならず。ただの拳の一撃によって、大岩にはひびが入り割れていく。

 そして、全てを割り、通れるようになった頃。


「おう、なんとも、まさか、そう来るとは」


 そう言うカルフの前には、一際でかく、全身を錆びついた鎧が覆い、大型剣を片手に持った一つ目がいた。

 碧眼の一つ目を持ち、鎧の隙間から見える肌は青黒く、そのため、死人を思わせる。


 Level 6 碧眼の主。

 多数の一つ目のボスであり、総合力では、赤竜に引けを取らぬ、まさに、最強種の一つ。

 それが、カルフの正面に立っていた。


「ガハハアハッ! 久シイノウ! ジンゾクッ!」

「我は貴様を知らぬ」

「ハハアアッ! ソウカ、ナラ、覚エロ、儂コソガ最強ダト」

「貴様らの目的はなんだ? 物資の略奪か? 憂さ晴らしか?」


 そう、普通に怪物と話すカルフに、シルフィアは感嘆し、アンナは、魔法の構築を開始した。

 そんな二人の前で、カルフと碧眼は話しを続ける。


「違ウ、貴様ハ敵、仲間、殺シタ、ダカラ、ヤリ返エス、許サナイ」

「貴様らが我らの仲間に手を出したのだ。正当防衛であり、我らに過失は無い」

「カシツ? ワカラヌ。タダ、儂、復習スルノミ、ダカラ、死ネ」

「ふん、貴様こそ」


 カルフと碧眼は、両者とも大剣に手を掛けた。そして、構える。

 そして、一瞬時が止まったかのような、静寂が訪れた、次の瞬間。


「・【ラクライ! サンダーレイン】・」


 カルフが誇る、最強魔法の二つが一斉に、碧眼へと襲いかかった。

 だが、碧眼は、それを右手に持つ大剣で受け止め、そして、相殺する。


「ふむ、これほどの力をあしらうか……流石、level6であるな」

「人族ガ、調子ニ乗ルナ、儂ヲ殺セナイ、雑魚ガ」

「くらいなさい、・【霊界より来たれ、燐火の千矢】・」


 と、シルフィアが碧眼へと魔法を放つ。

 燐火の矢。

 霊界より参る、灯を魔法に組み込むことで、通常よりも、攻撃性を高くする魔法だ。

 その数、千。

 まさに、絶大な全体攻撃魔法だ。


「おいおい、我にも来るのだが……ふん!」

「コレハ……薙ギ払ウ」


 カルフは、矢より逃げる様に後ろへと飛ぶ、碧眼は大剣を構え振り下ろす。


「私もいるねえ、・【魔砲、千弾炎】・」


 アンナも同時に、別の魔法を使う。

 魔砲。

 魔力を円形に蓄え一気に放出する単体専用魔法だ。

 その威力は、火薬兵器にも匹敵、それ以上を誇る。それに加え、高等精霊師の魔法。


 碧眼のまわりは、爆撃と化していく。

 それは、あまりにも圧倒的過ぎて、カルフたちは、遠くより見つめた。


「ガッ……」

「やりましたかね?」

「そりゃあ、ダメージは負ったでしょうがねえ」

「ふん、流石の防御性能とでも言うべきか」


 三人の全力魔法を前身に食らい、もはや、死に絶えていてもおかしくないはず。

 だが、碧眼はその場に崩れることなく。


「ガッハァハハハッ! 久シイ、コノ力、懐カシイ」


 余裕の表情で、昔を思いだしつつ、剣を持ちあげる。

 そして、足に力を込め、剣を思い切り、縦に振りおろした。


「・【燐火の壁】・」

「・【魔法盾、炎鏡】・」


 それにいち早く、シルフィアとアンナは対応する。

 碧眼の一撃。

 その威力について、二人は知らない。なのに、防御しなくては、と、思わせるほどの威圧感により、二人が誇る最強防御魔法を展開した。


「ガッガッガッ、ヤルノウ、シカシ、弱イ、弱イゾ、人族ノザコ兵タチヨ」


 だが、斬撃は止まらない。

 炎を斬るように、進み。

 そして、二人の前へと迫った。


「・【サンダーウォーッル】・」


 その目前、空より降り注ぐ、雷が両者の間に落ち、爆雷を轟かせた。

 それにより、斬撃は消滅した。


「ウハッハハハアッ、ァア、ヤルノウ」

「くっ」


 既にカルフの表情には余裕が無くなっていた。

 そして、カルフは、唇を強く噛みしめ、己の弱さを憎んだ。

 そんなカルフの困り果てた顔を見たシルフィアとアンナも、初めて見た大将の姿に動揺する。

 それは、連携の脆さへとつながる。


「死ニイタレ、人族ノ、エイユウモドキ」


 碧眼はもう一度大剣を構える。

 悔しいことに、これが力の差であった。

 それほどに、碧眼の強さは尋常であり、それこそが、level 6に君臨する理由だと三人は悟った。

 だが、三人にはもう打つ手がなく、ただただ、その場に立ち尽くすしかなかった。


「カハッ、マタ、会オウ、ザコヘイ」


 そして、碧眼の斬撃は三人へと襲いかかり。

 その場で、はじけ飛び、爆風と化した。

 それにより、辺りには、折れた木々が散乱し、それを確認した碧眼は己の部下たちの元へと向かっていく。

 それが、ひん死状態のカルフが見た最後の光景であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ