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精霊国物語  作者: 物語
3/12

03.赤竜討伐編‐02

「シルフィアを通すのではなく、用があるのならば、我に直接話せ!」


 たき火を囲むように座る者の一人。

 前身を白銀の鎧を包み込む姿は、まさに英雄を思わす。

 そんな人物、精霊軍大将、カルフ・アンドレラは、目の前で意義を唱える者たちの反論を遮るかのように、大声で制した。

 それにより、軽く地響きが起こっていた。


 そんなカルフの迫力に、周りで反論していた者たちは、ぐッと、口を閉じ、俯いた。

 それは、恐怖心からくるものだ。

 いかに彼らが、大会で上位の剣士だろうが、国随一の力を持つ大男だろうが、目の前の男、カルフには意義を唱えられなかった。

 まさに、蛇に睨まれた蛙のように。


「それで、どうするのだ? 明日、今日よりも歩くか、それとも、日が暮れるまでもう少し進むかだ」

「進みましょう」


 あまりの迫力に声が出ない彼らをよそに、シルフィアは、己の意見をどうどうと伝える。

 それにより、カルフとシルフィア以外の者たちの非難の目線が、シルフィアに突き刺さる。あまり、そういった経験はないのか、シルフィアは少し、震え、己の発言を後悔しているように見えた。

 ただ、それも、カルフの鋭い眼孔により、瞬く間になくなる。


「それで、どうするのだ?」


 二度目のカルフの質問。

 ただ、先ほどよりも、少しばかり、声に怒気が混じっていた。それにより、より一層恐怖に震える彼ら。


「す、すすみますす」「すすみまそおう」


 とうとう、彼らも折れたのか、シルフィアの意見に声を震わせながら、賛成していく。そして、全員が進むということになった。

 まあ、少し横暴ではあるのだが。


「それでは、行くぞ。我らが敵の元へと」

「はい!」

『おおっ……』


 カルフの号令により、シルフィアは元気よく返事をし、それ以外の者は、小さく右手を上に伸ばし、ため息まじりに呟いた。



 鉱山の頂上よりさらに遥か遠くの地。

 天空に赤竜は居た。


 赤竜は巨大な体を左右に広がる大きな翼を羽ばたかせることにより、宙に浮遊していた。

 その姿は、まさに、怪物そのものだ。

 そして時折、ブレスを吐き、威圧していた。




「ひょー、過去最大じゃないかねえ!」


 鉱山の近くにある村、バルス。

 そこには、あまりに場にそぐわない、者たちが居た。

 先頭を歩くは、精霊軍大将カルフ、すぐ後ろにはシルフィア、そして高等精霊師の一人、アンナを含めた三人だけが、町を歩いていた。

 アンナは、魔法と剣技が得意であり、部隊の中でも突撃兵として名をはせている。

 見た目は20代前半、実年齢は不明な女だ。いつも、おやじのように、豪快な行動をしていることから、仲間からはアナジイと呼ばれていた。

 そんな、アンナの隣をシルフィアは緊張しながら歩いていた。

 これが、初実践であることや、赤竜が通常サイズよりも、数段デカかったからだろう。


「そ、それで、カルフ様? 何故、私たち三人だけなのでしょう?」


 シルフィアは、キョロキョロと、空を見上げながら、目の前を歩くカルフに質問した。それを愉快そうに笑おうとするのを堪えるために、アンナは口を閉じた。

 それこそ、これからの展開がわかるように。


「ああ、我らだけで、赤竜を討伐するのだ」

「えっ? 三人ですか?……え、え、うそおおおおおおおおおおおおおおっ‼!?」


 普段のシルフィアからは想像もつかないほどの悲鳴が辺りに響く。そして、山々に反射し、反響していく。

 あまりにいつもと、違うさまに、アンナは堪えきれずに笑った。


「えっ、え? アンナさんは知っていたのですか?」

「ああ、もっちー、当たり前じゃねえかのう」

「そういえば、伝えるのを忘れていた……すまん」

「そんなぁ……私にも心の準備が必要なのに……」


 カルフ、アンナ、二人に対し、怒るシルフィア。ただ、元々大人しそうに見える顔立ちに加え、ただ、口をムーっとするだけなのもあり、そこまで怖くは見えなく、むしろ余計にかわいく見え。

 二人とも、笑う。それにより、シルフィアは余計に怒るのであった。



「それで、カルフ様、アンナさん。なんで私たち三人だけなのですか?」

「ああ、それは役割分担ってところかねえ、私たちが赤竜にばっかり、注視していると、村に甚大な被害がでる可能性が高いでしょ? だから、他のメンバはそっちに行ったってわけ」

「三人で倒せる相手なのですか? 仮にも相手は赤竜なのに……」


 不安げに訪ねるシルフィア。

 だが、それは通常の反応だった。赤竜は人族の敵。それも古来より続くものだ。

 それゆえ、色々なおとぎ話に悪役として登場し、その度に、人族が酷い目にあう描写をされていた。

 そのため、初対決となるシルフィアからすれば、緊張し、注意深くなるのも仕方が無いことであった。

 ただ、カルフは深く頷き。


「赤竜といえ、我らが協力すれば、勝てない相手では無い。それに、我がいる。そんな強張らなくても問題ない」

「そうそう! カルフが居る時点で私たちの勝利は揺るぎないものさ。こう見えても、カルフも私も強いし、心配なんていらないって」


 二人は自信気に言う。

 それこそ、まるで何も背負うことなく自然体だ。それを見て、シルフィアも少し落ち着いてきた。


「まあ、赤竜の討伐なんて、慣れっこだし、今回も余裕よ」

「そうですか、わかりました。私も頑張ります」

「ああ、では行くとするか……」



 総勢三人。

 赤竜に対してあまりにも少ない。

 ただ、それは一般兵の話だ。

 今宵戦うは、精霊軍総大将カルフ、精霊軍少佐高等精霊師のアンナ、精霊軍少尉下等精霊士のシルフィア。

 イツラトゥスが誇る、真の実力者たちであった。


 それゆえ、彼らは、赤竜の住処。

 山の頂上へと自信気に向かっていく。


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