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信じたくはないが両親はまるで豚

 目を醒ました私はぼんやりとさっきのことを考える。父親は豚。そんなの嘘と思いたいところだけれど、そろそろ現実をみなければならない。


 ふぅとため息をついてきょろきょろと周りを見ると豚もといお父さん…お金持ちだからお父様と呼んだ方がいいのか。お父様が私のことをニコニコと眺めていた。いや、にやにやと…か?



「マジュリスは寝顔も可愛いね、さすが私とアリアの子だ」


 アリアとはきっと私の母なのだと思う。私の母親アリアがどんな人物なのかというのはもう予想がついていた。きっとこの部屋によく来る女バージョンの豚さんのことだろうと。


 なんていうか、人生詰んだなぁ。豚さんの間に生まれた娘が可愛いはずがない。豚はどう頑張っても豚なのだ。


 目の前にたつお父様をジィっと見つめる。悪役っぽい。お父様の指にはゴテゴテとした宝石があしらわれている指輪がいくつかはまっており、赤地に金の刺繍という高そうだが趣味の悪いシャツを着ている。


 そして言わずもがな顔も身体も、はちきれんばかりの贅肉。金色のさらさらとした髪も蜂蜜色の瞳も台無しだ。


 悪役といっても噛ませ犬だなこりゃ。なんとかしなければ私の将来が危ないんじゃないか。何かアホなことをやらかして取り潰しなんてことにもなりかねない。


 お父様やお母様の悪事を少しずつ潰していくほかない。幸い私にはデレデレだし耳を傾けてくれることも多いのではないか。きっと前世というものがなければ、私は手がつけられないワガママ娘になっていただろうと思う。お金があるというのも困ったものだ。


「マジュリス今日もパパの話をききたいだろう?そのためにパパは早く帰ってきたんだ」


 聞きたいなんてまったく思ってなかったけれど、言語を補助してくれるスキルを手に入れたおかげで言葉が分かるのだからお父様の話だとしてもたくさん聞きたい。

 

「今日はパパ領地の見回りにいってきたんだ。農民って本当に汚らしいよね。貧相な野菜しか作れないくせに税を下げてくれだなんて言うんだ。ムカついたから5%くらい税あけちゃおうかな。でもいい事もあったよ。マジュリスには早い話だけどまだ言葉の理解できないからいいよね。アーキッド侯爵が奴隷市をひらくんだって。ひらけるまでにはまだ3年ほど必要らしいけど楽しみだ。国公認の奴隷ってある程度抵抗ができてしまうからね。国公認の奴隷とは違う奴隷印をつくって無抵抗にするんだって。楽しみだなぁ。無抵抗な女の子。アリアには内緒にしなきゃ、ぐふふ」



 なんてことを言っているんだこいつは。クズ極まりない。私に優しいから性格はいいのかと一瞬思ったがそんなことはないようだ。やはりお父様と呼ぶのはやめよう。ゲス豚。これこそが彼にぴったりの名前だ。


 なんとかしないと。ゲス豚のせいで私の人生が壊れたら困る。幸いまだ時間はあるから、それまでに策を考えよう。


 うーむ。やはりこういうのは何個か策を考えた方がいい。まず1つ泣き落とし。娘にデレデレであればやめてくれるかもしれない。


 2つ。言葉で説得する。倫理的に良くないことだと説明をしてみようか。意味がない気もするけれど娘の言葉であれば多少聞いてくれるかもしれない。



 3つ。力づくで止める。ゲス豚より強くなって奴隷市に行くのを無理やり止める。これが1番確実なんじゃないかな。明らかに弱そうな見た目してるし、噛ませだし。


 けどまぁ保険としてやれることは全部実行するべきだ。今からできることと言えば言葉を覚えることくらいだけれど。


 しかし問題点がある。赤ちゃんに対してそんなにたくさんのことを喋りかける人なんて滅多にいない。ゲス豚は知りたくもないことをペラペラ話してくるけれど、これは非常に稀なケースだ。


 あとお母様も私にたくさん話しかけていた。どうせお母様もたいした話をしていないと思う。ゲス豚があんな話をしてくるのだから期待なんてできるわけがない。


 メイドさんは1言、2言ぐらいは話しかけてくるけれど、ほとんどニコニコとこちらを見るだけ。どうせばいいのよ。



 誰かが話しかけているときだけニコニコして喋るのを止めたら泣き叫んでみようか。もちろんゲス豚の時はしないけれど。胸糞悪い話なんて聞きたくはない。



「旦那様、そろそろ夜会の準備をしなければなりません」


 先ほどまでゲス豚の後ろに控えていた執事が声をかける。できる執事だ。今この瞬間まで色々とくっちゃべっていたうるさいゲス豚を黙らせるなんて。


「そうか。そうであったな今行く」


 そう言い、ゲス豚は私の部屋から大きな足音を立て出ていった。やっと消えた。大きな物体が消えたせいか部屋がすっきりとしたような気がする。部屋から出ていってくれたことは嬉しいが、ゲス豚なんかが夜会に行ってダンスなんて出来るのだろうか。あの大きさでは人の邪魔になりそうだから大人しくしていて欲しいものだ。


 それはさておき、なぜ執事はまだこの部屋にいるのだろうか。用事はすんだはずだけれど……どうして? というよう視線を向けると彼はニコリと微笑む。この執事、ただならぬ雰囲気をもっている。隙がないというか。私の話し相手にでもなってくれないだろうか。期待をこめてジッと熱い視線をおくる。


「どうかされましたかな、お嬢様」


 さすがだ! できる執事は違う。まだ言葉は喋れないが必死で伝えてみよう。


「あーーうあうううあう」


「私には言葉が分かりませんがお嬢様寂しいのですね?」


 すごい、この執事。ゲス豚の屋敷で働いているのにこんなにも優秀だなんて!


「でしたら旦那様の許可を得てから手配してみましょう。大丈夫ですから不安な顔をなさらないでください。このダイスの名に誓いますから」


 その言葉を聞き、よしっと心の中でガッツポーズ。ダイスさんが言葉の件をなんとかしてくれるみたいだ。これで言葉が覚えられる。ダイスさん流石。できる執事は違うね!



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