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そうだ王都へいこう

 どんなバックにしようと昨日からずっと悩んでいたがいっこうに決まらない。というか別にバッグじゃなくても別に良いのだ。一般的にボックスといえばバックであるのは確かだし、売っているボックスはみなバックでそれ以外のものは無い。しかし私は自分で魔道具を作れる。


 市場に出回っているボックスがバックだからといって私もそうする必要なんてない。バックなんてやめだやめ。


 ボックスという魔道具の使い方は簡単。わざわざ道具をボックスに押し込んだりボックスの中から探したりなんていう面倒な真似は必要ない。


 ボックスに収納したい時は、収納したい物とボックスに手を触れ、収納したいと思えば収納できるし、取り出したい時はボックスに手を触れれば中が見えるのでそこから見て選べば簡単に取りだすことができる。


 だから特に取り出し口が必要なわけでもないし、魔道具作成スキル持ちならば何でもボックスにしてしまうことができるわけだ。極端な話雑草だってボックスにできる。


 だからバックよりも身につけやすいものをボックスにしようと思う。アクセサリーなんかが良さそうだ。アクセサリーと言っても指輪なんかはだめ。私はまだ3歳でこれからどんどん成長するからすぐにつけられなくなってしまうだろう。同じ理由で腕輪もだめ。とするとネックレスが良いだろう。


 子ども用ではないものを買えば長く使えるし。うん。ネックレスに決定だ。なるべくシンプルな物がいい。男として冒険者になる時にも身につけておきたいし、男でも違和感なくつけられるものにしよう。


 使用人に言えばきっと素晴らしいものを作ってくれる。彼らは小道具なんかも自分達で作っているからアクセサリーくらいなんてことはないはずだ。


 が、たまには自分で選びに行ってみたい。今まで行ったことのない場所に行きたいのだ。


 お母様に連れられて敷居の高いお店にならば入ったことはあるが、それ以外のお店は入ろうとしたら止められてしまって結局入ることはできなかった。


「ねぇダイス街に行きたいわ」

「だめに決まっているでしょう」

「どうしてよ」

「平民達は税が高くて不満をもっているのですよ。そこに力の弱い領主の娘が現れたら危険なんてものじゃないでしょう」

「じゃあ王都」

「だめです」

「いいじゃないけち。行きたい行きたい行きたーい」


 足をドタバタと床に叩きつける。珍しく駄々をこねた私に動揺したのだろう。しょうがないですねとダイスが折れた。


「ただし条件があります。男の姿で行ってください。そして行くところは王都ですよ。街には行かせません。そして護衛を何人かつけます」

「はーい了解」

「本当に分かってるんですかまったくもう」

「分かってるわー」


 分かっていますとも。王都に行けるのだ。楽しみ。王都はそう遠いところにあるわけではないが、今まで行ったことがなかった。遠くないとは行っても馬車で1時間ほどの距離はある。確か使用人がそんなことを言っていた。なかなか行けるものではない。


「馬車で行くの?」

「いえ、転移で行きますよ」

「それって難しい魔法じゃなかったかしら」

「あなたの使用人ですから使えて当然です」

「あぁ、それもそうね」


 私の使用人は基本的に規格外なのですからいちいち驚いていたらきりがない。



「じゃあ明日ね」

「明日ですか急ですね」

「本当は今すぐに行ってしまいたいところなのよ」

「そうですか。じゃあまぁ楽しみにしていてください」


 そう約束をとりつけ、私は初めての王都がどんなところなのか想像を膨らませ胸の高鳴りが止まらないでいた。楽しみだ。





「えぇっと誰?」


 ダイスと約束していた鍛錬所に着くと知らない人が4人たっていた。この家にこんな使用人いただろうか。見覚えがないのだが……


 1人はできる執事といった風貌の好々爺。そしてどこか性転換した私に似ている黒髪で耳の尖っている男と妖艶な雰囲気を纏った女。そして笑顔の眩しい幼き従者といった少年。見たことがない。


「全員あなたの使用人ですから問題ありませんよ。お嬢様もさっさと性別変えてください」

「ダイス? あなたいつお爺さんになってしまったの? 悪い呪いにでもかけられたのね。可哀想に」

「特殊メイクとやらを教えてくださったのはあなたでしょう。ばかなことばかり言わないでください」


 はて? そんな事言ったっけか。確かにそういうものがあるとは言ったことがある気はする。でも私特殊メイクのやり方なんて知らないし、こういうものがあるんだ、すごいよねー程度の話しかしていない。


 まぁ私の使用人だからな。不可能なんて無いに等しいのだきっと。気にしたら負けだ負け。ということは他の3人も特殊メイクを施した誰かということだ。


 誰だろうか。仲の良いカップルに見える2人。私の使用人にいたっけか。こんな妖艶な笑みを浮かべる女の人なんて……あぁうん、この間見たな。


 バイタルを妖艶な笑みで刺していた。ということはこの二人はバイタルとテイラか。よく見れば確かにバイタルとテイラの面影があるような。が疑って見なければ気づけるはずがない。まったくの別人だ。


 じゃあこの眩しい笑顔を向ける少年はアベルかな。人懐っこい犬のような雰囲気はアベルと同じものを感じる。


「私も性転換ではなくて特殊メイクでも問題なくギルド登録できたかしら」

「野宿するんでしたら無理でしょう。メイクが崩れても自分で直せるのなら別ですが」

「無理ね」


 私にそんな器用なことはできない。だから令嬢のたしなみであるレース編みなんてものを趣味にできる気もしなかった。実際やってみたら絡まりすぎて自分の指まで絡めてしまった。練習すればきっと人並みにできるようになるとは思うけれど、わざわざそんなことをする気はない。そんな細かい作業だとかより動き回っている方が性に合う。


「ともかくお嬢様は早く性別を変えてください」

「それもそうね」


 私がボソリと性転換と呟くと魔力が全身にめぐるのを感じる。服の形状も変化し男の服に変わった。どういう仕組みか分からないのだが、なぜか性転換すると服まで変わるのだ。まぁ男になったのにドレスを着ていたり裸になったりしても困るので助かるが不思議な現象だ。


「これで問題ないでしょう? さぁ王都にいきましょう」


 私がそうダイスを急かすと、はいはいと言い私達の姿はその場からふわりと消えたのだった。



 ぐらりと揺れる頭を手で支え周りを見るとさっきまでの光景とはまったく別のものになっていた。無事に王都についたようだ。


「で、お嬢様はどこに行きたいのですか」

「お嬢様って呼ぶのはやめて。変な風に思われるじゃない」

「今のお姿でしたら特に違和感はないですがねぇ。ではなんと呼べばよろしいのですか」

「マジスかなー。あまりかけ離れた名前だと違和感あるし」

「ではそうお呼びしますね」

「うん。よろしく」


 私も言葉づかいが女らしくならないように気をつけなければ。それにもっと子どもらしく話さないと。


「でどこに行きたいんですか」

「アクセサリー屋に行きたい」

「それなら僕いいところ知ってますよ」


 とアベルが言うものだからその場所まで案内してもらう。そのお店の前までいくと雰囲気のある素敵なお店だというのが伝わってくる。アンティーク調のインテリアが飾ってあるところも素敵だ。


 このようなお店に来るのは初めてなものだから物珍しく思わずキョロキョロと周囲を見渡してしまう。お母様といくお店も綺麗だけどこういう雰囲気のあるお店もいいなぁ。


 キラキラと光る指輪やイヤリングを見て回る。お母様が付けているような豪華な物も綺麗だが、このようなかすかにきらめく物も可愛らしくていい。


 おっと私はネックレスを探しているのだった。シンプルなネックレスはどこだろう。指輪やイヤリングを見るのをやめ、ネックレスを探さねばと探しにかかる。しばらく見て回ると私の目に止まるものがあった。


 金属で作られている猫がモチーフのネックレス。シンプルではないし、猫が鼻チューをしていてそれに加えしっぽがハート型に繋がっているというペアもの。


 か、可愛い。これはたまらない。全然シンプルじゃないしラブリーだしペアでつけるような物だけれど、もうこれ以外考えられない。でもペア物だし1人で2つ付けるのもどうかと。


 うーん。どうしようとネックレスをのぞきこんでいた顔をいったんあげる。するとこのネックレスを見たそうにしている女の子がいた。私が邪魔で見れなかったのか。ごめんなさい。


 どーぞと場所を譲るとありがとうとその子は言い、キラキラした目でネックレスを眺めてた。可愛い。


 黒髪のサラサラとした長い髪に穏やかで優しい青い瞳。ピンク色に染った頬がはえる白い肌。年は私と同じくらい。異世界すごい美幼女すごい。あ、この子魔族の血混ざってるんだな。


 その子は先ほどの私と同じようにそのネックレスが気にいったように見えた。


「あの、もしよければね。僕とそれ半分こしない?」


 もし一緒にもつ相手がいなければ私と半分ずつにしてもらえると嬉しい……いきなりだし断られる可能性は高いけどダメ元で聞いてみる。もし嫌だと言われたらこのネックレスは諦めよう。だってこんなにもキラキラした目で見ているのだから。 


 その子と目が合うと呆然とした面持ちで私をまじまじと見つめてきた。私顔に何かついてる?


「あれ、男?」

「そうだよ」


 ぽかーんと口を開けたその子は嘘だろと呟いている。そんなにもこの姿は女の子のように見えるのだろうか。ちょっとショック。私的にはけっこう男らしくイメージしたんだけどな。


 しばらくその子を見ているとぼそぼそと何かを呟いている。こんなにも可愛らしいのに言葉づかいはなかなか素っ気ない。男とペアはなぁ、なんて言葉が聞こえてくるのでやっぱりダメなんだろうか。彼女はせわしなく動いていたが、ピタリとその動きが止まると、私の方をくるりと向いた。


「こういうの好きなの? 男なのに」

「うん、可愛くて好き」

「そうか、同じだね」


 そう言うと彼女はくしゃっとした笑みを私に見せた。あぁこの笑い方好きだな。くしゃっと笑う人好きだ。別に男が可愛い物を好きでも問題ないと思うし。前世の元彼も可愛いもの好きだったし、変なことではないと思う。


「いいよ。一緒にもとうか」

「いいの? やった」

「お金どうする?」

「割り勘でいいんじゃない?」

「じゃあそうするかー」

「あっ、お金別の人が持ってるからちょっと待って」

「了解、私も母からもらってくるよ」


 私は少し離れたところにいるダイス達の元へ小走りで駆け寄る。


「決まったのですか。マジス様」

「うん。すごく気に入ったのがあったんだよ。あの子と一緒に買うんだ」

「あぁ、先ほどから一緒に話しているあのお方ですね」

「そうそう。可愛い女の子だよねー」

「そうですねぇ。可愛らしいお方です」


 ダイスからお金を貰いあの子の元へ戻ると、あの子ととてつもなく怪しい格好をした夫人がそこにはいた。あのとてつもなく怪しい人がお母様なのだろうか……布で顔を覆われているため顔は分からないが、たたずまいを見ている分には凛として美しい印象をうける。ものすごく怪しいが。


「えぇっとこの方がお母様?」

「そうそう。こんな格好で怪しいかもしれないけど、悪い人ではないから安心して」


 私はこくりと頷くと彼女とお金を出しネックレスを無事購入。ペアのネックレスを分け合うことになった相手だ。人と人との出会いは大切だし、また会えるかは分からないが名前くらい聞いておこう。


「名前なんて言うの?」

「あー。っ」


 彼女が名前を言おうとすると、彼女のお母様が腕をぐいと引っ張り彼女に耳打ちをする。 


「私の名前はリベラですわ」


 お母様から解放された彼女は引き攣った笑みを浮かべながらそう言った。いきなり女の子らしい口調になったのは非常に気になるが、きっと何かしらの事情があるのだろう。彼女の顔引き攣ってるし。きっと嘘をつくのが苦手なんだな。


 こっちだって本当の名前を教えるわけにはいかないしお互い様だ。むやみやたらに突っ込む必要はない。


「君は?」

「僕はマジスだよ。また会う時があったらよろしくね」

「うん、よろしく」


 こうして私は素敵なネックレスを手に入れるという目的を果たすことができた。全然シンプルではないが良い。気にいるものを身につけるのが1番だ。


 目的を遂行した私は街をぶらぶらするということもなく、すぐに屋敷に戻った。ネックレスを手に入れたのだから、すぐにボックスを作りたい。


 ネックレスを手に握り空間属性のアイテムボックスという魔法をイメージし、魔力を流すと魔道具が完成した。ためしにネックレスに触れ中を見ようと意識すると真っ白な何もない空間があるのが分かった。問題なく作れているようだ。


 私がネックレスを握りニヤニヤしているとダイスがこちらをちらりと見る。ダイスが部屋にいるの忘れていた。私は顔のゆるみをなんとかおさめる。


「素敵なネックレスを手に入れられて嬉しいのは分かりますが、あまりそれ目につくところに着けられない方がよろしいですよ」

「どうして?」

「冒険者になっても使うのでしょう?それペア物ですからお嬢様と男になったお嬢様が噂されるというのも無くはない話です」

「心配しすぎじゃない? それに男になった時にペアのもう片方をつけるわけじゃないんだから」

「ですがマジュリス様と男になったマジュリス様の関係が誰かに勘ぐられると面倒くさいでしょう」

「確かに。関係ありまくりだもの」

「なら、なるべく見えないように着けられてください」

「はーい」


 しょうがないので見えないように首につけたネックレスを服の中に入れ込む。まぁこのネックレスの可愛さは他の人に見られなくとも私が充分分かっているから良い。おっとまた顔のニヤケが。いけないいけない。

 


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