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謎の黒い玉

 平和な時間が流れるお父様とのティータイム。なんて平和なのだろう。お父様を更生する必要もないし。……お父様を更生? そうだ、すっかり忘れていた。大事なことがすっかり頭から抜けおちていた。もうすぐ奴隷市というものが開かれてしまうのんじゃないだろうか。確かあの時のお父様はものすごく楽しみにしていた。彼が奴隷を酷い目的で使うはずはない。お父様はいい人だということはもう充分分かってはいる。けれども奴隷市には行ってしまうようなそんな気がするのだ。それとなくお父様に確認してみようか。


「ねぇお父様、今よりも奴隷にとって制約が大きい奴隷印をつけられた奴隷がいたら何をします?」

「ご飯をものすごく沢山食べさせるね」

「えっ?」

「太って容姿が崩れてしまったら少なくとも僕みたいな思いはしないだろう?」

「それはそうですけれど、お父様が買うのでしたらそんな思いなんてまずするわけがないではないですか」


「そうだけれど、僕の奴隷でいる期間が終わった後の話だよ。奴隷って買われた時の値段を自分で払えば奴隷の身分を返上できるだろう?その後どこかで働いた時に容姿が綺麗だったら危ないじゃないか」

「でも、お父様の元を離れれば必然的に食べる量は減るのですから痩せるでしょうし、あまり意味がないのでは」

「……そういえばそうだね。なぜそこまで考えがいかなかったのだろう」

「お父様って素晴らしい方ですけれど、たまに抜けてますよね」

「どうしよう! 僕が容姿のいい奴隷を全員買ったって意味がないってことじゃないか」

「奴隷市に行く予定があったのですか」

「そうなんだよ。国が知らない奴隷市が開かれる予定があるんだ。まだ先のことだけどね」

「どれくらい先のことなのですか」

「3年くらいかかるんじゃないのかなぁ。当初の予定ではもうすぐ開かれるはずだったんだけどね。新しい奴隷印を作るのに手こずっているらしい」

「じゃあ今のうちに新しい奴隷印作りを阻止したほうがいいのではないですか」

「それはそうだけれど……たくさんの貴族が新しい奴隷印を作るのに協力してるんだ。伯爵家ごときにどうにかできる話ではないよ。王家だとか公爵家だったなら話は違ってくるんだろうけど。それに、ちょっと会いたくない奴が関わっていそうな気がするんだよね」


 お父様はそう言いため息をつく。最後の方は小声だったがなんとか聞きとれた。関わりたくない人とはいったい誰なんだろう。聞いてしまいたいが、この深刻な表情を見る限りちょっと聞いてはいけない気がする。制約が大きくなる奴隷印に関わっている人なんてのはろくでもない人には違いないが、ろくでもない貴族との関係も悪くないお父様が関わりたくないだなんてよっぽどろくでもないのだろう。


「お父様が奴隷市に行く必要はもうないのですよね?」

「そうだねぇ。使用人で事足りているし行く意味がないね」

「じゃあ行くことはないですよね」

「そうだね。主催者のアーキッド侯爵に行かない由をつたえなきゃいけないなぁ。あーめんどくさい、あの人苦手なんだよ。ご機嫌とりとしてお土産もっていこっと。元々渡すつもりだったけどちょうどいいや」


 そういってお父様が棚から出したのは禍々しさがただよっている黒い玉。趣味が悪いにもほどがある。なんだこれ。ひぇっ、今玉から目玉がぎょろりと見えたような……?


「お父様流石にそれを人に渡すのはいかがなものかと思います」

「えっそう? あの人こういうの好きだからちょうど良いかと思ったんだけどな。どうしようこれ、僕の趣味にも合わないしなー」

「壊してしまった方がいいと思います」

「でもこれ魔道具みたいで僕には壊せないんだよね。魔道具つくれる人じゃないと無理だよ」

「あっじゃあ私ならば壊せますわ。どうやって壊すのですか?」

「えっマジュリス、スキル持ちだったの。流石僕の娘だね。なんかその魔道具に魔力を流せば壊れるらしいよ」


 意外と簡単に壊れるらしい。魔力を放出できる人なんて限られているから納得といえば納得だけど。拍子抜けだな。じゃあやりますか。私は黒い玉に触れない程度に手を近づけ魔力を放出する。黒い玉はピシリと音をたて、ヒビが入っていく。そしてパリンと割れるとそこから飛び出た何かがぎりぎり私の目にとらえられる速さでお父様の方へ。私がハッとお父様を見るといつの間にかお父様の手にはナイフがにぎられてて、そのナイフには何かが刺さっていた。私がそれをもっとよく見ようと近づくと消滅してしまった。いったいあれはなんだったのか。虫?


「変な虫がマジュリスのところじゃないくて僕に向かってきて良かったよー。マジュリスが怪我していたらと思うともう……僕はなにをしていたか分からないね」


 そう微笑むお父様の顔は少しばかり怖い。私を心配してくれているのは分かるけど虫ぐらいへっちゃらなんだけどな。虫ぐらいで怪我なんてするわけがないし。お父様は心配しすぎだ。


「お父様はそんな趣味の悪い玉、どこで手に入れたのですか」

「商人から貰ったんだ。趣味じゃなかったけれど、これ意外の商品はすごく好みだったからね。なぜか僕意外の貴族からは相手にされなかったらしくてさ。黒い玉には興味を持った人は多いらしいんだけどその他の商品をたくさん買った僕にぜひ貰って欲しいって言ってたから貰ったんだ」


 お父様はそう言い、目を輝かせると従者を呼びよせた。そしてその商人から買ったであろう商品を私に見せてくる。金色に輝く目に優しくない燕尾服。うん、確かに他の貴族が興味をもつことはないだろうなこんなもん。というか、お父様まさかこれを着て舞踏会に行くつもりなのか。恥ずかしいからやめていただきたい。お父様のサイズがあったことを恨む。


 他にも宝石があり得ないくらいにゴテゴテとついた指輪。そして謎の金のチェーンを嬉しそうにお父様は腰にぶら下げだす。こうするとてもかっこいいだろうとニコニコしていますが一昔前のヤンキーみたいですからやめてくださいお父様。


 まだまだ怪しいグッズはたくさんある。ピンク色のこれまた一昔前といったようなマスクだとか、燕尾服に文字の刺繍がされているのとか、まったくもってかっこよさのかけらもない。ヤンキー色に染まるのはやめていただきたい。この世界では最先端なデザインで派手だからお父様の目に止まるのは分かる。でもそれ前世だったら笑いものなんだよお父様。


 そしてそんなヤンキーちっくな格好は、キセルを吸い込んでゲホゲホとむせてもう吸わないなんて言っているお父様に似合うものではないから。お酒もあまり得意ではないでしょお父様。あなたにヤンキーは似合わない。どちらかというと焼きそばパン買ってくるほうがお父様には似合う……


 お父様は悲しむだろうけれど、こんなものを着ていたらそれこそ伯爵家の恥。お父様にバレないようにこっそりと処分しなければ。いや私よりも先にきっとお母様が処分するなきっと。お父様のヤンキー化阻止!


 それにしてもあの黒い玉はなんだったのだろう。お父様は魔道具と言っていたけれど、魔道具とはあんなにも気持ちの悪いものなのか。そういえば私、魔道具が作れるというのに、まだ何も魔道具について調べていないなそういえば。図書室にでも行って調べてみようか。


 図書室に移動して本を探す。このお屋敷の図書室には基本的にどんな本でも置いてある。おそらく希少であろう魔道具の本についても例外なくあるはずだ。魔道具の本はどこかなっと。


 探していると魔道具の本が纏まってしまわれている棚があった。この前来た時にはこんな綺麗に整理されていなかったが、誰かが分かりやすいように整理したのだろう。おそらく、私がこれからも図書室に行くことが多くなるだろうと予想した私の使用人の誰かだと思う。そしてこんなにも魔道具について書かれている本があるということは本の補充もしたのではないか。前に来た時は確かにバラバラにしまわれてはいたけれど、こんなに数はなかったような気がする。たぶんダイスだろう、さすがだ。


 私はその棚から魔道具のことがなるべくわかりやすく書いてありそうな本を手に取る。といっても魔道具作成スキルをもっているのは大抵大人だから、内容的にはすごく難しい。ただ比較的読みやすいというだけだ。


 本に書いてあることを頭の中で噛み砕きながらなんとなく理解をしていく。この国で使われている言葉は大抵もう知っているつもりでいたけれど、分からない単語がいくつかあった。そのため久しぶりに日本語が文字の上に浮かび上がるのを見た。なつかしい。そんな懐かしさを感じながらも本を読み進めていく。

 

 なるほどねぇ。全部読み終わったがために本をパタンと閉じる。意外と簡単に作ることができそう……かな?


 魔道具をつくるためにはまず何かしらの道具を用意するらしい。剣でも机でも雑草でも何かしらの魔道具となる元の物が必要。何もないところから魔道具を作り出すということはできない。


 用意したらその後に必要なのは想像力だ。この剣に炎をまとわせたいだとかお金が出てくる机だとかそんなイメージ。もちろん想像したことすべて付与できるわけではない。そんなことをしたら魔物が永遠と湧き出てくるバックなんてのも作れてしまうことになる。世界征服なんてのもできちゃうなきっと。


 魔道具を作るには魔法が少し関係している。スキルは魔力を使わないというのに少しおかしな話だがそういうものなのだろう。イメージの元となる魔法が無ければ魔道具をつくることはできない。


 けれどその元となる魔法さえ知っていれば魔道具は作れる。使えればではない。知識にあれば作れるのだ。特級魔法を知っていればそのイメージを道具に付加することができる。


 といっても付加したとしても威力は大分落ちてしまう。特級魔法をイメージしたとすれば上級魔法ほどの威力、上級魔法ならば初級魔法程度になる。それでも魔力を消費しないのだから充分すごいと言えるが。


 そんなすごいものだからか攻撃に使う魔道具は値段がとんでもなく高いらしい。それとは逆に攻撃性のない魔道具はけっこうリーズナブルな値段で売られている。


 この世界には電子器具は勿論ないが、蛍光灯や冷蔵庫に非常に似ている魔道具はある。しかも貴族だけではなく一般家庭にまで普及しているのだ。それなのに所々移動が馬車だったりと古めかしい部分はあるというのがなかなか謎だが。そんな部分はあるがけっこう地球と遜色のない生活を送れていたりする。ありがたい話だ。


 むしろ地球より過ごしやすいかもしれない。ボックスという魔道具なんかは地球の人がみたら羨ましいものだろうし。小さなカバンの収蔵できる量が部屋1つぶんぐらいあり、重さも感じないなんて羨ましくて仕方がないだろう。ボックスは多少値がはるけれど、ものすごく高いわけではないので手に入りやすいし。


 で、肝心の魔道具の作り方は物に魔法をイメージしながら魔力を流せば作れる。ちなみに魔力を流すのは1回のみ。2回流すと今回の黒い玉のように壊れてしまう。作るのも壊すのも簡単にできてしまうという優れものが魔道具なのだ。


 こんなに簡単にできてしまうのは魔道具作成スキルをもっている人が少ないからなんだろうきっと。このスキルを持っていればまず食べるのには困らない。魔道具屋協会に入ることができるとボックスや冷蔵庫もどきを作って生涯安泰な生活を送ることができる。しかも殺される危険が少ないというのもこのスキルの利点。


 魔道具というのは作成者が死んでしまったら魔道具として機能しなくなる。そのため、スキル持ちの人を殺してしまったら自分の持っている魔道具が使えなくなるかもしれないので殺される危険が少ないのだ。誰か作った魔道具かなんてのはいちいち分からないし。自分が作った魔道具に名前を彫り入れる人もいることにはいるが。だからかスキルを持っている人はなるべく長生きさせようと国が補助することもある。


 ちなみに魔道具スキルを持っているからといって必ずしも魔道具屋協会に入らなければいけないというわけではない。強制ではないが、そこに入ったほうが生活が安定したものになるので入会する人が多いだけの話だ。私が生活に困ることはないだろうが、もし万が一なにかあったら私もお世話になることにしよう。


 そういえばこの前ダイスがお父様が私に魔力を与えていたと言っていたけれど、魔力を流すことができるのはスキル持ちでなければできない。だからお父様は何かしらの魔道具を使って私に魔力を与えていたのだと思う。 お父様わざわざ魔道具を買ってまで私に魔力を与えてくださるなんて。


 そんな優しいお父様への恩返しとして私は立派に育たねば。魔道具も簡単に作れそうだし、このスキルを使いこなせるように頑張ってみよう。


 ということで早速、作ってみることに。まず何に魔力を流すか考えよう。剣や弓は今の時点では無理だ。作っても使いこなせないし。まずこの手の大きさでは握ることができない。3歳児が剣を握っている姿はなかなかにシュールだ。いや小さい子ども専用の剣だったら問題ないのか。そんなものあるのか分からないけど。


 なので武器ではなく身近にあるものを使って魔道具を作ろう。これからもずっと使っていきたいし貴族令嬢が持っていてもおかしくないものにした方がいい。冒険者になる頃には武器も握れるし使えるだろうけど、そんなのはその時に作ればいいのだ。


 今は令嬢に相応しいもの。攻撃性もたいして強くなくていい。かすかに凍るとか火傷するとかそんなもんで充分。すでにどんなものを作るかは決めてある。


 なのでそれを机の上に出す。お庭から摘んできたばかりの薔薇。白い薔薇を3本ほど。この花それぞれにファイアをイメージしたもの、フローズンをイメージしたもの、パラリー(麻痺状態)をイメージしたものを付加する。


 この世界の私の容姿はいいものだと自覚している。しかも私は伯爵令嬢という立場にある。ゆえに余計なちょっかいを出す人もちょいちょいいそうだななんて思うのだ。そんな時にこの薔薇があれば「私に触ると火傷しますわよ」なんてことが言えてしまう。実際火傷させることができるし。お高くとまっている伯爵令嬢というものをやってみたい。


 3種類もあるから、ちょっとピリッてさせることも少し凍らせることもできる。イメージした際に赤と青と黄の色のイメージもしたから、薔薇はそれぞれその色に染まっている。だから気分によって持つ薔薇を変えることができるのだ。素晴らしい。


 あとはボックスも作っておいた方が便利だろう。ボックスはバッグであることがほとんどだ。私もバッグを使おう。しかし今のところ長く使えそうな私の好きなデザインのバッグはない。劇団裏方衆に素敵なものを作ってもらってからにしよう。今日のところはこれで満足。





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