8.世界の終わりの話
「ごめん。話をこの能力を持った者と、その能力に気付き利用している人達から始めるね」
「利用している……」
そうだ鏡野は見張られている。そして、この遺伝子を持ったものは少ないが僕ら以外にも確実にいるんだろう。でなければ、鏡野の母親が殺される理由がない。鏡野も言っていた惹かれ合い結婚して子孫を残すようになっていると。僕らの様に能力が出てしまってそれがバレれば……能力を欲しがってる人には見抜かれてしまうだろう。しかも遺伝する。芋づる式に発見される恐れだってあるんだ。ここまで考えて僕は怖くなった。
「家族や親戚はどうなるの? 君と接触して……僕はどうなるの?」
不安がよぎって思わず口走った。鏡野の母親の死が重くのしかかってくる。
「今のところ私とはただ付き合ったようにしか見られてないと思う。ただ、私は一つの目的の為に今日あなたにこの話をしてるんじゃないの。まずは、柏木君がバレないようにしてるけど、日常的に力を使ってたこと。上手く忘れ物を部屋から自分のカバンの中や机の中に移動させていた。普通ならバレることのない程度の力の使い方なんだけど、私が同じ教室にいる。常に見張られてるから、何かの拍子に柏木君の力が奴らにバレないとも限らなかった。でも、ただ柏木君に力を使わないでと言っても話が通じない。だから、すべてを話す必要があったの。ただ、柏木君が何の力を持っているか観察している間に柏木君の私への想いに気付いた。そして、柏木君の力でこの能力の遺伝子を消す装置の設置が危険なく出来るんじゃないかと考えた。私の想いと柏木君の想いに加えて、危険を回避する為に能力の使用をみだりにしないことを柏木君に伝える事、そして最終段階にその能力を借りたい、そして最後は私の保身の為よ」
「鏡野の保身って……」
黙って最後まで話を聞こうと思っていたが遂に口出しをしてしまった。
「私の能力はある程度の危険は避けることは出来るけど、直接危機に面した時には役に立たないもの。だからって、母の研究室にこもる訳にもいかない。だけど、柏木君の能力ならそれが出来る。相手を動かす、危険物を動かすとか」
ああ、そういうことか……。えっ、でも……
「それじゃあ、そいつらの前で僕が力を使ってるけど……」
「柏木君が私を守る時ならその場に私がいる。能力を持っているだろうと私は確実に思われている。能力を使ったとしても、それは私の力だと思うはず。私のは絶対に人にはわからないものだし。だから、大丈夫。それにそうはならないように立ち回る。最終の保険みたいなものだよ。私は死ぬわけにはいかないの。どうしてもやり遂げないと」
「お母さんの為に?」
鏡野は首を振って答えた。真剣な顔で。
「違うよ。人類のために。そして、地球の為に。地球にいる全生物の為に」
「へっ!?」
話が大きくなり過ぎて僕は変な声が出てしまった。今日はこんな事ばかりだ。鏡野好い加減僕に幻滅したりしないかなあ、なんて僕の不安をよそに、鏡野は真剣な表情のまま、なぜかパソコンの電源を入れ話を続けた。
「大きな話だけど大げさじゃないんだよ。今の現状も大問題なの。警察や裁判で使われる証拠や目撃情報を柏木君はひっくり返す事が出来るよね? 自分を動かさないでも証拠や殺人事件なら遺体を移動させることも。そういう力を持った人が今何人いるのかわからないけど、力がなければしなかった犯罪行為もするようになる人もいる。さらにこの力を知っている組織に見つかれば、買収される。買収で同意しなければ家族や大事な人を人質に、誰もいなければ本人が人質になる。組織には能力を持った人間が沢山いるから、同じく能力を持った人間を脅すのは簡単だしね」
やっぱり能力を持った人を集める人達がいるんだ。僕は背中に冷たい汗が流れるのを感じながら鏡野の話をかたずを飲んで聞いていた。これがどう世界中の生物まで被害が出ると言うんだろう。




