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7.一人きり

 さっき両想いだと言い合ったばかりで、その子の部屋にいるなんて……。

 鏡野は僕に飲み物用意するからと部屋を出て行った。


 僕は鏡野が一応千里眼で見ているかもと警戒しながら、伸びをするフリをしながら、鏡野が一緒にいたのでよく見てはいなかった彼女の部屋を見渡した。

 僕には美咲という中二の妹がいる。見渡した部屋は美咲の部屋と全く違っていた。美咲が中学生というのを抜きにしても違っている。雰囲気がまず違う。美咲の部屋はごちゃごちゃと好きなものやぬいぐるみを置いてるからか、可愛い女の子の部屋の典型だろう。色合いもピンクや赤、可愛らしい雰囲気だ。鏡野の部屋は例えるなら綺麗好きな男の部屋みたいだ。

 ここには美咲の部屋にあるぬいぐるみや壁一面かと思うほどの友達との写真もない。ただ壁一面の本棚の本と机とベット、ベットカバーも茶系だし少しも女の子らしくない。写真は机の上に一枚しか飾っていない。友達との写真とかじゃない。

 写真に写っているのは多分鏡野の母親だろう。鏡野によく似ている。十年後の鏡野だといわれても不思議には思わないぐらいに。横には一輪挿しの花瓶にガーベラらしき花が一輪生けてある。女の子を連想させる物はその花ぐらいだろう。

 家が大きいせいで部屋も大きくなったのだろう、大きい部屋に特に鏡野のこれっていうものがない部屋に座っていると、なんだか今まで感じたことのないような孤独感に襲われる。鏡野はここにいていつもどう感じているんだろう。この部屋に一人でいる鏡野を想像して、僕は教室の彼女がずっと一人でいるのを連想した。


 鏡野は一人でいることが平気そうに見える。休み時間はほとんど一人で本を読んでいる。

 ただ、お昼は最初は食堂に一人でいたのに、何時の間にか食堂で佐々木先輩と先輩の友達といるようになった。その前から、一緒に登校しているとか、親しげにしているとかで、佐々木先輩と付き合ってるんじゃないかという噂はあったのだが、この件で二人がやっぱり付き合っているんだという噂話が回っていた。

 だが、お昼はいつも二人きりになることはないし、朝練の時はお互い一人での登校だし、だいたい帰りを一緒にしないので、疑問を残した噂話となっていた。けれど、兄妹なんだとわかってしまえば、朝練がなければ一緒に家を出る、そうなると無理に時間をずらさなければ一緒に登校となるし、昼ご飯も一緒に食べる行為も、一人でいる鏡野を先輩が放っておかなかっただけなんだろう。

 鏡野は自分から進んで会話に加わったりしない。声を掛けられれば答えるし、聞きたいことも聞いているようだし。だから、無視されているのでも、周りを避けているというわけでもない。ただ用事がなければ一人でいる、という感じなのだ。

 これも今いろいろわかった上で見れば、鏡野はワザと一人の時間を作り、見張っている人達の動向を見ては削除するという行為を繰り返していたんだろう。話しながらは出来ないから、本を読むふりをしていたんだろう。こうやって鏡野を見ると、鏡野はいろんなことを考え一人で行動し続けていたんだ。


 想像するだけであまりに孤独な毎日、過酷な日々、それでも彼女は普通の女子高生であるように振る舞っている……なんで僕が声を掛けられたんだろう。佐々木先輩の方が確かに力を持ってないからわかってもらいにくいけれど、鏡野との信頼関係は僕なんかよりずっとあっただろうに。


 それは彼女の恋愛感情にも関係あるんだろうか、先輩への想いを確認したから……。でも、僕には始めから話すこと前提だったみたいだ。様子を見て話を辞める気はなさそうだった。やはりこの変な力を僕が持っているからなのか。話はやっぱり全く終わってない。だいたい僕と彼女の能力がわかっていったい何になるんだ。


 そうやって僕は答えの出ない迷宮に入った頭を抱えた。その時鏡野が部屋に入ってきた。飲み物とお菓子と用意していたが、その割に時間がかかったように思う。もしかして……


「見ていたの? いろんな場所や人達の事を」

「そう、ごめんね。待たせちゃって。早目に見ておかないと手遅れになったら困るし、一人でやるのが一番やりやすいから、つい」


 鏡野はそういいながら僕の前に座りテーブルに飲み物やお菓子を並べて行く。こんなに普通の彼女がなぜあんな一人の世界に居なくちゃいけないんだ。


「いいよ。危険な事はなかった? 僕たちをつけてた奴はどうなったの?」

「大丈夫。さっきのはただの告白で一緒に家にいるって思ってるみたい。ここは中を知ることが出来ないし。それに私に能力があるのにも気付かれてないしね。得意なのは文系だと思ってくれてるし、ワザと物理や数学は成績落としてて、私が母の研究は継げないって思わしてるから。相手は万が一の為に私に尾行をつけてるだけだから。母が遺言書で遺すから目をつけられちゃったんだけどね」

「わざと物理と数学の成績落としてるの?」


 僕が今現在1位にいるんだが……鏡野は二位だ。本気でやれば僕を抜いて鏡野が学年1位になるって事?


「理系だってバレると、今よりきつい見張りがついて、自由に情報集めや実験や装置の作成なんかが出来なくなるから困るんだ」


 やっぱり鏡野にはこの能力に対しての対処方があるみたいだ。


「鏡野。聞いておきたいんだけど」


 僕の改まった態度に今までの鏡野のどこか楽しそうな表情は消えた。


「うん。だよね、細切れな情報ばかりで混乱させていたよね。聞きたいことは何かな?」


 聞きたいことは山のようにあるのだが、どれから言えば良いか思いつかなかった。取り敢えず最終目標に聞いてみた。


「鏡野、最後にはどうするの? というかこの力どうなるの? 僕達は一緒に何かやるってこと? これからの活動には僕も加えるってことだよね?」


 質問し出したらとまらなくなった。そんな僕の怒涛の質問に鏡野は淡々と答えてくれた。


「最後は母が考案したものでこの地球上からこの遺伝子を消す」


 この鏡野の言葉に僕は思わず反応してしまった。消すって……死ぬってこと? ってか鏡野のお母さん考案してたら何で何もせずに死んだんだ。僕の疑問の答に対する反応を見て鏡野は補足してくれた。


「母の研究は最終段階まできていたと思うの。ただ実現する条件を揃えられなかったじゃないかって思う。できなかった理由は、その時の科学が追いついてなくてその装置が作れなかったんだと。レオナルド・ダ・ビンチもその頃の科学技術では実現不可な発想を実現させ様としていくつも失敗している。そんな感じだと思うんだ。母の研究ノートを見ていると。もう一つは世界中に広げるために様々な場所に設置する事。これは秘密裏にやりたかった母には困った問題だったと思う。飛行機などで全世界に装置を送るのは難しかったから。私はこの問題の解決方法は何とかなると思ってる。一方は科学技術が母の死んだ頃よりも飛躍的に進んでいること。そして柏木君が参加してくれたことで、もう一つもかなり実現可能になった。それから、消えるっていうのはみんなと違う遺伝子の部分が正常化され、あの能力の部分の遺伝子異常が消えるってこと。決して、死ぬことじゃない。母がそんなの考える訳ないから」

「僕が? 僕が何をすればいいの?」


 いきなり話に僕が出てきて、僕は動揺した。まさかあの能力を使うって事……鏡野は僕をどうしようとしているんだ。動揺している僕を見て鏡野は顔を強張らせた。そして、話した。この世界の終わりについて。


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