47.明日までは*柏木&アリス&桃李*
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いつものように僕は九条と八雲さんをそれぞれの場所に移動した。八雲さんはマウスを置いて行った。しばらく距離を伸ばす研究をするから貴重なマウスを変化させる訳にはいかないからだ。僕は鏡野と別れ家を出た。不安な気持ちでいっぱいだったが、やるしかないと途中から思えてきた。それが示された方向ならするしかない。
ただ、鏡野と美咲だけではなく僕も行くつもりだった。移動には僕が必要だ。時間移動してから移動する方がより正確な場所に行ける。本当は二人だけにするのが不安だからだ。だけど……僕は僕を移動出来ない。近くにいて見守る事が出来ない。それに、第一次世界大戦中の日本に時間移動するのは危険が大きい。先にファティマに移動させた方が安全なのかもしれない。
ああ、歯がゆい鏡野と美咲だけで送るなんて。今は九条には力はない。九条を送るメリットはないし、佐々木先輩の時間移動の仕方がわからない。僕のようならどうするんだろう。鏡野は時間を超えて映像は送れない。戻すタイミングもわからないし……佐々木先輩自身が行くなら最初の実験で帰って来れなければ、鏡野の子供の頃に行ってしまう。危ない賭けだ。やっぱり相当な不安の残る実験だ。
考えごとをしながら歩いていたせいで、すっかり遅くなった。日暮れが早くなっている。もう赤い空に夜も影がさし始めている。僕は家までかけ出した。元気になった上に鏡野と会った美咲は何だかんだとうるさい。僕が何をしているか知っているくせにチャチャをいれてくる。面倒なので早く帰ろう。美咲に今日の話はまだしないでおこう。無邪気な美咲に負担をかけたくない。
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うーん。よく考えてみるとあまり過去だと危険かもしれない。そういえばこの前この辺りにあったような……。
昔の写真を探していた私は物置に移動して探していた。確かこの辺りで見た気がする……。この前ビデオカメラを探しに来た時にこんな物まで置いてあるのかと写真を見ていて思い出したのだ。
ビデオカメラも私が大きくなってすっかり出番をなくし物置行きになっていたけれど……あ、あった。ポラロイドカメラ。フィルムというか……なんていうんだろう……予備のものもある。これがあれば安心して時間移動の実験が出来る。桃李自身が移動してしまう事を思いついて不安になったからだった。
桃李を私の子供の頃に行かせっぱなしに、なんて事態も考えられる。さっきとういう分単位での移動ならば問題もない。これで安心して実験できる。一番の心配は乗り気でない桃李が強く願ってくれるかということだ。
それにしても心配だから美咲ちゃんも監視対象に含めているんだけど、例の少年を部屋で出す分は危険もないからとスルーしていたんだけど……それが柏木君だったりする。なんで? と気になり止めて思わず見ていた。美咲ちゃんは話かけている。返事もするみたいだ。驚きの新事実だ。柏木君の声で柏木君らしい返答だけど。たわいもな会話なんだけど、何でわざわざ出すのか。例の男の子ならわかるんだけど。
柏木君が最近家にあまりいないからなんだろか? テニス部がない日でも土日に休みがある日でも柏木君と会っている。実験とかしない日でも……それが原因なのかな? さみしいのかも。
もし桃李がそうなったら私もそうなるかも。間違いなく千里眼で見るだろう。いけないとは思っても……。そういうものなのかな。私には態度は普通だったし、ちょっと興味もありそうだったし、敵意ではなかったから、さみしいんだろうな。
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今日は冷静に料理できそうにない。お手軽メニューで済ませよう。アリスは写真探しに消えている。不安と恐怖が押し寄せる。ただの能力ではない、この中の誰よりも強い力だ。八雲さんが一番弱いみたいで未来が勝手に見える、アリスの母親と同じぐらいだろう。次は九条か。次にアリス、柏木が来るだろう。柏木の妹の能力も思えば柏木も強い力だろう。話だけだが作り出したものに感触や体温などがあるなんてすご過ぎだろう。……僕の能力はどれくらいか測る材料が全くない。アリスと血が繋がってないし、母も力を持っていないから全くわからない。
そして、問題は強く願えるかだ。正直気乗りもしていないんだ。どれくらい願えばいいんだ。これまで生きてきて、それなりに思ったり願ったりしたけどそれでも何も持ってないんだ。かなり強く願う必要を感じて、プレシャーになっていた。出来ても出来なくてもプレシャーだ。出来るかどうかわからない事なんだ。どこが失敗なのか力不足なのかわからない。答えのわからない事をする不安と、出来てしまったらアリスを過去へ送らなければならない不安が入り混じる。アリスを失う事だけはしたくない……なんでこんな役目が回って来るんだ……。
アリスの足音が聞こえる。アルバム探しは終わったんだろう。
キッチンに現れたアリスを見て思わず聞いてしまう。
「アリスそれ……カメラだよね?」
「うん。考えたら桃李の能力どう出るかわからないし、桃李が行ってしまったら戻れる保証もない。だから、これで撮ったついさっきに移動させたらいいと思って」
「あ、そうか……それもそうだな」
俺は不安に襲われていてそこまで気がつかなかった。確かに俺自身も過去へ行って、そこで力切れで帰れなくなればアリスの子供の頃に置き去りにされる。それは……困るを通りして大変な事になる。
「でしょ? これなら数分過去へ行くだけだから同時に桃李が数分存在するだけで後は数分年を余計に年を取った桃李だけが残る事になる。何も問題はないでしょ? まあよく同時に同じ人間は存在しちゃダメだとか……SFでは聞くけど……そんなの私が子供の頃に行っても同じだしね」
アリスはいつもの場所に座った。
「アリス今日もか?」
「うん。貯めると倒れちゃうからね」
「……なあ、まだ見ないといけないのか?」
アリスは少し考え込んでいたが俺をみて笑顔で答えた。
「見ないと不安なの。もう少しでしょ? だから、もう少し頑張るよ」
「そうか」
もう少しかもしれない。けれど、どれくらいかはわかってない。でも、皆の危険回避のためアリスは見ることをやめない。……俺がやらないと……終われないのかな……。俺はアリスの頭を撫でた。アリスはもう頬杖をついていて気付いてない。メニュー変更だ。アリスの好きな物に変更した。俺にはこれぐらいしか出来ない。……明日までは……。




