表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/55

45.預言の暗示*柏木&アリス*

「彼以外や、人間以外も出せる? 例えば水とか太陽とか」


 ん? 太陽? どこかで……あ、ファティマ……まさか鏡野……。


「えっ? 人間は他にも出したことはあるけど……」


 美咲は僕をチラッと見た。ん? 僕を出したのか?

 次の瞬間僕は鏡野の隣にいる僕を見た。鏡野はまた触っている。いや、鏡野……あの……そんなに……。顔が熱くなる。そんな僕と対象的に鏡野は冷静に観察している。


「水は?」

「ああ、いえ、ないけど……えっとやってみます」


 美咲が言った瞬間僕は消え、小さな噴水が現れた。鏡野が触れる。


「冷たい……本当の水のよう……消してみて」

「あ、はい」


 噴水は消えた。鏡野は手を見つめている。そして、僕に差し出す。手はもちろん乾いたままだ。


「さっきは濡れていると感じたのに。……すごい、すごいよ。柏木君! これって……」

「ファティマの預言だね。鏡野、ファティマに預言しに行く気だろ?」

「ねえ、何その、ファなんとかって?」


 鏡野との話の前に美咲に話さないと。


「鏡野、先に美咲に説明しないと」

「ああ、うん。そうだったね」


 それから僕と鏡野はこの遺伝子の話をした。ファティマの預言と世界の終わりとそれを止める計画を。この力が何なのかは僕たちにもわからない、けれど進化いや、変化の途中であることも。そして変化の先にある絶望を。




「そう、だったんだ。だからお兄ちゃんずっと鏡野さんのところに行ってたんだ。てっきり……」


 てっきりなんだよ。美咲! 鏡野がいなければ聞いていたが、今はやめとう。美咲は話の大きさにビビってはいたが力を持つのが自分だけではないことや、この力を消す方法があと少しのところまで来ているのを聞いて安堵したようだ。


「あの、さっきのは預言の事ですよね? 預言と私の力って……」

「美咲ちゃんの力と私の力で預言と奇跡が起こせるの。私のビジョンを見せる力と美咲ちゃんの実物かのようなフェイク。その時にはそう感じる。私では出来なかったこと。諦めてたの。だけど、これで出来るかも知れない」

「だけど! 場所は移動出来るけど、どうやって過去に……あっ! 佐々木先輩……」


 佐々木先輩は力をまだ手にいれていない。だけど……。


「そう桃李に出来るかはわからない。でも、願ってもらう。過去に送り戻す力を」


 送り戻す……そうだ。行ったままじゃダメだ。戻らなければ意味がない。でも……


「ファティマを僕たちがやらないとっていうのは、決まってはいないんだよね。鏡野はなんでそこまでこだわるの?」

「私達はファティマの預言以外の事、太陽、千九百六十年、そして様々なリアルな奇跡、世界の終わりの暗示で沢山のヒントを与えられた。これが何かの偶然だったり、別の誰かだっていう可能性は薄いような気がして。母は未来を見て自分のノートにヒントを遺した。八雲さんも未来を見て、そのことで私達は出会う事になった。九条君も。柏木君あなたも。そして、美咲ちゃん……」


 確かに、今のタイミングでこの美咲の力はファティマの預言を暗示している。でも、でも!




「鏡野危険だよ。当時は世界大戦真っ只中だ。それに行っても帰って来れる能力なんて……それに本物の聖母がいれば……」

「聖母が別にいたら帰ってくるだけだよ。いつ現れたかちゃんと残っている。その通りに行って本物のというか別の誰かがしていれば帰ればいいだけ。最初にこの計画を実行しようと話してた時に言ってたよね。ダメだったら、何度だってやればいいって。世界大戦真っ只中だけど、一万人奇跡を見に来たのよ。戦時だけど、世界中が火の海って訳じゃなかったんじゃない? でなきゃ一万人も集まったりできないと思うし。行って帰る能力が桃李に身につかなければ絶対やらない。絶対に出来るか確実に出来るか実験はちゃんとする。私だけじゃない美咲ちゃんにも参加してもらうんだから、危なければすぐに手を引くよ」

「あ、あの私が奇跡を起こすっていうこと? 過去のファティマっていうところに行って……」


 美咲が怯えた様子で聞く。今の会話ですっかり怖気ずいたんだろう。でも、そうして欲しい。美咲にも鏡野にも危険は冒して欲しくない。なぜ、だめなんだ。ファティマはもう過去だ。未来の話はわかる。だが、なぜ過去にまで戻るんだ。奇跡を起こすのはそう簡単じゃない。中学生の美咲にそんなことができるなんて思えない。確かにさっきの力はすごかったけど。


「そうだよね。ごめん。私の気持ちが焦り過ぎた。出来るかもって思うと先走り過ぎた。ファティマの預言はもう起こってる事だよね。そう、それをしに行く……うん。もう誰かがしてるんだよね。遺したんだ。後の者にヒントを。母の時でさえ実現不可能だったんだもん。ヒントを遺すしかなかったんだよね。ごめん。美咲ちゃん、ただでさえ力の事で悩んでいたのに。もう忘れて。その力ももう少しで消えるから。心配しないで」


 鏡野は微笑む。そうだ、鏡野は長くこの事を考え研究し続けていた。ファティマの預言や奇跡、母親の遺した数々のヒント、まるで何かに導かれるようにここまで来た。ファティマの預言をした者が誰かわからないまま力を無くすのを不安に思っているんだろう。自分達ではないかと。やらなくてはならないことをしていないんじゃないかと。

 ……ファティマの預言をやらなかったらどうなるんだろうか……。ヒントをなくしたら……ここまでたどり着けない僕らがいるのか……


「鏡野……今度八雲さんに聞いてみよう。八雲さんは気にしていなかった。それなりの理由があるのかもしれない」

「うん。そうだね」


 鏡野はやっと微笑んだ。良かった。


「じゃあ、そろそろ帰るね。桃李にも言って来たからきっと心配してる」

「それって、佐々木先輩にファティマの事を話てたの?」

「うん。でも、柏木君と同じように反対されたけどね」

「そうか」


 鏡野の部屋が頭に浮かぶ。合図だ。


「じゃあ、また明日でいいよね?」

「ああ、また明日」


 僕は軽く手を挙げ鏡野を部屋に送った。映像が途切れる。

 美咲はもう驚かなかった。


「ねえ、その佐々木先輩って誰?」


 美咲の質問が飛ぶ。

 美咲に佐々木先輩について説明した。


「あーもー話がそこでわかんなくなちゃった。」


 この大事な話のつまづくとこはそこかとツッコミながら、すっかり悩みの消えた美咲を見た。母さんには適当に恋の悩みだとかなんとか言って、この力の事は誰にも言わない見せないと約束させた。美咲はすっかり元に戻った。鏡野さん可愛いなあ、お兄ちゃんには勿体無い、とかブツブツ言っている。せっかく静かだったのにと思いながらも、美咲の口撃を心地良く思った。美咲は口うるさいくらいの方がちょうどいいんだと。

 帰って来た母は美咲見て驚きながらも喜んでいた。美咲がお風呂に入っている間に僕に何をしたんだと聞かれたが、美咲に内緒にすると約束したという事にして内緒だと言って話を終えた。母も元に戻ったからまあいいかという感じで鼻歌混じりで去っていった。美咲に恋の悩みだということにを反対されたからだ。事実もそうだったんだろう、あの少年……。


 ***



 柏木君の力で私の部屋に戻してもらった。うう、気持ち悪い。八雲さんも九条君も毎日のように柏木君に移動されてる、これ我慢してたんだ。しみじみ皆の苦労を思う。

 なんて思ってる場合じゃない、桃李が心配してる早く報告しないと。私は部屋を出た。

 私は柏木君に呼ばれたこと、そして柏木君の妹の美咲ちゃんが力を持ったみたいだと桃李に告げて、急いで身支度して柏木君に電話した。

 桃李はやきもきして待っていた。ファティマの話を昨日したばかりだった。それが、今朝になって新たな能力者の出現だったから、余計に心配したんだろう。

 そして、その心配は的中する事になる。

 美咲ちゃんの能力の話を桃李の部屋に行き話した。ファティマでの奇跡や預言が実現可能な能力だと。


「そうか。……現れたんだな……」

「うん。でも……八雲さんに相談することにした。柏木君の妹さんも過去へ行くことになる。やっぱり危険があるし、柏木君は賛成してくれなかった。桃李みたいにね。だから……」

「八雲さんに相談か。そうだな」


 桃李も話を聞いて焦っていたみたいだ。身を乗り出して聞いていた。そりゃあ、心配だよね。時空を超えて行くんだ。しかも戦時中に。中学生の美咲ちゃんを連れて行くのはやっぱり責任を感じる。それにファティマの預言や奇跡を起こすんだ。一人でこっそりと幻影を出していただけの中学生に一万人を騙して奇跡に見せさせるんだ。


「八雲さんが何でファティマの預言に触れないかも聞いてみたいし。ずっと気になってたの」

「そうだな……」

 桃李は口数が少ない、やはり心配と自分の能力を持つ時が来たこと、どちらも桃李にとっては重荷なんだろう。ごめんね。桃李。


 その日は朝に柏木君と別れたから、昼から時間があったのでファティマの預言や奇跡をもう一度調べてみた。前はどこかにヒントがあるんじゃないかとそういう視点でみていたけど、今度はどうやれば私と美咲ちゃんでファティマの預言や奇跡を起こせるのかそういう視点で見ていた。日付や現れかた何をし、どうやったらできるかを。調べれば調べるほど、これもやっぱりしなければいけない事なんだろうかと思えた。美咲ちゃんと私で表現可能だから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ