005-004
夕食をすませ、一杯ひっかけ、もう一人分の食糧も適当にみつくろって部屋へ戻れば。
密林の美女、おれの奴隷は、おれのベッドですやすやと眠りこけていた。
月明かりに映える、あどけなく安らかな寝顔。
それをまのあたりにして我知らず和んでしまったおのれに気づき、おれは面食らった。
こんな気持は、あの時以来だ。
ノエルタリアと森で過ごした、理屈抜きの、史上のひととき以来。
おれはむかっ腹を立てた。ノエルタリア以外の女に心を動かした自分に。
おれをこんな気分にさせた、この密林の娘に。
だからおれは、わざと乱暴にシーツを跳ね除け、強引に寝床へもぐりこんだ。
娘は当然、目を覚ました。
悲鳴を上げかけ、すんでのところで押しとどまり、慌ててベッドから飛び出した。
暗がりの中で、なにかにつまずいたらしい。
派手な音を立てて、娘は床に転がった。
ずるずると這いずり、壁面までたどり着くと、背中をそこに貼りつけて、こちらを向く。
咎めるように黒光りする、アーモンドアイ。
「……なんだその目は」
おれは不機嫌に、彼女を睨みつける。
「いいか、ここはおれが借りた部屋だ。汚い売春宿の一室だが、ともかく今夜はおれの寝ぐらなんだ。おれがおれの金で手に入れたベッドに、おれが寝てなにが悪い」
おれは一気にまくしたてた。
娘は下唇を噛み、瞬きをしながら、悔しそうに目をそらした。
おれは深呼吸で息を整え、いくらか落ち着いた声で続けた。
「……食い物は、そこのテーブルだ。食いたきゃ食いな。それともうひとつ、おれが気に入らないんなら、逃げたってかまわないぜ。ドアの鍵は、ここだ。が、これだけは言っとく。当分の間、傷口は清潔に保っとけよ。もし、ここに居つきたければ、飯盛り女として働かせてもらえるよう、女将に口きいてやってもいい……まあ、好きにするがいいさ」
言うだけ言うと、おれはベッドにひっくり還った。
けれどなかなか寝付かれず、苛立ちもあらわな寝返りを、幾度となく、繰り返した。