004-005
おれの父と同じ名を持つこの男は、賞金稼ぎのならず者だった。
彼はどんな気まぐれを起こしたのか、おれを拾った。
彼はおれを奴隷のようにこき使い、猟犬をしつけるように従わせ、ときには、特に酒を呑んでは、理由もなくおれを怒鳴ったり、殴ったりしたが、ごくたまには、おれのことをまるで実の息子みたいに可愛がったりもした。
おれはおれで、短絡的にも父と同名というだけで、この男に対して親近感を持ってしまい、多少理不尽な扱いをされても憎めず、また、時折、忘れた頃に不意に示される優しさなどにもほだされて、ずっと彼と一緒にいた。
恩人と、呼ぶべきだろうか。
とにかく、彼からひじょうにたくさんの事柄を学んだのだけは事実だ。
おれは、彼の指導のもと、一人前の無宿者の男がひと通り知るべきことは、あらかた体験できた。
酒、煙草、薬、女。
その他、身の守り方、ハッタリのかませ方、敵との微妙な駆け引きと確実な倒し方。正しい悪事の働き方。
戦場にも傭兵として赴き、もしも王子の肩書きを書って特別待遇で出陣していたとしたら、ついぞ味わう機会がなかったであろう、この世の地獄というやつを、最前線でたっぷりと堪能した。
また、あるときは二人でヤバイ組織を向こうにまわし、危ない橋も何度か渡った。
ボロい儲けに有頂天になったこともあるし、痛い目をみたことだって一度や二度の話ではない。
おれたちは呼吸の合ったコンビだったと思う。
互いに過去は口にせず、つねにこれから先、どうするかをだけ熱心に語り合った。
その日暮らしに、いきあたりばったりの、ちゃらんぽらんでハチャメチャな未来を。
おれたちの微妙な主従関係は、時が経つにつれてますますあやふやになり、どっちが面倒みてるのか、世話やかせてるかわからなくなり……そんなことさえ、だんだんどうでもよくなってきて……おれたちは毛色も似通っていたから、はたから見たら、親子以外の何者にも見えなかったに違いない。
四年間、そうして暮らした。
あちらこちらを、流れ流れて。
幕切れは、ビアズレーの死によって、だった。
そのことについては、ふれたくない。
ふたたびおれは、虚しさに包まれた。