表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/30

004-005

 おれの父と同じ名を持つこの男は、賞金稼ぎのならず者だった。

 彼はどんな気まぐれを起こしたのか、おれを拾った。

 彼はおれを奴隷のようにこき使い、猟犬をしつけるように従わせ、ときには、特に酒を呑んでは、理由もなくおれを怒鳴ったり、殴ったりしたが、ごくたまには、おれのことをまるで実の息子みたいに可愛がったりもした。


 おれはおれで、短絡的にも父と同名というだけで、この男に対して親近感を持ってしまい、多少理不尽な扱いをされても憎めず、また、時折、忘れた頃に不意に示される優しさなどにもほだされて、ずっと彼と一緒にいた。


 恩人と、呼ぶべきだろうか。


 とにかく、彼からひじょうにたくさんの事柄を学んだのだけは事実だ。

 おれは、彼の指導のもと、一人前の無宿者の男がひと通り知るべきことは、あらかた体験できた。

 酒、煙草、薬、女。

 その他、身の守り方、ハッタリのかませ方、敵との微妙な駆け引きと確実な倒し方。正しい悪事の働き方。


 戦場にも傭兵として赴き、もしも王子の肩書きを書って特別待遇で出陣していたとしたら、ついぞ味わう機会がなかったであろう、この世の地獄というやつを、最前線でたっぷりと堪能した。

 また、あるときは二人でヤバイ組織を向こうにまわし、危ない橋も何度か渡った。

 ボロい儲けに有頂天になったこともあるし、痛い目をみたことだって一度や二度の話ではない。


 おれたちは呼吸の合ったコンビだったと思う。

 互いに過去は口にせず、つねにこれから先、どうするかをだけ熱心に語り合った。

 その日暮らしに、いきあたりばったりの、ちゃらんぽらんでハチャメチャな未来を。


 おれたちの微妙な主従関係は、時が経つにつれてますますあやふやになり、どっちが面倒みてるのか、世話やかせてるかわからなくなり……そんなことさえ、だんだんどうでもよくなってきて……おれたちは毛色も似通っていたから、はたから見たら、親子以外の何者にも見えなかったに違いない。


 四年間、そうして暮らした。

 あちらこちらを、流れ流れて。


 幕切れは、ビアズレーの死によって、だった。

 そのことについては、ふれたくない。

 ふたたびおれは、虚しさに包まれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ