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001−001

 二百年前のおれは、けっこういいとこの坊ちゃんだった。

 今はこの地上から消えてなくなっているが「レムノン」という王国が当時はあったのだ、西方に。


 レムノン。

 もうわかったろう。

 おれの名は先刻、紹介したな。


 イーダス・レムノスクだ。


 国名を姓とする、この意味がおわかりだろうか。

 おれはつまり、王家の末裔というわけだ。

 実際たいしたものだったのだ。


 けれど、たいしたものだったのは、おれのご先祖やおれの親で、おれではない。


 おれはといえば、神経質で貧弱な、王族とも思えぬような、みすぼらしい子供だった。


 もの心ついてから十四になるまで、おれは自分のあらゆる面に劣等感を抱き続けていたものだが。

 わけても強烈だったのは、この髪の色に対してだ。


 錆びついた金属のような茶褐色。

 おまけに少し、縮れている。


 おれには兄が一人、弟が一人、妹が三人いたが。


(ただし母親はそれそれ違う。原則として王家の長たるもの、一度子をなした女性とは以後、契らぬのがしきたりだった。どうしてそんな決まりだったのかは不明だが、とにかく建前は、そういうことになっていた)


 みな直毛のプラチナブロンドを自慢気になびかせ、見下すような薄青の瞳を持っていたものだ。


 おれは瞳の色も、兄弟たちとは違っていた。

 深緑。

「底無し沼のように不吉な」という飾り言葉が、常につきまとっていたっけか。


「この子はわしの血をひかぬ」

 王はおれを一目見て、そう断言したそうだ。

 金髪碧眼の王は。


 母はその場で自害して果てたという。

 よくぞおれを道連れにしてくれなかったものだ。

 おかげでおれは幼少年期中、肩身の狭い思いをし、立派な腺病質の鎧をまとう憂き目を見て。


 王宮という名の地獄に、血の鎖でつながれた。


 おれを生かしておいたのは、もしかしたら彼女の、おれに対する復讐であったかもしれない。

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