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苔むした廃墟の一角で、おれは目覚めた。
「ノエル……タリア……」
朦朧とする頭を振りながら、辺りを見回す。
勝ち誇るようにはびこる草木の群と、散在する瓦礫しか見出せない。
服はところどころ焦げていたが、身体はなんともなかった。
おれは立ち上がって歩き出した。
少し行くと、街並が見下ろせた。ここは小高い丘だったのだ。
急な場面転換に、ついていけない。
そのときは、よもや二百年という歳月を一挙に飛び越えてしまったなどとは、夢にも思ってみなかった。
おれの意識はまだ醒め切ってはおらず、夢見心地の千鳥足で街へと下っていった。