ステータス
1 ステータス
「ステータス!」
一様、言ってみた。
おざなりな言葉に、たいした期待もなかったのだが…。
ポンと、どこか気の抜ける音と共に、薄く淡い光がはじけた。
「……ぁ」
目の前に20センチ四方程度の板が現れていた。
基本的な情報は、全て書き込まれ閲覧出来るようだ。
「ありえない」
何だこれは…私は暫し自失した。まるでゲームか小説だ。ただし、できの悪い。
だが、だがである。
こんな場所で、こんな場合。
ありえなく、馬鹿馬鹿しく、最悪すぎる現在、必要だ。あまりにも無力にすぎる私には、有用だ。情報というものは、千金に値する。
自分の情報を丸裸にされるのは、本当に心底気持ち悪いが……。
私は気をとりなして、宙に浮いた板を見つめる。
右上から小さなタグがあり、それぞれに文字が記されていた。
<ステータス>
<アイテム>
<装備>
<システム>
<ヘルプ>
の、五つである。
現在、記されている情報は<ステータス>だったが、最低限の情報しか見えていない。
氏名にHP(体力値)MP(魔力値)レベルのみだ。それ以上を知りたければ、この板をどうにかして操作せねばならない様だ。
めんどくさい。うんざりしながら、私は指先で板に触れようとした。
目の前に確かな質感を持って、存在しているはずの板は、私の指を受け止める事なく、そのままつき抜けた。
空をかく指に、ちょっとどころでなく頭に血がのぼる。
せっかくのステータスが!恥ずかしさをこらえた努力が!水の泡!。ありえない!。
板を手のひらで押し包んでも、殴り付けても、ひょっとして手以外なら良いのかと考えて、肘うちや膝蹴り回し蹴りを叩き込んだが、どれも不発だった。
ヘルプ機能さえついている筈なのに、つかえない。
「何なの?助ける気があんのか!」
私は吠えた。
負け犬の遠吠えじみた、悪態だが言わずにはおえなかった。なまじ希望を持った分、気落ちもすさまじかったのだ。
が、それがカギだった…と言うか正解だった様だ。
またもやポンっと軽い音がした。そのあと続いて機械的な声が、問う。
『助ケ ノ キーワードー 確認 シマシタ <ヘルプ> 機能 起動 シマスカ』
と…。
いちににもなく、叫んでいた。
「起動!」