第一話「乾杯」
気付いたら友と異世界
第一話「乾杯」
家に着きPCを前にしてこれを書いている。
異世界に行ってた話。
自分で意思で行ったわけじゃない。
どこの世界に四十過ぎのおっさんが、それも家庭と仕事を持ったおっさんが、異世界行こうと思うがのだろうか。
召還されたのだ。
俺だけだはなく、今日一緒に飲んでいた二十年来の友と共に。
久しぶりに会おうってことでアキバに集まり、適当に駅前の居酒屋に入った。
飲むだけなんだから別にアキバでなくてもいいのだが、六人の交通の利便性と悲しいオタクの性。大体の集合場所がアキバなのだ。
そしていつも駅前のどこかに入るわけなんだが、駅前が決まってて入る場所は決まってない。今日は肉がいいなとか魚がいいなとか、前回ここは入ったから別のとこにしようぜとか、で、今まで一度も同じ店に入ったこともない。
今回も今まで入ったことのない店に入った。
煮魚が食いたいといったやつがいたので魚がメインのところである。
時間は午後七時を回ったぐらい、予約もしてないが座敷が空いており待つこともなく通される。
俺を含めた喫煙者二人が風下に座り、メニューを見ながら早速タバコを銜える。
お通しを持ってきた店員にとりあえず生チューを頼み、食いたいもの注文していく。
ツマミより飯物の率が高いのはいつものことで、いきなりおにぎりセットにザルソバとか個人的な注文が飛ぶ。当然、煮魚も注文されている。
メニューに鍋とかあるのだが、滅多に頼むことがない。俺たちの中に鍋奉行がいないのだ。
では、鍋奉行がいない鍋はとどうなるか。
めんどくさい入れちまえ、適当でいいんだ、煮れば一緒だ、強火deゴーとか、ごった煮にである。
うん、これはこれで美味いんだけど、ごった煮の後だと、おじや奉行が怒るのだ。これでは納得いくおじやが出来ないと。
じゃあ、おじや奉行が鍋奉行をすれば問題解決だとなったことがあるのだが、おじや奉行が、おじや奉行は鍋奉行にあらず、鍋のことなど知らん、と言うもんだから俺たちが鍋を頼むこと滅多にない。どうしてもおじや奉行がおじやを食べたいときのみ注文される。
で、奉行様は今日はおじやは食べるつもりはないので鍋の注文はなかった。
飯を待ちつつ、最近どうよと言いつつ近状と話合う。
ツイッターなりスカイプなりでそれなりに知っているが、やはり会って話すのは別だ。
なんていうか、いや、ほんとお互い老けた。これだけで面白い。
白髪混じり始めた俺とおじや奉行のノリ。
中年太りしたザルソバを頼んだヒロ。
髪が薄くなったおにぎりセットを頼んだエイと強火deゴーのカナメ。
そして余り変わってないように見えて、目尻の皺がなどが深くなってる煮魚が食いたかったヒデ。
お互いの老け具合をイジっていると、とりあえず生チューがきた。いや、こういう商品名なのよ。
「ほんじゃ、乾杯」
「「「「「乾杯」」」」」」
生チューが全員に行き渡ったところで俺が音頭を取った。
ちなみに今回の集まりも打ち上げとか記念とかじゃなく、ノリが飲みたいと言い出し、じゃあ、集まろうかとなっただけである。
「ヒロ、生チュー一つ」
「「「「「はやっ」」」」」
その後もみんながノリにやいやい言ってる中、ヒロが店員を呼んでいる。
ノリといえば、俺たちの声を無視つつメニューを見て次の酒を物色している。どうやらとことん飲むつもりらしい。
デカイ、これがノリが他人に与える第一印象だ。
身長百九十オーバー体重百キロオーバー。
身長百六十五センチの俺が後ろに立つと完璧に隠れてしまう。
その体に今から飯と酒が水の変わりに吸い込まれていくわけだ。
俺たちがまだ一杯目に口をつけたばかりだというのに。
「乾杯」
俺が三杯目の酒にバーボンと頼もうとメニューを見ているとき、ノリが五杯目の生チューを掲げて乾杯と言った。
珍しいノリの音頭にみんな慌ててグラスを取る。こういうのは乗りだ。たとえ、俺のグラスが空だとしても。
「「「「「乾杯」」」」」
何度目のか乾杯をした瞬間、俺たちは見知らぬ森の中にいた。
初投稿です。
楽しんでもらえましたでしょうか?
不定期連載になりますが、今後ともよろしくお願いします。
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