Battle.6 VSソル=フラバー
「お、お前はっ! 空也!!」
「ソル! どうしてこんな所に……」
「な、なんだなんだ。感動の再会ってところか?」
「どうなのでしょうね……」
「フッフッフ……」
「フッフッフッフッフッフ……」
「ハッハッハッハッハッハッハ!」
俺とソルのヤツは同時に笑い出す。
そして……。
同時に武器を構えた。
といっても俺は素手。あいつは召喚獣のリッチ(いわゆる死神)が鎌を構える。
「お前が俺の管理下の時空から消えたとき……どれだけ修正に奔走した事か……!
おまけにお前も見失って! ようやく見つけたと思ったらこんな所にいるとはなっ!」
「……で、何で武器を構える」
「腹いせ♪」
「……いいさ。上司に向かって戯けた事をすれば、どういう目にあうか教えてやるぜ!」
ソル=フラバー。あいつは俺の……一応恩人って所か。
俺は以前言ったとおりに神なのだが、一時期人間となって記憶を失っていた事があった。
俺が訪れた時空は偶然にもソルの管理している時空で……そこで紆余曲折あり、俺は記憶と能力を取り戻したのだった。
まぁ、感動的な昔話はまた別な機会にするとしよう。今は……!
で、一分後。
「……チッ、ようやく倒れたか」
数分に渡る死闘の後、リッチを撃破。
しかし、ソルを逃がしたようだ。いきなり襲ってきたのだから、お灸をすえたかった。
「……くっ」
「大丈夫ですか、空也さん。しかし驚きましたね……上位魔獣をあんな短時間で倒すとは……」
「で、何でそんだけの力があんのに竜の幼生一匹に手こずるんだ?」
「余計なお世話でございます。
……というか、今の戦いで動き回ったせいで……傷口が開いたかも」
「ええーーーーーーーーーっ!?
そ、それじゃ2次試験は……!?」
「無理かも♪」
くそ、なんか腹筋の辺りが裂けてる気がする。超痛い、腸の辺りが超痛い。
「大丈夫ですよ。僕はいざというときのため……傷薬を調合してきましたからね。
これを使えば一時的に傷口を塞ぐ程度の事はできます」
そう言ってルシフェルは懐から紫色の液体の入った小瓶を取り出した。
そして小さく何かを呟くと、液体が消えていく……。
と同時に、俺の傷口が塞がっていく。痛くない、超の辺りが痛くない。
これで2次試験は受けられるはず……だ。
★☆★☆★☆
だが先ほどの戦闘の間に竜の幼生はほとんど捕まえられている。
とすれば……。
「やる事は一つ……!
ソルの野郎から竜の幼生を強奪するっ!」
「その一択というのはどうなのでしょう……」
「素直に捕まえたほうがいいんじゃないか?」
「いいや。先に攻撃してきたのはあいつだ。ならば正当防衛として……減点対象にもならないっ!」
(そうなのか…?)
(その辺りの規則は不確定ですが…多分駄目でしょう。)
「行くぞ野郎共! 目指すはソルとソルの持つ竜の幼生っ!
ヤツは恐らく……まだ竜の幼生を提出していない! 今なら強奪が可能だ! ……見られてなければ強奪だろうと正攻法!」
★☆★☆★☆
「ん……マズい、道に迷ったな……。何処に提出すればいいのやら……」
ビンゴ!
まだヤツは提出していない! 今がチャンスだ!
「お命頂戴っ!」
「のわっ!?」
案外簡単に俺のかるーい鉄拳がソルの顔面に炸裂。
ソルは吹き飛ばされた。額にやったから血の類は出ていないだろう。
「く、くくくくく空也ぁっ!?
ななな何で襲い掛かって……」
「さっきはよくもやってくれたなぁ!?
お前の持つ竜の幼生……此処で渡してもらおう!」
「チッ、誰が渡すか!」
ソルは懐から煌びやかな装飾の施されたナイフを取り出す。
そして……ナイフで自分の指を軽く切った。
な、何やってるんだ……?
ソルは自分の指を振り回し、空中に血をばらまいた。
その血の一滴一滴が形を作っていき……魔物が創られた。
どうやらこれはあいつの召喚魔法のようだ。
「多重・召喚っ!! これで……近寄る事すらできまい!?」
リッチやドラゴン……キメラ……様々な魔物が壁のように俺の前に立ちはだかる。
「お、おい空也!? ソイツ…間違いなく上級クラス生だ!
トパーズの俺らがかなう相手じゃねぇって!」
「はっ、ソル。非力な奴が強い奴を出して調子に乗ってるっていう構図は見事なまでの死亡フラグだぞ?」
「ほざけ。この状況をどうやって覆すと?」
「それも死亡フラグ」
「うるさーーーいっ!」
複数の魔物が一気に俺に向かってきた。
さすがにこれはあまりよろしくないな……仕方があるまい。
「ソル。上に山、下が大火事、なーんだ?」
「え? 山? 火事? …………」
魔物たちの動きが止まった。やはり、ソルの指令で動いていたようだな。しかし、見事なまでに……
「隙だらけ、だ」
「あっ、しまっ……」
竜の幼生は頂いた!
次回予告
次回 Battle.7 VS寝言
「マナ…い…た…」