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ファルシオン学園の闘争記  作者: 玄野志向
第1章 入学編
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Battle.3 VS覚醒する力

特殊能力解放授業しか書けなかったです。

 ――――寮――――


 寮はダイアモンド寮、トパーズ寮などに分けられている。

 だが……俺、空也は妹の黎と同室。


 黎の年齢では一人暮らしは厳しいと判断したらしい学園側は、兄の俺も同時に入学すると聞いてこれ幸いと同室にしたのだった。


 その代わり……というか、俺達の部屋は他の部屋よりも広い職員用。

 何でも、職員が1人辞めていったので、その部屋を使わせてくれるらしい。





「空也さん、今日の料理は何にしますか?」


「あー、俺が野菜炒めでも作るか……」


「いや、それはやめましょう。冷凍食品とか……」


「いや、それはやめておこう。料理で……」


 ……お互い譲らずに冷戦を続けるのには意味がある。

 俺たちにはそれぞれの弱点がある……らしい。

 黎が機械に触れるとその機械が……どういう原理かボロボロにぶっ壊れる。どうやら強すぎる魔力が関係しているらしい。


 で、黎が言うには、俺が料理を作ると殺人兵器ができるらしい。

 だが決してそんな事はない! あるはずは無い! 確かに自分で作ったものを後で食べて、あまりの不味さにリアルに泣いたことはあったが……。あれは偶然だろう。





 ★☆★☆★☆





 特殊能力解放授業、という授業の中でも特殊なものがある。何でも、極めて特殊かつ複雑な計算により導き出された魔法により、魔力を使用しなくても使用できる魔法をランダムに発現させる、いわば世界の矛盾を解析し、そこを突いたバグを引き起こすらしい。

 魔力を使わずに魔法を使う。それが特殊能力なんだそうだ。それぞれの才能が、それぞれの能力を開花させる。


 ……以上、特殊能力解放授業のマニュアルから抜粋。





 ★☆★☆★☆





 初となる能力解放授業。指定された席に着き辺りを見回すと、トパーズクラス生が多い。そしてダイアモンドクラス生は一人もいない。アメジストは一人……。

 やはり普通に魔法がガンガン使える奴はこんな物は使わないのだろう。


 と、教師が入ってきた。赤い髪をセンターで分け、眼鏡をかけた女性だ。女性用の黒スーツを着て、いかにも堅そうなイメージだが……。何かこの人、ずぼらな気がする。


「皆さんこんにちは。私はアルペジオン・フェンリッヒと言います」


 そう言って、眼鏡のブリッジを上げる。


「特殊能力解放授業について説明したいと思います。授業マニュアルには目を通したと思いますが、分かりやすく言えば魔力を使わずに魔法を使う魔法です」


 分かりにくいですけど……。


「詳しいことを言えば、同種の魔法3種と反属性の魔法が一つ、反発は発生するものの完全なる反発でなく大きな魔力に押し潰され小さな反発エネルギーにしかならず、さらに多重魔法同時展開による特殊な空間の歪みを有効利用してそこに更なる反属性魔法を撃ち込み、空間の歪みはかつて私がこの計算を見つけるまでは絶対にあり得なかったレベルまで高まります。そこに予め特殊能力解放の為に特殊な魔力を付加し克つ特殊な条件を満たしたあなた方が入ることにより、極度の空間の歪みによって一瞬とはいえ世界の法則すら乱れたその空間の中で本来魔法ですら起こり得ない魔力を使うことなく魔法を使うという事が永続的にできるのです。計算式をより突き詰めていけば発現する魔法を絞れるどころか、魔力を使わずに完全な魔法――つまり魔力を無限大にすることも恐らく可能ですが、私はもう疲れたので暫くはやりません。誰か引き継いでくれる人が居れば良いのですが……」


 だ、駄目だ……全く理解できない……! 黎ならこれも解るんだろうか。もしそうだったら黎が引き継げるんじゃなかろうか。


「それでですね。皆さんにはこれから、アヴァリオンに行って貰います」


 アヴァリオン……?





 ★☆★☆★☆





 特殊能力解放授業は、それ以来スタンプラリーのような宿題が出された。

 何でも、その土地その土地で辺りを漂う魔力の質が少しずつ違う。それを表面的でも体内に蓄えるために、スタンプラリー方式で各地を回っているそうだ。

 持たされたカードは大気中の魔力をインクに変える特殊な素材を使用しており、その土地に一定時間留まることでカードに紋章が浮かぶような仕組みになっている。


 アルペジオン先生の言っていた特殊な条件というのが、この各地の魔力巡りだ。

 これを満たして何かやることで、何らかの魔法が使い放題になるらしい。


 ただ、過去特殊能力解放授業で発現した能力の中には、嗅覚が鋭くなるとか突き指しなくなるとかあり得ないくらいショボい物もあったそうだ。

 それらは本当に運に任せるしかない。頼むから役に立つものであってくれ。





 ★☆★☆★☆





 スタンプラリーは授業内で行われた。

 俺はめっちゃ足が速いしスタミナも無尽蔵だから、走って大陸を巡り3時限分くらいでカードは埋まった。――本来はバスとか汽車とかで行くんだが。


 が、効率が悪いので全員一気にやるから、俺はしばらく何もせず待機となった。こんなことだったら、まだ埋めきらないでどっかで買い物とか寄り道とかすればよかった。

 という訳で、俺は今、教室で一人寂しく待っている。


「ところで先生、一体何をどうしてこんな計算ができたんですか?」

「4年ほど前、トパーズクラスの生徒に頼まれたんですよ。魔力のない生徒でも簡単に試験合格するにはどうしたらいいかって」


 ――――ず、随分雑な依頼だな。魔法学校なのにそんな……。


「で、ノリで計算したら筆が乗っちゃったので」

(えぇー……?)


「表彰とかされればお金が貰えますし」

(えぇー……?)


「金貰った時は笑いが止まりませんでしたよ」

(えぇー……?)


「まぁ、もう使っちゃったんだけど」

「……酒代ですか?」

「なっ――何故、それを!?」


 アルペジオン先生は急に落ち込んだかと思えば、驚きの表情を浮かべる。ずいぶん表情豊かな人だな。


「直感ですかね……あと、タバコ吸ってましたか?」

「あ~吸ってるわ。最近禁煙してるんだけど……うわ~怖いわ、何でわかるの」

「直感です。あと、」

「あ~もういいもういい。怖い怖い、あなた怖いわホント」


 いや~怖い怖いなどと呟きながら、アルペジオン先生は去っていった。仕方がない、自習でもするか……。

 しかし解りやすい人だった。手元の荷物には気になるワインにチェックを入れたパンフレットが紛れてたし、何か開いていた手帳には『禁煙12日目』の文字があった。

 いい人そうで良かったな。俺は教師と言う人種はそこまで好きじゃないが、ああいう綺麗事のない先生は好きだ。


 ――という訳で、彼女の事は親しみを込めてフェンリッヒ先生とファーストネーム? で呼ばせてもらおう。





 ★☆★☆★☆





 一週間後、ようやく全員がスタンプラリーを終了させた。その週の金曜日、つまり今日、最後の特殊能力解放授業が行われる。

 そう、最後だ。特殊能力解放授業は、特殊能力を発現させた後は別の授業に組み替える事ができるのだ。

 その日は教室の机が退かされ、中央に仰々しい魔法陣が描かれている。


「じゃ~、私がちょちょっとやりますから、皆さんは魔法陣に入ってください」


 言われるがまま魔法陣の中に入ると、フェンリッヒ先生は何かを呟く。そして、




 空間が歪む。視界が捻れ、上は下、左は右、南は北、東は西に。そこには何の秩序も残っていなかった。

 終いに、視界はついにブラックアウトした。が、音は何とか聞こえる。


『力を求めるか……』


「何……? 誰だ……?」



 ここで初めて、自分が目を閉じていたことに気づいた。目を開くと、どこか薄暗い場所に俺は立っていた。四方には何もなく、ただ土があり、地平線がある。

 そして目の前には、赤い人形(ヒトガタ)が佇んでいた。その姿は……


「俺……!?」


 全てが赤いスライム状の物体で形成された俺の姿。


『力を求めるならば戦え。己と戦い勝利せよ』



「は、はぁ……?」



 これはアルペジオン先生の魔法なのか?




『……来ないのならば、こちらから行こう……!』


 赤い人型は、いきなり襲い掛かってきた!


挿絵(By みてみん)

次回予告


特殊能力解放のため、自分との戦いに身を投じる空也!

だが、それは完全な不利で……


次回 Battle.4 VS『血』


「blood summons…」

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