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ファルシオン学園の闘争記  作者: 玄野志向
第3章 第4・5試験編
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Battle.46 VS喫茶“dream†garden”

  まずはダイアモンドクラスに行こう。

 インフィジカルも解除されたので、これで普通に黎とも話せる筈だ。



「…あ、あー。ハウエル、俺は普通に話せてるか?」


「大丈夫だ。…俺の語尾は大丈夫か?」



 返事代わりに親指を立てる。

 そして目指すはダイアモンドクラスだ。





 ★☆★☆★☆





 メイド喫茶“dream†garden”。ダイアモンドクラスの店だ。

 …やはり黎もメイド服着てるんだろうか。

 黎のメイド服姿だと…提案者は誰だけしからん奴だ嗚呼鼻血が出た。



 …コホン、取り乱してしまったな。鼻血を拭って教室に入る。



「お、お帰りなさいませー…、っ、空也さん!!?」



 出迎えてくれたのはよりによって黎だった。黎が着ているのはやはりメイド服。

 黎の小柄な体に合わせて作られているメイド服だが、スカートの丈短くないか…?

 あと胸の部分が全然余っていないので、その部分も大分小さく…やめておこう。



「そっか、空也さん交代だから今回ってるんですね…

 あ、今案内します。」



 黎の案内にしたがって店内へ。

 …先程の俺の案内とは全然違うまともな案内だ…。

 次の交代に備えて参考にさせて貰おう…



「ご、ご注文があったらお呼びくださいっ」



 黎はメニューを置き、一礼すると去っていった。

 しかし、やたら緊張してるっぽいが…?

 黎ってこういう系に弱いよなぁ…





 ★☆★☆★☆





「ふぅ…」


 黎は今のところ仕事がなく、控え室で一息ついていた。



「すいませーん、注文~」



 空也の声だ。



「は、はい只今!!」



 黎は少し躓きながら空也のテーブルに駆け寄る。

 空也で練習し自信をつけ、この後の営業を潤滑に行おうとしているのだ。



「えー、ハウエルがカツ丼と小魚の唐揚げとコーラ、デザートにチョコソフト。

 俺はビーフグリルローストと小魚のマリネ、ロイヤルミルクティー。

 あと、ロイヤルパンケーキ」



「は、はい。えーと、ごちゅっ…コホン。ご注文を『覆します』。」


(覆す!?)


「ハウエルさんがコーヒー、紅茶、牛蒡…空也さんが蒸かし芋でいいですね?」



「(本当に覆された…)黎、落ち着け…注文は覆すんじゃない。

 あと、牛蒡と蒸かし芋はメニューに無いぞ。」



 黎はあうぅ~、と情けない声を漏らす。

 その様子を見た空也は微笑みながら優しげに、


「はい、もう1回?」


 黎は小さく頷き、息を吸い込み…



「ご注文…を…ご注文を…コホン。ご注文を『繰り越します』!」



 黎の苦悩は続く…





 ★☆★☆★☆





 しかし、あんなに失敗続きなのに何故接客をやらせるのか…

 アレか。ドジッ娘メイド萌えという奴か?


 などと考えている傍から向こうで黎がまた注文を『覆して』いる。

 まぁ本気で怒る奴はいないだろうが…改善すべきだよな…



「いやぁ~いい所だな~」


「お前はそんなに女好きなのか?」


「そうだぜ?普通、男だったらこんなシャングリラに来たら喜ぶだろ…」



 そんなもんなのかね…俺にはいまいち理解できない世界だ。



「…モテる男はこんなんじゃ興奮しないってか?」



 いつの間にかハウエルは身を乗り出して俺に顔を近づけていた。



「モテたいならまず髪と制服の乱れを正すことだ。

 あと、初対面の人に挨拶がわりにガンくれるのもやめたほうがいい。」



「…髪はアレだ、これ…魔法で染めたから治らないんだよな…

 ガンは、まぁ、不良時代の癖というか…」



 魔法で髪を…?そんな事できるのか?

 などと雑談していると、向こうから黎がプレートを持ってやってきた。




「お…お待っ…お待たせしましたぁ!!

 こ、こちらご注文のり、料理です!」



 と、黎の脚が縺れ…



「わっ、とっ、とっ…きゃ!!」



 バランスを崩して黎が転けそうになる。

 俺は咄嗟に黎の体を支え、メニューの料理を受ける。



「ご、ごめんなさい…」


「いや、気にすることない。」


「あうぅ~…私ってなんでこんなにそそっかしいんでしょう…」



 今に始まった話じゃないから大丈夫だ…と言おうとしたが、何だか余計に傷付けてしまいそうなのでやめておいた。



「まぁ、少なくとも今は大丈夫だ。

 ……それを期待して接客させてるんだろうから。」



「………???な、何の事ですか???」





 ★☆★☆★☆





「…………………。」


「あ、あの…久城さ、久城さん…」



 久城は風紀委員室のソファに脚を組んでふんぞり返っていたが、2年ダイアモンドクラスの男子生徒に名を呼ばれると、ギロリと睨み付けた。



「………………何だ」


「ヒッ…い、いえ、あの…」


「…言いたいことがあるならはっきり言えッ!!」


「す、すいません!!あ、あの、2年ダイアモンドクラスの…び、備品がなくなってしまったのでほ、補充をお願いしたいと思いまして…」



「…備品?そこから勝手に持っていけ。」



「は、はいぃっ!!し、失礼しますっ!!」



 生徒は怯えながら逃げるように去っていく。

 ――――この様な反応を見るのは何度目だろうか、と久城は思った。

 あれ以来、誰も彼も久城を恐れて近づかない。



(静かだな…)



 学園が文化祭で賑やかな中、風紀委員室は不気味なまでの静けさに包まれていた。

 風紀委員室の傍を通る者も皆静かだ…



(…それはそれで良いんだがな…)



 しかし、風紀委員室に来る全員があの調子では煩わしくてやりきれない。



(…屑共と群れるよりマシか…)



 久城の頭を過るのは停学処分になっていた際に送られてきた手紙。



『此度の貴様の起こした下らん騒ぎのお陰で我が社は損害を受けた。

 世間に対し責任を取るためにも、我が久城家と貴様は今より何の関連も持たぬ。


 久城家代表 久城 東吾と久城 透矢は絶縁する。

 今後一切、久城家の名を使うことを禁ずる。』




「………クソッ!!!」



 久城は怒りに任せて机に拳を叩きつけた。

 同時に、赤い十字架が妖しく光ったように見えた。




挿絵(By みてみん)


次回予告


文化祭が終わり、利益が出たのだが…

突如、トパーズクラスの金がなくなってしまった!?

犯人はこの中にいる!!…かもしれないし、外にいるかもしれない!!



次回 Battle.47 VS盗難



「俺の灰色の脳細胞がなんとかかんとか…」

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