Battle.46 VS喫茶“dream†garden”
まずはダイアモンドクラスに行こう。
インフィジカルも解除されたので、これで普通に黎とも話せる筈だ。
「…あ、あー。ハウエル、俺は普通に話せてるか?」
「大丈夫だ。…俺の語尾は大丈夫か?」
返事代わりに親指を立てる。
そして目指すはダイアモンドクラスだ。
★☆★☆★☆
メイド喫茶“dream†garden”。ダイアモンドクラスの店だ。
…やはり黎もメイド服着てるんだろうか。
黎のメイド服姿だと…提案者は誰だけしからん奴だ嗚呼鼻血が出た。
…コホン、取り乱してしまったな。鼻血を拭って教室に入る。
「お、お帰りなさいませー…、っ、空也さん!!?」
出迎えてくれたのはよりによって黎だった。黎が着ているのはやはりメイド服。
黎の小柄な体に合わせて作られているメイド服だが、スカートの丈短くないか…?
あと胸の部分が全然余っていないので、その部分も大分小さく…やめておこう。
「そっか、空也さん交代だから今回ってるんですね…
あ、今案内します。」
黎の案内にしたがって店内へ。
…先程の俺の案内とは全然違うまともな案内だ…。
次の交代に備えて参考にさせて貰おう…
「ご、ご注文があったらお呼びくださいっ」
黎はメニューを置き、一礼すると去っていった。
しかし、やたら緊張してるっぽいが…?
黎ってこういう系に弱いよなぁ…
★☆★☆★☆
「ふぅ…」
黎は今のところ仕事がなく、控え室で一息ついていた。
「すいませーん、注文~」
空也の声だ。
「は、はい只今!!」
黎は少し躓きながら空也のテーブルに駆け寄る。
空也で練習し自信をつけ、この後の営業を潤滑に行おうとしているのだ。
「えー、ハウエルがカツ丼と小魚の唐揚げとコーラ、デザートにチョコソフト。
俺はビーフグリルローストと小魚のマリネ、ロイヤルミルクティー。
あと、ロイヤルパンケーキ」
「は、はい。えーと、ごちゅっ…コホン。ご注文を『覆します』。」
(覆す!?)
「ハウエルさんがコーヒー、紅茶、牛蒡…空也さんが蒸かし芋でいいですね?」
「(本当に覆された…)黎、落ち着け…注文は覆すんじゃない。
あと、牛蒡と蒸かし芋はメニューに無いぞ。」
黎はあうぅ~、と情けない声を漏らす。
その様子を見た空也は微笑みながら優しげに、
「はい、もう1回?」
黎は小さく頷き、息を吸い込み…
「ご注文…を…ご注文を…コホン。ご注文を『繰り越します』!」
黎の苦悩は続く…
★☆★☆★☆
しかし、あんなに失敗続きなのに何故接客をやらせるのか…
アレか。ドジッ娘メイド萌えという奴か?
などと考えている傍から向こうで黎がまた注文を『覆して』いる。
まぁ本気で怒る奴はいないだろうが…改善すべきだよな…
「いやぁ~いい所だな~」
「お前はそんなに女好きなのか?」
「そうだぜ?普通、男だったらこんなシャングリラに来たら喜ぶだろ…」
そんなもんなのかね…俺にはいまいち理解できない世界だ。
「…モテる男はこんなんじゃ興奮しないってか?」
いつの間にかハウエルは身を乗り出して俺に顔を近づけていた。
「モテたいならまず髪と制服の乱れを正すことだ。
あと、初対面の人に挨拶がわりにガンくれるのもやめたほうがいい。」
「…髪はアレだ、これ…魔法で染めたから治らないんだよな…
ガンは、まぁ、不良時代の癖というか…」
魔法で髪を…?そんな事できるのか?
などと雑談していると、向こうから黎がプレートを持ってやってきた。
「お…お待っ…お待たせしましたぁ!!
こ、こちらご注文のり、料理です!」
と、黎の脚が縺れ…
「わっ、とっ、とっ…きゃ!!」
バランスを崩して黎が転けそうになる。
俺は咄嗟に黎の体を支え、メニューの料理を受ける。
「ご、ごめんなさい…」
「いや、気にすることない。」
「あうぅ~…私ってなんでこんなにそそっかしいんでしょう…」
今に始まった話じゃないから大丈夫だ…と言おうとしたが、何だか余計に傷付けてしまいそうなのでやめておいた。
「まぁ、少なくとも今は大丈夫だ。
……それを期待して接客させてるんだろうから。」
「………???な、何の事ですか???」
★☆★☆★☆
「…………………。」
「あ、あの…久城さ、久城さん…」
久城は風紀委員室のソファに脚を組んでふんぞり返っていたが、2年ダイアモンドクラスの男子生徒に名を呼ばれると、ギロリと睨み付けた。
「………………何だ」
「ヒッ…い、いえ、あの…」
「…言いたいことがあるならはっきり言えッ!!」
「す、すいません!!あ、あの、2年ダイアモンドクラスの…び、備品がなくなってしまったのでほ、補充をお願いしたいと思いまして…」
「…備品?そこから勝手に持っていけ。」
「は、はいぃっ!!し、失礼しますっ!!」
生徒は怯えながら逃げるように去っていく。
――――この様な反応を見るのは何度目だろうか、と久城は思った。
あれ以来、誰も彼も久城を恐れて近づかない。
(静かだな…)
学園が文化祭で賑やかな中、風紀委員室は不気味なまでの静けさに包まれていた。
風紀委員室の傍を通る者も皆静かだ…
(…それはそれで良いんだがな…)
しかし、風紀委員室に来る全員があの調子では煩わしくてやりきれない。
(…屑共と群れるよりマシか…)
久城の頭を過るのは停学処分になっていた際に送られてきた手紙。
『此度の貴様の起こした下らん騒ぎのお陰で我が社は損害を受けた。
世間に対し責任を取るためにも、我が久城家と貴様は今より何の関連も持たぬ。
久城家代表 久城 東吾と久城 透矢は絶縁する。
今後一切、久城家の名を使うことを禁ずる。』
「………クソッ!!!」
久城は怒りに任せて机に拳を叩きつけた。
同時に、赤い十字架が妖しく光ったように見えた。
次回予告
文化祭が終わり、利益が出たのだが…
突如、トパーズクラスの金がなくなってしまった!?
犯人はこの中にいる!!…かもしれないし、外にいるかもしれない!!
次回 Battle.47 VS盗難
「俺の灰色の脳細胞がなんとかかんとか…」