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ファルシオン学園の闘争記  作者: 玄野志向
第3章 第4・5試験編
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Battle.40 VS不審者

「タコうめぇ!」


 ソースの旨味とタコの歯応えがなんとも言えない。



「……キャロンさんや黎さんと合流しなくて良いのですか?」


「んー、2人は2人で楽しんでんじゃないか? 浴衣着てたし」


 浴衣着て来てるって事は楽しむ気満々って事だ。俺と同じように。

 お、射的がある。景品はどんなものがあるかな……





 ★☆★☆★☆





「えっ……な、何ですか?」


 空也は楽観視していたが……

 黎はというと不審者に人気の無い場所に連れて来られていた。

 しかも、不審者の手にはナイフが握られている。


「怖がらないで……こっちにおいでよ……

 さっき君を海で見たときに……決めたんだ……君を誘おうと……」


「…………」


 黎は無詠唱で魔法を発動させる。発動したのは障壁だ。


「警戒すること無いんだよ……さぁ、此方においデヨ……」


 青年の瞳が不気味に光る。

 これは紛れもなく、魔の眷属に見入られた者……死霊の放つ光だった。


「おいでよ……おいでってば……此方ノ世界ニッ!」


「!!」


 突然飛びかかってきた青年。

 その手のナイフは黎の細い首の直前で止まった。障壁に阻まれたのだ。


「…………!?」


「…………っ、スペル・キャンセル」



 黎は空中に五茫星を描く。詠唱の一種だ。

 黎が発動させた魔法は霊魂救済魔法。

 呪われた意思を浄化し、正しい輪廻の輪に送る魔法。



「ぐ……ぎぃやぁああああ!?」


「!?」



 霊魂救済魔法はその名の通り、霊を救う魔法。

 目の前の霊は何故苦しみ始めたのだろう。

 ともあれ、苦しみを与えることを良しとしない黎は魔法を止めた。


 それを確認し、死霊の青年はニタリと笑い、ナイフを握り締め……


 黎の足元を魔法で流砂状に変化させた。

 突然の事に不意を突かれ、黎は転けてしまった。


「きゃあっ!?」



 直ぐに起き上がろうとするが、足元が安定しない上、黎が来ているのは水色の……着なれていない浴衣。

 起き上がろうともがくが、全て徒労に終わる。



「アハハハハハハ!

 僕はまだ……消えられない……! 一緒にいこウヨ……!」


 青年はギラリと光るナイフを振り上げる。


「う……間に合わない……!?」



 黎の障壁は相当の硬度を持つものの、完全に展開するまでは時間がかかる。

 不意を突かれた黎は障壁を再展開できずにいた。

 黎の首に鋭いナイフが迫る……。





 ★☆★☆★☆





「……あぁ、こんなところにいたんですの!?」


 藍色の浴衣を着たキャロンが駆けてくる。


「お? ちょっと待っててくれ。射的が……」


「射的なんかやってる場合じゃありませんわ……!

 黎さんがいなくなってしまったのよ!」


「何ィ!? いつ!? どこで!? 誰に拐われて!?」


「いや、まだ拐われたとは……」



 ともかく一刻も早く見つけなければ!

 そして黎を拐いやがった変態は直ぐに『処理』してやる……!


 ……いや、殺しは良くないな。





「黎っ! どこだ、黎ーー!」


「こ……ここです、空也さん……」



 か細い黎の声が聞こえたのは森の茂みから聞こえた。

 声の聞こえた方向の茂みに進入する。


「あうぅ~……」


「ど、どうした黎……何があった?」



 茂みの中にいた黎の浴衣は茂みのあちこちに引っ掛けたらしく、所々破れていて……袖の辺りにはナイフで切られたような鋭利な跡もあった。



「さっき死霊の眷属に襲われて……イプシリアスで逃げたんですけど……適当に飛んだらこんな所に……いたたたぁ~……」


 資料の県属?

 ……何だそりゃ。


「死霊の眷属……じゃあ、また追ってくるって事ね」


(資料の県属って何だ?)


 これ以上会話に置いていかれるのは御免なので、ルシフェルに質問する。


「死霊の眷属とは、輪廻転生の輪から何らかの原因……または、自ら輪廻転生の輪から外れた元人間の事です。

 一度狙った人間にいつまでも執着しあの世に引き込もうとする性質があります」



 それは厄介だな……

 しかし黎を脅かすものは誰一人として許さん!


「出てこいロリコン幽霊ーーー! 俺が引導を渡してやるーーー!」


『誰がロリコンだって……?』



 突如、辺りに声が響いた。同時に周囲のジメジメとした暑さが急に冷える。

 しかし俺達5人以外には誰もいない……



『今すぐに仕掛けたい所だけど……丑三つ時にはまだまだだし……多勢に無勢だ。

 今消えたら彼に何されるかわからないし……今は止めておくよ……』



 冷えていた空気が再びジメジメと暑くなる。

 ……死霊の眷属が去ったのか?

 けど、諦めた訳じゃないらしい……。丑三つ時がどうとか言っていたし……


 しかし、“彼”?

 ……一体誰の事だ?


 …………暫く考えたが、思い当たる節はない。思考を中断する。


 全く、何故俺達はどこに行っても何かに狙われるのだろう。

 何らかの呪いでもかけられているのだろうか。


 或いは…………





 ★☆★☆★☆





 死霊の眷属のせいですっかり興醒めした俺達は旅館に帰ってきていた。

 相も変わらず死にそうな爺さんの出迎えを軽くスルーし、部屋に入る。


「……で、どうしましょうか。黎さんを守るために何か策はないかしら?」


 第1回、黎をロリコンから守ろう会議。議長はキャロンだ。


「わ、私なら大丈夫ですよ。また来ても何とかできます」


「一度やられた人が言う台詞ではありませんわ。

 死霊の眷属は丑三つ時に最も強まるのよ? 貴女、多分その時寝起きよ」


「あー、黎は寝惚けてると全然ダメだからな」


「う……そ、それは確かに……」


 黎は少し恥ずかしげに目を伏せる。

 しかし、直後サッと顔を上げ、


「で、でも、ずっと起きていれば……!」


「……黎が深夜まで起きていられた事はなかった気がするな」



「あうぅ~……」



「まぁまぁ、無茶しなさんな?

 ……俺が見張っておく。だから安心して寝るんだ」


 黎はわかりました、と俺に魔法をかける。




 ――――――――――――――――――――――――

 浄化の陣


 中級補助魔法。


 生身の肉体で霊に干渉する事ができるようになる魔法。

 手の甲に東方の祓魔師が使用する紋章を描くことでも同様の効果が得られる。


 ――――――――――――――――――――――――




 オーケー、お祓いといこうか!



挿絵(By みてみん)



次回予告


丑三つ時に現れた死霊の眷属は空也と対決する。

しかし空也は対人戦ではやはり強く、

追い詰められた死霊の眷属は…!?



次回 Battle.41 VS死霊の眷属



「ロリコン退散…!!」

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