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ファルシオン学園の闘争記  作者: 玄野志向
第3章 第4・5試験編
43/315

Battle.38 VS夏休み

  生きとし生ける全ての学生が待ちに待った、夏休みというイベントがやって来た。

 教頭のトゥリアスは、


『学生の本分は勉強。遊びがすぎて勉学を怠らぬよう』


 とかいっていたが、恐らくは誰も聞いていないだろう。


 しかし、セトについての詳細な情報も掴めないまま4か月も経ってしまったが……。

 とりあえずヤツが動くまでは束の間の平穏な学園生活を謳歌しようじゃないか。





 ★☆★☆★☆





 8月のある日、俺はハウエル・キャロン・ソル・ルシフェル・黎を誘って“イーグル・ビーチ”という無名な海水浴場に来ていた。


 この周辺はファルシオン学園敷地内にあるものの、あまり開発の進んでいない地域。

 故に中途半端なこの海水浴場には人が少ない。


 とはいえ、ちらほらと人はいる。賑やかさに欠けて盛り上らないという事はない。

 そして砂浜にはゴミなども落ちておらず、海の家も満席ということはない。


 まさに、海水浴に相応しい場所といえよう。



「海だーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 ハウエルが煩い。

 まぁ、7月中は俺とハウエルは補修ばかりだったからな。

 叫びたくなる気持ちもわからんでもない。



「ところでルシフェル。……眼鏡、どうするんだ?」


 ルシフェルはいつも眼鏡をかけている。

 今はまだ泳がないが、眼鏡を外せば前が見にくいだろう。


「これは度の入った水中眼鏡です」


「「えええっ!?」」


 驚きのあまりハウエルと声が被る。

 どう見てもいつもと変わり無いようだが……



「それより早く宿に荷物を置こうぜ。

 折角俺が超超破格安値宿を予約してやったんだから。

 あ、各自2000円は持ってきたろうな?」


「そこまで安いと逆に心配ですわ。

 ですからわたくしの家の近くの海を提案したというのに。


 ……部屋に黴が生えていたり宿主が幽霊だったりしないでしょうね?」


「こ、怖い事言わないでくださいぃ~……」



 俺が誘っておきながら言うのもなんだが、なんて濃い面子だ。


「じゃぁもう行こうぜ。ソル、宿は何処だ?」


「さっき歩いてきたとこにでかい宿があったろ?」


 おお、まさかあのヨーロピアン建築の豪華なホテルか!?

 あんなところに2000円で泊まれるなんて感激だ……海からも近いしな。


「――――――あの裏」


 裏かよ……!

 あんな巨大なホテルが近くにできたのだからその宿は相当経営難だろうな。


「――――――の森を抜けた先にある小高い丘にあるボロい民宿だ」


「バカ野郎」


 海から遠い! 遠すぎるだろ!?





 ★☆★☆★☆





「ようこそいらっしゃいま……ゴホ、ゴホ……ガハァッ!」


「お祖父さん! お願い、寝ていて! 宿は……私一人でなんとかなるから!」


「ならんっ……! わしゃぁ…死ぬときはこの宿で死ぬ!

 まだまだ若いもんには負けんわい……!」


「お祖父さん……!(ホロリ)」




 …………なんて宿だ。

 客を差し置いて何してるんだ、この2人は。

 だいたい宿で死なれたら滅茶苦茶迷惑だろうよ。



「ご案内……ハァ、ハァ……致します……ゲファッ!」


 案内されるがまま進む。



 ……空気が重い。何故だ……何故誰も一言も喋らない……!?

 静寂の中聞こえるのは、よろよろと歩く禿げ頭の爺さんの死にそうな咳と唸り声。

 そして今にも踏み抜いてしまいそうなボロボロな床の軋む音。


 結局、誰も一言も喋ることなく部屋に到着。


「どうぞごゆるりと……おくつろぎ……ゲホッ、オゴハァッ!?」


「お、お祖父さーーん!」



 ピシャッ



 …。

 ……。

 ………。



「「「「はあああぁぁぁ~~~~…………」」」」



 ……外でも眺めて気分を変えよう。

 俺は窓を開こうとするが、どうも錆び付いているようで動かない。

 仕方ない、少々力ずくで……


 『バキッ』



 あ…………。


「「「「はあああぁぁぁ~~~~…………」」」」


 いかん。とりあえずカーテンで窓を隠しておこう。


「と、とりあえず海行こうぜ! 宿なんて二の次だ!」


 グッジョブ、ハウエル!


「ええ、それは構わないのですけど。

 ……まさかこの宿、合同部屋じゃないでしょうね?」


「……どうなんだ、ソル?それは流石に無いよな?」


「それは大丈夫だ。なんか男側の部屋に皆案内されたが。

 女子の部屋はここを出て左の部屋だよ」


「よかった……ありがとうございます、ソルさん」


 黎、それは感謝すべき所じゃない。当たり前だ。





 ★☆★☆★☆





「あーー、やっぱ海って良いよなぁー」


 海に到着した。

 女子は水着に着替えて、そろそろ来る筈。

 俺達は森を歩いて蚊に差されまくったが、あの2人はイプシリアスがあるからな。


「しかしお前……もっとムキムキなのかと思ったら……」


 ハウエルが俺の体をまじまじと見る。キャー恥ずかしいわ。


「……一般とたいして変わらないんだな。

 それでどうやってあんなバカ力を出してるんだ……?」


「わかってないねぇ。このくらいが最も運動や体術に向いているのだよ。多分」


「そうなのか……?

 あーあ、それにしてもはやく女子勢来ないかな~……」


「そろそろだと思いますよ。……しかしハウエルさん、やたら楽しみにしていますね」



 ルシフェルはいつぞやの読心魔法を使用している。

 そろそろその魔法、使えなくなるからな。



「あ、わかるか?

 やっぱ夏といえば海! 海といえば水着だろ!」


「「「…………。」」」


野獣(ロリコン)め、海の藻屑にしてやる」


 俺がハウエルを処刑するため歩み寄っていると……


『みなさーん、おまたせしましたー!』


 黎の声が聞こえた。



挿絵(By みてみん)

次回予告


海で思い思いに遊んだ一同は、

近くで偶然開催されていた夏祭りに訪れる。

しかし何処にでも騒動とはあるもので…。



次回 Battle.39 VS夏祭り



「あの槍をどっちが先に見つけるか勝負だ。」


「死んじゃいますよ!?」



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