Battle.17 VSアルナス(後編)
次回から新章突入です。
ハウエルがアルナスの背後に回った。そして俺は正面…。
追い詰められたアルナスは背中の口で吼える。
ハウエルは剣をアルナスに降り下ろす。
奴は前方に跳んで回避するが、そこには俺がいる。
俺を吹き飛ばそうと口から咆哮を放つアルナス。
だがあっさりと回避し、奴を蹴り上げる。
キャン、という犬っぽい鳴き声を上げるアルナス。
空中で体勢を建て直し、俺めがけて咆哮。
しかし俺は地上にはいない!
アルナスと同じ高さまで飛び上がった俺は、アルナスの首を掴み地面めがけて投げつけた。
そして下にはハウエルが待ち受けていた。
「おおおおおお!!」
ハウエルの剣が、ターゲットを一刀両断したかに見えた。
が、実際には違ったのだ。
何と、アルナスはハウエルの剣に噛みついているのだ。
「くそっ、離せ!!」
ハウエルは混乱から剣を振り回す。
「ハウエル!!剣を上に向けろ!!」
「え!?こ、こうか!?」
そのまま動くなよ…!!
俺は落下しながら位置を調整する。
そして、アルナスの体を剣めがけて蹴飛ばす!!
ターゲットはハウエルの剣に叩きつけられ、真っ二つに斬れた。
「そこまで!!見事、試験合格です。」
「「よっしゃあ!!」」
「見事なチームワークでしたよお二人とも。
僕がもう少しフォローできていれば良かったのですが…。」
「いやいや、ルシフェルの魔法も役に立ってたぜ!!」
ハウエルが少し乱暴にルシフェルの肩を叩く。
「痛いですよ」
ルシフェルが顔をしかめる。
その様子を見て、俺とハウエルが笑う。
それにつられて、ルシフェルもクスリと笑みを浮かべた。
★☆★☆★☆
「へぇ、合格したんですか。おめでとうございます!」
「あぁ、ありがとう。そういや第4試験はどんな内容なんだ?」
寮。
他の部屋より広めに作られた俺達の寮に紅茶の香りが充満する。
「はい、どうぞ♪」
「ありがと。」
ズズズ…。
口に含むと芳しい茶葉の香りが広がる。
微かに感じる甘味が、紅茶の香りを引き立てている。
「第4試験はですね…魔法石を集める内容です。
適当にばら蒔かれた魔法石は魔力を使えば探知できますよ。」
魔法石?
「あ、魔法石というのは、普通の石に魔力を付加したものです。
仄かに光っているので、目視でも見つけられますよ。」
それはまた面倒くさそうな試験だな。
それにしても…
「この紅茶、旨いな~」
「そうですか?良かったです。」
目を細めてにこにこと微笑む黎。
「この紅茶、キャロンさんに譲っていただいたんです。
何でも、マンドラゴラの茶葉だとかで…」
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マンドラゴラ
古代から生息する人面植物。
雑草のように森に生息しているが、引き抜くと半端なくうるさい悲鳴を上げる。
たまに眠ることなどもあるようで、引き抜いても悲鳴をあげないことがある。
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ちょっと飲む気が失せた。
★☆★☆★☆
数日後の夜。
―――何で、こんな所に居んのかな…。
「グッ、がはっ!!」
足で蹴飛ばしたものが苦しそうに呻く。
―――何で、こんな事やってんのかな…。
目を閉じると、第3試験の事を思いだしかける。
不意に不安になり、寂しくなり。
その考えを振り払うように再び人を足で蹴飛ばす。
「ヒ、ヒィ…!助けてくれ…!!」
「…お前が、助けてくれよ…。」
お前が、俺を助けてくれよ…!!
「オイ、そっちは終わったか?…ハウエル。」
「………ああ。」
いいんだ、これで。
弱い自分を偽るためには、少しでも自分を強く見せること。
…そうやって、生きていくしかないんだ。
心のどこかに、そんな自分の声を否定する自分がいる。
空也達といたときは、紛れもない偽らないお前だった筈。
弱い自分を偽るのは簡単だ。
だがそれは、自分が傷つきたくないために自分に嘘をつくこと。
それでいいのか?
俺はまた、逃げることに…?
俺はどうすりゃいいんだよ…?
教えてくれよ、ルシフェル、空也…。
★☆★☆★☆
「ガッ、ぐあぁ…!」
足元の人間を踏みつける。
苦しそうな表情、痛みに歪む顔。
痛々しい傷跡…。
「クッ…クックッ…」
踏みつけた感触が癖になる。
同時に聴こえる呻き声…
「や、やめて…やめてください…
な、何であなたがこんなこと…」
「…アァ?お前は俺の何を知ってんだよ…?」
より強く踏みつける。
すると顔面に血が見えはじめる…
「ヒィィ!!ごめんなさい!!許してください!!」
下品な咽び泣き。
傷や血だらけで見るに耐えない顔。
―――そして許しを乞う醜い様!!
嗚呼、この感触…最高だ…!!
次回予告
ある日空也はルシフェルから、
ギャング集団『デス・レーベル』の噂を聞く。
ただストレス発散などの理由で一般生徒に暴行を加え、
金品などを盗る場合もあるという。
空也はその件について、風紀委員室に訪れるのだが…?
次回 Battle.18 VSデス・レーベル
「デス・レーベルだ。
とりあえず覚悟はいいか?」