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ファルシオン学園の闘争記  作者: 玄野志向
第1章 入学編
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Battle.14 VSデュマ

「はいはい、ご苦労さん。」


「いやいや、流すなよ。

 それとも聞こえなかったか?もう1回言ってやろうか!!」


 購買部。

 リスア先生にマナカラットを届けたのだが…


「聞こえてるよ、うるさいね。

『何で安全って言っていた所に魔神がいたのか』でしょう?


 これは私にも計算外だったんだよ。

 此処最近、人々の邪気の量が増えてるんだよ。


 当然、邪気による瘴気が増えれば魔物も活性化する。

 魔神だって動き出すのさ。」



 ちなみに…授業で習ったのだが、魔神は魔物や魔獣とは少し違うらしい。


 魔神とは、何かを守っているらしい。

 一説にはその守っているものが魔物の根源ではないかとされているが、結局魔物の研究は進まず、詳細は不明。


 明確な魔神の数は分かっていないのだが…憶測ではおよそ300程度ではないかと言われている。


 …柄にもなく解説してしまった。

 こういうのは黎やルシフェルに任せるべきだろ俺…。



「つーか!!魔神がいるなら先に言えや!?

 瘴気が増えてるなら最悪の場合くらい…って聞けよ!?」



 リスア先生は下を向いてコツコツと何かをやっている。

 少し身を乗り出して覗き込む…



 ガンッ



「ぐぼっ」


「邪魔臭いね。人の作業を覗きこむんじゃないよ。」



 い、いきなり頭を上げやがって…ああ、鼻が、鼻があぁぁぁ…

 天を仰いで悶絶していると、リスア先生は青い水晶を差し出す。



「…ほら、できたよ。」


 どうやらこれがマナストーンらしい。

 …で、どうやって使うんだ?



「これを砕けば砕いたものに擬似的な魔力が与えられる。

 落としたりするんじゃないよ?落としたら誰の魔力でもなくなるからね。」



「へいへい。んじゃ、ありがとうございます」


「アンタ、滅茶苦茶態度悪くなったわね。」



 フン。こんなロクデナシに気を使う必要はない。


 とりあえず、マナストーンを握りつぶす。

 パキッ、という乾いた音と共に、体が温かくなる。


 …暖房器具として使えそうでもある。





 ★☆★☆★☆





「では、デュマの訓練を始めます。

 寮や学園内では魔法の使用が禁止されているので、

 屋外でやりたいと思います。」



「庭園なんかあったんだな…知らなかった。」


 庭園には噴水やベンチなどがある。

 昼などは此処で弁当を食べる生徒が多いのであろう。



 デュマの特訓はいたって簡単。

 頭の中で、動かしたい物体がどのように動いているかイメージしながら、魔力を解放すればいい。


 イメージのためにいわゆる『詠唱』というものを使用したりする。

 口にすることでより頭の中でイメージが描きやすくなるそうだ。


 まぁ、デュマくらいの基礎魔法でいちいち詠唱するヤツなんかいないらしい。


 魔法を使う事になれた上級魔術師は、無詠唱で高位の魔法を扱うこともできるらしい。


 …んで、黎は詠唱を使用しない。

 黎は、闇属性魔法を使うときのみ詠唱をする。


 黎には、闇のイメージが浮かべにくいそうだ。



「…デュマは基礎の魔法ですが、

 ほぼ全ての魔法に使用されています。例えば…」



 黎は無詠唱で指先に炎を灯す。

 これでも初級の魔法なのだろうが、火力が半端無い。



「炎属性魔法。

 属性系魔法はいくらイメージしても、自分の付近にしか現れません。

 この程度の魔法ならまだしも、爆発系の魔法など自分の周りで発生しては大惨事です。

 そのため、デュマを使います。


 …この炎も、こんなふうに…」



 黎は腕を振り上げ、炎を投げつける。

 噴水めがけて投げたので、すぐに消化される…



 はずだった。



 炎は水をかけられてもそこに在り続け、噴水を蒸発にかかる。


「あああ!!い、いけない、どうすれば…

 と、とりあえずこれで」



 炎が突然凍結する。

 黎が氷属性の魔法を使ったのだろう。



「…こ、これで時間が経てば噴水で溶けるはずです。

 じゃ、空也さん。実際にやってみてください。」



「…魔力を解放って何?どうやんの?」



「………。その…そればっかりは、あの……感覚、というか…?」


「OK、先生に聞いてこよう」



「ひ、酷いですよ空也さんっ!!

 それに、先生だってうまくは説明できません!

 …この時空では、まだ魔法は未開の文化なんですから。」




 黎が口にした“時空”というワード。

 雑な説明しかしていなかったが、俺たちは神として生まれたもの。

 時空云々についての詳細も知っている。


 時空とは、時間と空間を保有する一つの世界。

 この世界の広大な宇宙も、すべては1つの時空なのだ。



 で、俺たちは時空を行き来する能力がある。

 それで、この時空まで来たというわけだ。





 ★☆★☆★☆





 魔力解放。

 当然、一発でうまくいくはずはなかったが、ルシフェルやハウエル、キャロンなどの第2試験合格者たちが集まってきて、かなり賑やかな指導となってきた。


 騒ぎすぎたのをまとめる役は俺やキャロン。

 苦労人というヤツだな。




 …で。試験当日。


 呼吸を整えながら、頭の中でイメージを描く。

 …本が凄い勢いですっ飛んで、壁に突き刺さるイメージを。


 相変わらず魔力開放のコツは掴めない。

 ただ、何回もやってるとたまに成功、くらいだ。


(頼むぜ…!!)



「デュマ!!」



 魔法の発動を告げる声が試験室に響く。

 …すると、本はイメージとは程遠い、弱弱しい勢いで、本の載せられた机を滑っていく。


 当然壁まで行くはずもなく、机の途中で本は止まる。



 どうだ…これ…1m行ったのか…!?






「…いいでしょう。第2試験合格を認めます。」


「よっしゃあ!!」


「では、次の試験も頑張ってくださいね。」




 見事合格した。

 これでようやく第3試験に進める…。

 多分試験の中で最も難しい試験だったであろう。俺にとっては。





 ★☆★☆★☆





 後日談



「………………。」


「………………。」


 耐えがたき沈黙。

 舞台は中庭。


 俺と黎は苦々しい表情で…未だに凍結した噴水を見つめる。



「…溶けると、思ったんです。」


 俺はそっと黎の頭に手を置く。


「…気にするな。俺も溶けると思っていた。」



「…どうしましょうか。これ。」




 結論は『放置』で決定した。



挿絵(By みてみん)

次回予告


いつものように登校した空也。

しかし、ハウエルやルシフェルが何を喋っている分からない!?

一体何が起きたのか!!


次回 Battle.15 VS言語の壁


「Ohh,Good Morning Kuya」

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