Battle.13 VSマナカラット
さて…道なりに進め、と言われてもな…。
初めて来た所だから、どこが道なのかすら…。
しかし、人がいない。
だからこそマナカラットの在庫が尽きてるんだろうな。
さて、立ち止まっててもしょうがない。
適当にまっすぐ歩くとするか…。
★☆★☆★☆
迷った…。
いや、まぁ…この結末は当たり前といえば当たり前だ。
地図も何もないのに道なりに歩いて目的地にたどり着くはずがない。
さて、行けず、戻れず。
どうしたものか…。
…?
今一瞬、向こうになんか青いものが光ったような。
行ってみるか。
「これ…なん…だよな?」
とてつもなく巨大な水晶が山にめり込んでいる。
俺は直前で手渡されたツルハシ状の魔法具を使い、水晶を採取しようとしたその時。
ヒュッ、という風を切る音を立てて、水晶のかけらが俺めがけて飛んできた。
「うおっ!?」
あ、危ねー…。何だこの水晶は。
意思でも持ってるのか?
あの教師…何が危なくないだよ…メチャクチャ危ねぇじゃねぇか。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
何か凄い轟音とともに、水晶の塊が動き出す。
動き出した水晶はその巨大な体を岩にめり込ませながら旋回する。
丁度180度回転すると、凄い勢いでめり込んでいた岩から飛び出す。
空中に浮き上がった水晶の中心には、不気味な紅い水晶が目玉のように俺を睨みつけていた。
さらに森からいくつかの青い水晶が飛び出す。
小さな青い水晶は集合して合体。
人間の手のような形になった。
つまり、
○ ◆ ○
こういう状態だ。
空中に浮いていて、いかにも俺を狙ってそうだ。
何か恐えぇ…!!
まずいな、逃げないとヤバそうだ。
次の瞬間、俺の目の前に本体と両手が現れた。
速っ…!!
一瞬にして俺は巨大な手に叩きつけられた。
巨大な見た目の裏腹にメチャクチャ速い…!!
口の中に混じった血を地面に吐き捨てる。
次に、水晶の本体の中心の赤い水晶が俺めがけて光線を放った。
ギリギリで回避したものの、地面が焼け焦げている。
こいつは唯の魔物じゃないな…。
夢魔、或いは…魔神級くらいか!?
なんでこんなのがいるんだよ…!!
あの教師いい加減にしろよ…!?
『イプシリアス!!』
聞き覚えのある声と共に、俺の目の目が青い光で包まれた。
何とか目を開けると、青白い光を纏った黎がいた。
「…あれ?あれれ?
空也さん?何でこんな所に!?」
「れ、黎こそ!?」
「私は…空也さんが帰ってこないので…空也さんのところにワープしたんです。」
水晶の赤い部分がキラリと光り、俺と黎めがけて光線を発射した。
「黎、危ないっ!!」
しかし光線は黎に届く直前で弾かれる。
障壁か!さすがは学年最強の魔力。半端無い防御力だ。
「あれは『水晶魔神クリア』ですね。
野生の魔神が何故こんな所にいるのかわかりませんが…
学園内に魔神を凝縮したような危険な魔力を感じます。
それに引き寄せられてやってきたんだと思います!」
「解説はいいから!!
後ろ!!後ろーーーーー!!」
今度は魔法攻撃の光線ではなく物理攻撃の手だ。
これじゃ黎でも防げない!!
「黎、伏せろ!!」
「え?こ、こうですか?」
黎は体を屈める。
そのすぐ上を水晶の手が通り過ぎる。
「黎!危ないから黎は一旦…」
「大丈夫です」
黎は手に青白い光を集める。
その質量は段々増えていく。
水晶魔神、とやらは巨大な手で黎を押しつぶそうとする。
が、その手は俺が受け止める。
相当な重さだが、これなら大丈夫だな…。
水晶の手を本体めがけて投げつけると、見事命中。
本体、両手共に行動を停止する。
「行きますよ!避けてくださいっ」
スイカ大くらいの青白い魔力の塊が黎の手に溜まっている。
それを水晶めがけて投げつけると、巨大な爆発が起こる。
爆発が晴れたとき、水晶魔神の姿は跡形もなく消えていた。
「…ありえない威力だ。」
「そ、そうですか?これ、オリジナル魔法なんですけど…」
オリジナル魔法って…そんなのありなのか?
★☆★☆★☆
「…それで、どうして空也さんはこんな所に?」
「そうそう、俺はリスア先生に依頼されて
マナカラットを採りに来たんだよ。」
「…マナカラット?
それなら、こっちですよ。」
「そ、そうなのか。何で知ってるんだ?」
「第4試験と第7、第8試験で此処に来ましたから。」
なるほどねぇ。
★☆★☆★☆
砕け散った水晶が散らばっている。
「なるほど…凄まじい威力ですね。
だが、この程度では…」
彼らを止める事はできないでしょうね。
「しかし…わざわざ魔神の体を壊す手間が省けました…。」
水晶の中心から赤黒い炎が現れる。
その炎は、目の前に立つ…ルシフェルの存在に気付くと、一目散に逃げようとする。
「無駄ですよ…貴方たち魔神は僕から逃げられない。」
ルシフェルが手を掲げると、赤黒い炎の動きが止まる。
そのまま炎は糸で手繰り寄せられるようにルシフェルのもとへ。
ルシフェルは片手に持った本を開くと、勢い良く炎が吸い込まれる。
完全に炎が吸収されると本の1ページに不気味な紋章が1つ浮かぶ。
「フフ…。」
ルシフェルはそのまま去っていった。
「!!?」
「ど、どうした黎!?」
「…い…いえ…何でもありません。
何か凄く嫌な魔力を感じたんですが…気のせいでしょうか…」
その後、無事にマナカラットを採取し、黎のイプシリアスで学園に帰ったのだった。
次回予告
無事帰った空也と黎。
魔力を得た空也は、早速デュマ特訓を始める。
次回 battle.14 VSデュマ
「デュマ!!」