Battle.12 VS第2試験
俺は現在、試験受付教室にいる。1階にある広めのスペースの部屋だ。学校の一室というより、ホテルのロビーのようなつくりになっていて、受付から近いドアから試験教室に行ける。
前回の第1試験で勢いづいたので、第2試験を受けるのだ。
「第2試験の内容は何なんでしょうか」
「ええ……っと。
そうですね、第1試験より簡単かもしれません。
基礎魔法『デュマ』を使用し、本を1m動かしてください」
…………え?
「それで……不合格だったのですか。
デュマは物体を思い通りに動かす魔法で、全ての授業の最初に習いますが……?」
「デュマなんか全部の魔法の基本だぞ……?
授業聞いてなかったのか?」
「やめてください……」
「しかし、魔力が無いならばマナストーンを使えば良いのでは?」
マナストーン?
そういやそんなのあったような……なかったような。
ああ、ソルが言ってたな。
購買で普通に買えるんだったか……
しかしなぁ、今の俺の手持ちは……
チャリーン
僅か200円。
「これで買えますか、ルシフェル先生」
「マナストーンは1個300円です」
買えないじゃん!
これじゃ2次試験合格できねぇ!
「そもそも、お前魔力を得たからってデュマ使えるのか?
授業聞いてなかったんだろ?」
デュマ、ねぇ……。
そもそも練習すらしてないんだから、魔法の使い方が分からん……。
「……まぁ、アレだ。
マナストーンを手に入れたら2人とも教えてくれ!」
「イヤだ」
「適任の方がいるでしょう? もっと身近に」
身近……?
……ああ、黎か!
たしかに、黎はすでに第11試験まで合格してるし。
黎にさえ教わればまず間違いなさそうだ。それにしても……酷いなあんたら。
★☆★☆★☆
「デュマ……ですか?
空也さん、デュマは全ての授業の最初に習いますけど……」
「全然授業聞いてなかったからわかりません。
教えてください」
「はぁ……それは、構わないんですけど……
とりあえず、100円渡しますから、マナストーンを買ってきて下さい」
「はいはい、毎度あり。
……そういやあんたが学園史上最低の魔力保持者かい?」
購買の先生は保健の先生と何故か同じリスア先生。
まぁ、保健室はほとんど保健委員が対応してるからな……先生がこっちに回されてもしょうがないだろう。
「はぁ、まぁそうですねぇ」
「そうかい、あんたが……フフフ。
ちょっとあんたに耳寄りの情報があってね」
「耳寄り……?」
あ、何か嫌な予感がする。
「そう警戒する事はないよ。
これから条件付であんたにマナストーンをタダで譲ってやる」
「まぁ、それは願ってもない話ですが。
で、条件ってのはどんなえげつない内容で?」
「なぁに、簡単だよ。
あんたにはマナストーンの仕入れを手伝ってもらいたいのさ。
知ってるかもしれないが、マナストーンの原料となるのは、マナカラットという鉱石でね。
このマナカラット、以前は『クエスト』の依頼の定番だったんだけどね。
『クエスト』そのものが廃止されてからは、マナカラットが手に入らなくなってね。
だからマナストーンは今、在庫分しかないんだよ。」
「先生、意味が分かりません!」
「…………。
マナカラットという鉱石を加工してできるのがマナストーン。
以前はクエストっていう授業があってね、自分じゃ解決できない悩み事とかを人に依頼して解決してたのさ。
それがクエスト授業。
だけど数年前、クエストで死者が出た。」
!
死者が……ねぇ。
どうやったら死者が出るような依頼をするんだ……?
「どっかの馬鹿が面白半分にふざけた依頼を出しやがったのさ。
『魔神種のモンスターを2匹討伐して欲しい』とかね。
クエスト授業は購買で扱ってた。
私が全ての依頼に眼を通したつもりだったんだが……何かの手違いでそんなものがクエストとして受理された。
それを受けた生徒が魔神種モンスターに殺された……。
当たり前といえば当たり前だけどね。魔神種は生徒なんかの手に負える代物じゃないから」
魔神種……?
授業で聞いたな。詳しくは……あぁ、ど忘れした。
「……あぁ、あんたは授業聞いてなかったんだったね。
この世界に生息する魔物は全部で4種類いるのさ。
弱い順から、
悪魔 魔獣 夢魔 魔神……。
これらが一般的に魔物と呼ばれる連中だね」
「そうなんですか。
それで何で魔神種モンスターの討伐なんかを……」
「……話が反れちまったね。
で、あんたに依頼したいことがある。
あんたはこれから先もマナストーンが必要だろう?」
だろうな。
俺には魔力が無いからこれからも必要だろう。
「そこで依頼だよ。
あんたにはこれからエレス鉱山に行って貰いたい。
そんなに危険な事はないから、多分大丈夫だ。
そこで森のほうに道なりに進むと巨大な青い結晶がある。
それがマナカラットだ。
それを……そうだね、2kgくらい削ってきてもらえれば、あんたの分と生徒の分が1年分くらい確保できるよ。」
「……まぁ、断る理由も無いんで受けさせてもらいましょう」
「決まりだね。んじゃ、今から転移魔法で送るよ」
「ちょ、ちょっと待った、道は!? あと帰りは!?」
「適当に歩いてれば着くよ。
んじゃ、頑張っといで……イプシリアス」
★☆★☆★☆
青い光が俺を包み、気がつくと俺はどこかの山にいた。
イプシリアス、というのは転移魔法。
以前黎が使っていたのを覚えている。
しかし、リスア先生の説明が雑すぎる。
道なりに進め、とか言われてもどうすりゃいいんだ……。
次回予告
リスア先生の依頼によりマナカラットを手に入れることになった空也。
そんな空也の下に、助っ人が現れる。
次回 Battle.13 VSマナカラット
「手間が省けました…」