Battle.10 VS捜索活動
「よーし、この調子でどんどんいくぜ!!」
「あ、ちょっとお待ちなさい!」
キャロンが俺を呼び止める。
一体何事だ?折角勢いに乗る予定だったのに。
「ルシフェルさんがいませんわ。
たしか、スタンプラリーはグループ全員でゴールしなくちゃ…」
「「「「…………。」」」」
「どこ行ったアイツ!?音も無く消え去ったぞ!?
まさか…アイツはこの山に住む幽霊だったのか!!」
それならアイツから感じた違和感も説明がつく…気がする。
「バカ言ってないで探しますわよ。
探す場所の候補としては…遊歩道じゃない所かしら…。」
俺たちが今歩いているのは湖へと続く遊歩道。
前後左右見渡せるため、ルシフェルがいなくなったならば遊歩道以外、か。
仕方が無い…景品のために捜すとするか…。
★☆★☆★☆
「…………………………………。」
スタンプラリーのルートから非常に大きく外れた森。
その森の、誰にも目に付かないような木の生い茂った最深部。
そこに、ルシフェルはいた。
ルシフェルは右手から血を流していた。
いや…意図的に右手を傷つけ、血を流したのだ。
「………………。」
左手には不気味な本を抱え、右手から滴る血液で何かを描いていく。
そして書き上げたのは、不気味な紋章だった。
(まずは1つ……)
プルルルルル…
プルルルルル…
ルシフェルの携帯電話が鳴り響く。
ピッ
「もしもし…」
『もしもし、ルシフェル。首尾はどうですか?』
「ええ…まずは1つ、といった所ですね。
この調子ならば問題は無いでしょう。」
『フフ…流石ですねルシフェル。
しかし注意するに越した事はありません。何しろ…』
「紅き力と蒼き力…紅き力はともかくとして、蒼き力には警戒する必要があるでしょうね。
彼女は魔力探知などに極めて秀でている…。」
『ええ…引き続き任務に当たってください。
貴方が失敗すれば、この計画もあと数兆年近く保留なのですから。』
「わかっていますよ。心配は無用です。
それに何より…僕の力は貴方が一番良く知っているでしょう?」
『フ…武運を祈りますよ。』
「ルシフェルー!!どこ行ったー!!」
「おや、空也さん。どうしましたか?こんな所まで」
ルシフェルを見つけた。
「こんな所で…って、こっちの台詞だ!!
何でこんな遊歩道から大きく外れたところにいんだよ!?」
「失礼しました。魔物を見かけたもので…。
しかし、このアヴァリオン・マウンテンにまで魔物がいるとは…
やはりこの世界の瘴気は濃くなっているのですね…。」
「? 何の話だ?
まぁ、ともかく!!スタンプラリー再開するぞ!!
今までの遅れを取り戻さなきゃ…」
そしてルートに戻ったのだが…
「スタンプラリーは一回ルート外れたらもうアウトだ。
まったく、お前らは何をやってるんだか…」
「「ええええええええええええええええーーーーー…!!!」」
俺とハウエルの悲痛な叫び声が響いた。
★☆★☆★☆
夜。
自由参加のキャンプファイアーが催された。
「申し訳ありません…。」
「いいんですよ、ルシフェルさん。
それに景品もむせんるーたー?とかいうものでしたし…」
黎はルシフェルの右手の治療をしていた。
「無線LANルーター、な。
まぁ寮にPCはないから…本当に意味が無い。
実家とかに送ったり持って帰ったりする用の景品だよな…。」
俺とハウエルも黎の治療に同行していた。
黎はルシフェルの右手を消毒し、包帯を巻きつける。
「それにしても、どうしていきなりどこかに行ってしまったんですか?」
「あぁ、俺も気になるぜ。教えてくれよルシフェル。」
ハウエルも気になっていたようだ。
俺と再会したときも、何か曖昧な答えだったしな…。
「それは…魔物がいたのです。」
「「「魔物?」」」
アヴァリオン・マウンテンは学園の保護下にある。
そのため、遠足などにも使用できるし、魔物が出るはずも無い。
「大した魔物ではなく、小悪魔だったのですが…
炎属性の魔物だったので、危険と思い処理したのです。」
「そうだったんですか…」
「近年、この世界の邪気が濃くなっているのです。
それにより、魔物が力をつけてきている…。
学園側も、それに対応するのに忙しいようですね。」
ルシフェルってやたらそういうのに詳しいよな…。
そういう授業をとっているのか…それともそういう本を読み漁っているのか?
黎も少し首をかしげている。
(なぁ黎。ルシフェルって何者なんだろうな?)
(わかりません…でも普通の人とは何か違う感じがします…)
ルシフェルの瞳が一瞬、紫色に光ったように見えた。
翌日、身支度をしてとっとと下山。
この時間にスタンプラリーをやればよかったんじゃ…?
★☆★☆★☆
後日。
黎はやはり何か引っかかることがあり、
再びアヴァリオン・マウンテンを訪れていた。
黎は登山の疲れか、息を切らしていた。
そして、件の森林の最深部に到着する。
(なんだろ、これ…?)
黎が見つけたのは、血で描かれた不気味な紋章。
何かしらの魔力を付加してあるものの、詳細は掴めない。
(消したほうがいいかな…でも…)
下手に消すと、山の結界なども消えてしまうかもしれない。
しかし、血で描かれた紋章など少なくとも無害な魔法ではない。
(どうしよう……。)
悩んだ末、黎は答えを導き出す。
(私なりにこの紋章について調べてみよう。
消すか消さないかはその時判断するとして…。
それに術が発動してからでも消すのは遅くない…かな?)
相当強力な魔法で無い限りは。
「………………………」
そんな黎を見つめる影が1つ。
黎が紋章を消さずに去ったのを確認すると、漆黒の翼を広げ、どこかへと飛び去った。
次回予告
第1試験の結果発表。
見事合格した空也・ハウエル・ルシフェル。
喜ぶ一同を見て皮肉を言うアメジストクラス生徒。
トパーズクラスの怒りを空也が代弁する!
次回 Battle.11 VSアメジスト生徒
「協力を感謝する…。」