Battle.8 VSスタンプラリー
あの後、黎に必死に謝ったら許してくれた。
やはり怒っていても優しい所は変わらないらしい。
で。
今、俺たちはキャンプに付き添った教員の指示で野外へと集まっていた。
今はまだ5月だが…山だからか、少し蚊がいる。
俺の腕に止まったので問答無用で叩き潰す。
(何でわざわざ野外で集会やんだよ…蚊が…ウゼェ…)
(まぁ、これから行動するのですし…我慢しておきましょう。)
後ろでハウエルとルシフェルが話している。
ちなみに俺は両方の意見に賛成だ。
俺らの前に立ったトパーズクラスの教師がダルそうに口を開く。
「はーい、ではこれよりファルシオン新入生キャンプ名物!!
スタンプラリーを開催したいと思います。」
…???
ス、スタンプラリー?
「スタンプラリーには様々なルートがあり……
まぁやったほうが早いだろ。んじゃ、適当にグループ組んでくれ。
4人以上、7人以下のグループだ。組めたグループから俺や他の教師に報告。
そこで地図とスタンプカードを渡す。
んじゃ、スタートだ!」
(ちょっと先生!そんな雑で良いんですか!?)
(いんだよ。生徒たちには直感で行動してもらう。
それもキャンプの醍醐味だ。)
あの教師、何考えてるんだか全く分からん…。
「…ちなみに、1~10位には賞品があるぞ。」
「さっさとグループを組むぞ!!」
「空也…俺も同意見だ。」
「で、誰を誘うのですか?
実力も伴ったメンバーで無い限り10位以内は厳しいでしょう。」
「ああ、それなら問題ない。学年主席を呼んだからな。」
「主席…?」
そう、主席だ。
学年主席、というか多分学園主席の実力を持つ。
「空也さ~ん、お待たせしましたー。」
今回は別々のクラスでも可能のようなので、黎を呼んだ。
これで4人。ノルマは達成だ。
「キャロンさ~ん、こっちですよ~」
「ちょっと!!わたくしはまだ別の人と組むとは…」
黎の後ろを小走りでついてくる金髪のお嬢様的な女性が1人。
年齢的に高校生くらいだろうか?
おそらくダイアモンドクラスでの黎の友達か何かだろう…
「待たせてゴメンナサイ、空也さん。
早速行きましょう」
「あぁ、そうだな。できる限り早く行ったほうが…」
「ちょ、ちょっと!?
わたくしは初対面の人間と行動できるほど順応性は高くないわよ!?
まずは自己紹介とか…」
キャロンという人が後ろで何か言っている。
…ふっ、分かってないな。
「自己紹介なんか歩きながらでいい!!
今は一刻も早く登録を!!」
★☆★☆★☆
「まったく…何故そんなにも急いでおりますの?」
「1位から10位には賞品があるらしいんです。
それで空也さん、張り切って…」
「ハァ…その程度で張り切れるとは、微笑ましいですわね。
それよりも…自己紹介をさせていただきますわ。
わたくしはキャロン。デュラン家の長女ですわ。」
「あ、そうなんですか…」
お嬢様のどうでもいい自己紹介を軽く聞き流す俺。
仕方が無いから俺も(歩きながら)自己紹介するか。
「あー、小泉空也です、学園内で最も魔力が無いらしいです。」
「あー、ハウエルです、別にこれといった特徴はありません。」
「あなた方、やる気を出しなさい!!」
そりゃそうだ。
早歩きで振り返りもせずにこの雑な自己紹介。
やる気が無いと思われても仕方が無い。ていうか、実際やる気は無い。
俺たちのやる気は今…スタンプラリーにのみ向けられている。
「トパーズクラス代表のルシフェルと申します。
…以後、お見知りおきを。」
「……?」
振り返ると、黎が首をかしげてルシフェルを見ている。
やっぱり黎も感じたのか?
――――ルシフェルの、違和感を。
「どうかしましたか?」
「あぁいえ、なんでもないですっ」
「えと…最後は私ですね。
黎です。空也さんの妹です。」
「「!!?」」
…ど、どうしたんだ…?
何故そんなに驚く。キャロン&ハウエル。
(魔力が学園最低の男の妹がこの魔力…!?
一体どういう家系なの…!?)
(兄がイケメンで妹が可愛いってどういう家系だよ…!!)
「どうしたハウエル…殺気がやばいぞ」
「な、なんでもない!!
そ、それよりホラ、あそこが第1チェックポイントだぞ!!」
スタンプラリーのやり方はこうだ。
まず、登録時にスタンプカードと共に受け取った第1チェックポイントを目指す。
そこでの課題をクリアした後、そのチェックポイントで抽選を行い、第2チェックポイントが決定する。
そして次々にチェックポイントを巡り、第10チェックポイントで終わり、その後最初の集会場へと向かう事になっている。
第1チェックポイントに到着する。
そこには倒れた生徒が大勢いた。
そして倒れた生徒の中で立ち尽くす生徒が1人。 ソルだ。
「うふふ、どうしました?貴方が合格すれば皆さん此処を通れますよ?」
「メ、メンバーが再起不能のため棄権させてください!!」
そこで、黎がソルの存在に気付く。
「ソルさーん、どうしたんですか?」
「え?ああ、黎様、空也。
実は、此処での試練で俺のメンバーが全員やられたので棄権しようかと。」
要は仲間がやられて怖いから逃げるわけだな。
まったく情けないやつめ…。
「じゃぁ、ソルさんも私たちと一緒に回りましょう。
私たちはまだ4人ですし、入れますよ。」
「!!!」
黎はソルが逃げようとしている事になど気づいていない。
純粋に、「メンバーがいなくなった為仕方なく棄権する」という、
ソルの逃げ口上を鵜呑みにしている。
なので、慈愛の精神に満ちた黎はソルをメンバーに加えると…
傑作だ。面白すぎる。
「イヤとは言わないだろうなぁ?ソル。」
「く、空也?嫌とは言わないじゃなくて言わせないの間違いじゃないか!?
どうして俺の関節を固定する!?」
★☆★☆★☆
ソルの希望により、ソルが俺たちのパーティに加わった。
じゃ、ソルのパーティを撃沈させた第1試練とやらを受けてみようじゃないか。
「ここでの試練は…激辛カレー完食でぇす♪」
………………………え?
次回予告
運悪く、ドボンゲームを引いてしまった一同。
最初のゲームは激辛カレー完食。
通常のカレーにいわゆる『デスソース』をなんと15cc加えたカレー。
下手すりゃ本気で病院送りなこのカレー…。
一同はどう対処する!?
次回 Battle.9 VS激辛カレー
(殺す気かよあの教師…!)