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ファルシオン学園の闘争記  作者: 玄野志向
第1章 入学編
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Battle.7 VS寝言

 ソルの目の前まで来ると、不可解なめまいに襲われた。

 それだけではない、何かおかしな感情……怒りのような、焦りのような。


 ――――殺せ、と。

 心の底で何かがささやくと、意識が飛んだ。




 ★☆★☆★☆




「フ……ッ、ハハハハハ、ハッハッハハハハハハァ!!」


「や、やめろ! 空也!?」



 突如、空也は狂ったような笑い声を上げ、ソルの首を絞めた。

 ハウエルの叫びも、今の空也の耳には届かない。

 この場にいる全員が空也の暴走に危機感を覚えていた。


 ……否、正確に言えば全員ではないが。


 しかし、直後に空也は自我を取り戻し、ソルを開放した。

 ルシフェルが神妙な面持ちで空也に近づく。



「失礼しました、空也さん。

 どうやら先ほどの傷薬……調合を間違えていたようです。

 回復魔法のほかに……異常魔法をかけてしまっていたようです」



「異常……魔法……?」


「ええ。一時的に対象となった者の戦闘意識を覚醒させ、戦闘力を倍増させる魔法……。

 ただし敵味方の区別がつかなくなるため、使用には注意が必要な魔法です」



「あ……」


 空也はようやく自分の置かれた状況を理解した。

 恐怖か何かで失神しているらしいソルが、自分のすぐ側に倒れていた。


 そして突然、思考を遮る激痛が体に走る。


「っ!!」


「調合ミスによる異常は体にも影響しますからね。体を休めたほうがいいでしょう」


「待て、その前に……」


 言いかけて、激痛が走る。

 言葉が遮られ、視界が歪んでいく……。



 だが、意識が途切れる前にこれだけはやっておかなきゃな……。泡を吹いて失神しているソルの手から竜の幼生を抜き取る。

 ルシフェルに竜の幼生を投げ渡す。キーキーと鳴きながら竜が空を舞う。

 そして俺は、意識を、手放した。





 ★☆★☆★☆




『貴様あああぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!』


 ぎゃあああああああああーーーーーー! びっくりした!

 な、なんだなんだ……? 夢……?



『久々の脳内通信だ。俺だよ、ソルだ。

 今お前は意識を失ってる。お前の夢の中に通信中だ。


 つーかてめぇ! 俺の竜の幼生を……奪いやがったなあぁぁぁぁ……!?

 おかげで俺は2次試験不合格だ! どうしてくれる!?』


 ちなみに脳内通信とはソルが使う便利なPCに搭載された念話魔法の事。

 時空の管理神は時空に基本的に実体顕現できないため、よくソルが使っていた。


『誰に対して喋ってるんだお前……』


 気にするな。つーかさっきの件、自業自得だ。そもそもお前が襲い掛かってきたんだからな。

 1次試験で80点以上取れなかったのは誰だろうな?


『くぅ……! それは反論できない……』


 んで、俺は一体……。


『2次試験が終わってから遠足が開始されたんだよ。……とはいってもキャンプみたいなもんだがな。

 俺らアメジストもグループごとに宿泊だ。面倒くせえ。で、お前は多分医務室キャンプにいると思うぞ。』


 医務室か。じゃあ今治療中?


『多分な。滅茶苦茶なスピードで回復してるから魔法による治療だろうな』


 なるほどねぇ……俺も魔法が使いたいぜ……。


『って、お前は魔法使えないのか!?』


 そうだ。魔力が無いんだから。使うに使えねぇ。



『なぁーんだ、そんな事。

 そういう時にはな、購買でマナ・ストーンを買うのさ』


 マナ・ストーン?


『そうだ。魔力を凝縮した石。砕く事で一時的に魔力を得られる。

 それさえあれば、魔法の使い方さえ知ってれば使えるぞ』



 でもなぁ……『マナ』ストーンがな『い』っ『た』って魔法が使えるヤツとか……



 ――――ぎぃぃぃぃやぁぁぁぁあああああっ!?

 か、体がっ!?





 ★☆★☆★☆




「う……うぅ……。な、何が……」


「…………」



 ムッとした表情の黎と……何か傷だらけの俺。


「あのー、黎さん?」


「…………。」


「怪我が増えている気がするのですが……」


「…………ふんっ」


 俺は……何やったんだ……?





 ★☆★☆★☆





「あっははははははははは! ヒー面白ぇー」


「笑ってねぇで何があったのか説明しろよ」



 全く分からずにソルに相談。ソルは魔法のようなもので俺の様子を見ていたらしい。

 ソルはそれを見て大爆笑し、瞳に涙を浮かべている。……殴ってやりたい。


「まぁまぁ、ゲホッ、見たほうが、早いぜ、ハッハハハハハハ」


 な、なんなんだ……?

 ソルは魔法で空中に映像を投影した。




『まったく……空也さんはすぐ無理をして……』


 あ、黎だ。


「黎様は保健委員に入ったらしいな」


 ちなみに、ソルは俺や黎からすると部下にあたる。

 なので黎の事は様付けで呼ぶんだが……俺とソルはどちらかというと悪友、といった感じなので、様付けはしないしさせない。



『私の心配ばかりして……自分の事は……ブツブツ……』


「言われてるぞ~、空也サン?」

「黙りなボウヤ」


『う……』


 ここで俺の腕が動く。


『あっ、気がつきましたか? 空也さん』



 ぺたっ



 無意識に……だ。無意識に俺の腕が動いた結果、その……まぁ、黎の……触ってはいけない部分……まぁ、具体的には胸に手が触れた。

 絶句する黎。

 悲劇はこれだけではなかった。



『マ……ナ……い……た……』


 爆発音が響いた。




「あっはっはっはっはっはっは!

 まったくお前は……確かに黎様はまな板だけどな、もう少しお年頃の少女の気持ちを考えてあげてもいいだろう」



「ちがっ!? 誤解だ! そもそもあれはお前と脳内通信していたからだろう!?

 そもそも俺が言ったのはまな板じゃなくて、《マナストーンがないったって…》と言っただけだ!!

 ていうか、お前も今はっきりまな板って……」


「フッ、良いんだよ、黎様は此処の声は聞こえな……」




 ゾクッ




 背筋が凍るほどの恐怖がソルの背後から……。


「ソルさん……?」



 決して怒っている声色ではない……んだが……息が詰まるほどの圧迫感……!


「2人で私のことを馬鹿にして……!

 私はまな板じゃないです! 少しくらいの凹凸はあるんですよ! ……多分」



「待った! 俺のは誤解だ! 意図してまな板呼ばわりしたのはソルだけだ!」


「いやいやいやいや! それは言葉のあやで」


 俺たちの間を巨大な魔法弾が通り抜けた。

 頬が切れ、血が流れ出す。


「「…………!」」


「言い訳は無用です……! 覚悟してくださいっ!」



「「ぎゃあああああああ~~~~~!」」



挿絵(By みてみん)

次回予告


苦しみの2次試験は終わり、点数発表まではキャンプを楽しむことができる。

そこで空也、ハウエル、ルシフェルはグループを組んで、

ファルシオン・スタンプラリーを周る事にした。

そこに黎も加わり、波乱のスタンプラリーが幕を開ける!!


次回 Battle.8 VSスタンプラリー


「あぁいえ、何でもないですっ」

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