#8 僕の弁当、君の弁当。
そして昼休み、僕は癖で昨日の場所に行こうとしたが、そういえばと思い教室に残っている。そうだ、今日は神崎さんにお弁当を貰うという約束だった。危ない危ない危うく忘れるとこだった。ていうか危ない危ない危うくって危が3つあるんだな、すごくどうでもいいなこれ。
「そ〜ら君?」
ひょいっと、横の席に座る神崎さん。この子は神崎雫。何故か僕と話してくれる人だ。
「ほら、食べよ食べよ〜?」
自分のを机に置くと、もうひとつの弁当を僕に渡してくる。ちょっと待て、この弁当ってまさか……
「ねぇ、これって神崎さんが作ったの?」
「うん? そうだけど?」
……やっぱり、僕には一生ないと思っていた女子の手作り弁当。
「そうか、ありがとう」
素っ気なく返事をすると神崎さんは
「えへへ、どういたしまして」
あ〜、この子は笑顔が凄く似合うな。なんだか見ていてほっとするというか……落ち着くというか、そんな感じの笑顔だ。
『いただきます』
ふたりで手を合わせ、弁当を開ける。中には卵焼き、野菜、米などが入っていた。
「……これは?」
「あぁ、空くんってあんまり栄養取って無さそうだったから、栄養あるものを入れたの」
確かに、僕は栄養という栄養を取っていない。ご飯はお腹すいたら食べてたし、最高で1週間食べなかったこともある。今だと2.3日くらいだが。
静かな教室で、僕らは弁当を食べる。久しぶりに、学校で静かだななんて思った。学校は常にうるさいものだ。それがいいって言う人もいるだろうが、僕は苦手だ。なんというか……耳障りのうるささなのだ。と、そんなくだらないことを考えていると……
「どう? 景色は?」
唐突にそんな話をしてくる神崎さん。僕はこう聞き返した。
「何の話?」
「君の見える世界は、どう見えてるのかなって」
僕の世界……か、そうだ、自己紹介の時に言ったな。すっかり忘れていた。急に何の話かと思ったよ。
「そう、だな。何も変わらないよ。まだ、灰色のままだ」
「……そっか」
まるで自分に起きた出来事かのように悲しむ神崎さん。本当に……お人好しにも程がある。
僕には到底出来ない事だ。それは、他の誰でもできない。神崎さんにしかできない事だ。他の人がやったって、同じ結果になるとは限らない。僕がやったって、うざがられるだけ、迷惑になるだけだ。だが、神崎雫はどうだろう? こんな僕にも構ってくれて、人のためを思って行動できる。これほど純粋で、人を思って行動できるのは神崎さんしか居ないだろう。
『ご馳走様でした』
「あ、私次の移動教室があるからそろそろ行くね」
「うん、これありがとう」
僕は弁当を神崎さんに返す。
「美味しかった?」
「……あぁ、とっても」
お世辞抜きで、美味しかった。本当に。
「それは良かった♪」
じゃあねと、手を振って準備を始めた。
「……僕も、準備するか」




