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#2 僕は死んで、君は生きる

 全員の自己紹介が終わったあと、教材やら先生の話で今日の学校は終わった。

「ねぇ、グループLINE入らない?」

先程、色についての質問をしてきた女子"神崎(かんざき) (しずく)"が話しかけてきた。

「ごめん、僕スマホ持ってないんだ」

「え!? 嘘!? 今の時代必須アイテムだよ?」

そうなの?僕は別になくても生きていけるし、無駄にお金は使いたくないから買ってないんだけど。他の人ってみんな持ってるの?

「そっかぁ〜、空くん持ってないんだ〜」

 いきなり下の名前で呼ばれた。馴れ馴れしいな、この子。

「あの、いきなり下の名前?」

「ん? ダメだった?」

「いや、そういう訳じゃないよ」

 自己紹介の時にも言ったが、僕は感情が薄い。だからこんなことでは照れたりしないし、動揺もしない。

「うーん、でもさ、それだと不便じゃない? 連絡とか出来ないでしょ?」

「? する必要あるの?」

「……え?」

どうやら、話が噛み合わないようだ。

「いやいやいや! 誰だってするでしょ? ほら、親とか兄弟とか!」

「居ないよ、そんなもの」

「え……あ……」

「別にいいよ、こんくらい。もう気にしてないし」

「……それって辛くない?」

「いや、別に」

本当に話が噛み合わない。スマホある無いでこんなにも噛み合わないものなのか。

「そういえば、このあとカラオケ行く予定だけど……空くんはどうする?」

 神崎雫は、机に腰を座らせて僕に話しかけている。

「僕はいいかな、お金ないし」

 お金が無い、というのは嘘であり本当だ。

お金はあるにはあるが、そんなものに使うお金はない。

「そっか……」

と、少し残念そうに言う神崎雫。

「思ったんだけどさ、どうして僕に話しかけてくるの?」

 そこで、僕は気になったことを言った。

「え? なんでって言われても、私がそうしたいからしてるだけ」

「…………」

 初めてだ。初めてだった。僕に話しかけてきてくれて、どこかに誘ってくれる人なんて初めてだ。あれ、まだ初日だよね?なんかもう1.2年くらい仲良くしてる友達みたいになってない?

「あまり、僕に関わらない方がいいよ。君に不幸を与えちゃうかもしれない」

「不幸?」

「うん、僕と関わっていると、ろくな事にならない。だから、警告」

 表情を変えずに告げる。けれどその少女は……

「だから、言ってるでしょ?」

ドンっと、机から降り振り返りながら僕に言う。

「私は、私のしたいようにしてるだけだって。それじゃ、私はカラオケに行ってくるね」

「あ、あぁ……」

 なんだったんだ。一体。何故そこまで僕を……


 今日は色々なことがあったなと思いながら帰路を辿る。

「不思議なこともあるもんだ」

今日はまだお腹は空いていない。だから近くのコンビニを通り過ぎようとした。その時……

「きゃあぁぁぁぁぁ」

 甲高い悲鳴が聞こえた。僕は、無視して帰ろうかと思った。

(あれ、待てよ? 僕が行ったら、死ねるんじゃないか?)

と、脳裏をよぎる。僕なんかいらない。誰も必要としていない。だったら、死んだっていい。常々、そう思っている。だから向かう。その場所へ。


「おい」

  僕は、その場所へ辿り着く。見ると、いかにも不良らしき人が少女をいたぶっていた。恐らく金目当てだろう。

「なんだ、テメェは」

その男は素早く僕の首を掴む。普通なら「がっ」とか「あがっ!?」とか言うのだろうが、僕は感じない。

「君はどうしてこんなことをする?」

「あ"……? テメェに関係あんのか?」

「いや、ない。気になっただけだ」

「……そうかよ……!」

 思いっきり殴られる、それもグーで顔面を。痛くない。驚く程に。僕は少女の方を見る。ガクガクと震えていた。そりゃそうだ。わけも分からず殴られて、目の前で僕が殴られていたら誰だって震える。

「早く逃げろ……!」

久しぶりに大声を出す。少女はこくんと頷いて、素早く逃げた。

その間も僕は殴られ続ける。

「なぁ、なんでこんなことするんだ? お金が欲しけりゃバイトすればいいじゃないか」

「……出来ねぇんだよ!! 全部落ちたんだよ! なんも分からねぇテメェが喋るなよ!」

確かにそれはそうだ。

「悪かったよ」

「俺だって、出来るなら真面目に生きてぇよ。だけどよ……世界がそれを許してくれねぇ、だから俺は汚い手を使ってまで生きるんだよ! 結局、生きてるやつが偉いんだからよ!」

 生きてるやつがえらい。そんな言葉は飽きるほど聞いた。確かに生きたいって思う人ならそれは正しい。だって生きたいんだから。生きたくて生きたくてどうしようもない人から見ればそれは正義なのだろう。

ならば、死にたい人からすればどうだ?果たしてそれは正義なのか?いいや違う。死にたい人からすれば、死んだやつがえらいってことになる。だって、死にたいんだから。

「僕はさ、死にたいんだ。死にたくて死にたくてどうしようもない。君は……僕を殺してくれるのかい?」

血まみれになりながら、淡々と言葉を吐く。

「なっ……!?」

「僕はね、何をしても死ねなかった。餓死だって、飛び降りだって、首吊りだってしたさ。けどね、死ねなかった。幸い、後遺症は残らなかったけど。でも君は生きたいんだろう? だったら、winwinじゃないか。僕を殺して財布をとる。僕は死ねる、君は生きれる。どうだ?」

「………お前、相当狂ってるな」

「お互い様ね」

そう話すと、その男は僕を放り投げる。

「いいのか?」

「あぁ、テメェのお陰でな」

 ふらふらと手を振りながら、ゆっくりと去っていく。

それを見て僕は

「……なんだったんだ」

と、呟いたのだった。

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