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#1 僕の好きな色、君の好きな色は?

 この世界には、"色"がある。様々な色が、視野に広がっている。例えば木、これは緑色だ。雲の色、これは白色だ。このように世界には色がある。

  けれど、僕には色がない。世界に色がついていない。ずっと、昔の写真のようにモノクロなのだ。

  とある時期から色が見えなくなってしまった。僕の世界から、色が消えた。来年度、僕は高校生になる。だからなんだって話だが。僕は、他の人よりも感情が何倍も薄い。いや、あるにはあるのだが、ほとんど出さない。

  中学の頃、僕は虐められていた。他とは違う、だから虐められた。けれど……痛みは感じなかった。何も、感じなかった。血が沢山溢れ出た。それでも痛みは感じなかった。そこから……いじめはなくなった。僕を気味悪がったのか、飽きたのか、それは分からないが、誰も僕に関わろうとしなくなった。

今僕は一人暮らしだ。両親は、2人とも死んだ。でも、僕を引き取ろうとする人はいなかった。親の遺産でなんとか生活出来ている。まぁ、僕が居なくなったところで誰も悲しまないけど。

「はぁ……」

  世間は春休み。特に何もすることがないのでずっと寝ている。部屋には何も無い。本当に何も無い。必要最低限のものしかない。ゲームはもちろん、漫画も、小説も、暇つぶし用具もない。ただ"無"なのだ。

  そして月日が経つ。やがて春休みが終わる。何も変わらない、食事はお腹が空いたら食べる。飲み物も喉が乾いたら飲む。そんな生活をずっと続けている。


「あ……学校、か」

  朝6時、誰もいない部屋で独り呟く。今日はまだお腹が減っていない。3日目だろうか。時間感覚も狂ってしまった。

今日は入学式だ。僕は通学路を辿る。やはり、世界に色はない。ずっと灰色で、乱れている。

 

  僕は指定されていた建物に行った。そこは体育館。受験番号が書かれている席に座る。

  やがて、時間が来た。そして……入学式が始まった。


  周りはガヤガヤと騒いでいる。原因はクラス発表にある。誰がどこのクラスに入るのかワクワクしているのだ。別にどこでもいいだろ、とは思うが。離れたくらいで喋らなくなるのは、それは友達と言えるのだろうか?

「僕はAか」

クラス表を見て、名前が書かれたクラスに入る。

 そして、自分の席に座る。僕はこの空気が嫌いだ。何が嫌いかは言葉で表すのは難しいが……空気が嫌いだ。


  担任らしき先生が入ってきた。どうやら、時間になったようだ。

「皆さん、座ってください」

言われた通りに、皆席に座った。

「私はこのクラスの担任、風花涼子(ふうかりょうこ)です。1年間よろしくお願いしますね」

『はーい!』

と、クラスが賑わう。

「……え」

  僕は一瞬、目を見張った。その中の一人に、色がついていたのだ。目を擦る。……見間違えだったようだ。そんなわけが無い。色がつくなんて、そんなはずがない。

「では、皆さんに自分のことを知って貰えるよう、自己紹介をお願いします」

  なぜ、そのようなことをする必要があるのだろうか。別に自分を知ってもらったところで何かが変わるという訳でもない。特に僕なんかはそうだ。誰も話しかけない、誰も関わろうとしない。なのに自己紹介をさせられる。新手の拷問だろうか。

「名前順から、えっと」

と、先生は僕を見て

「あ、はい。天月 空です」

話すことなど何もないので、名前だけ言う。

『は? それだけ?』

『もっと何かあるだろ、おもんねぇな』

 そのような声が聞こえる。どうせ僕に関わらないくせになんで話す必要があるんだか。まぁ、一応これを言っておくか。

「……質問ある方」

ため息を零しながら僕は言う。すると

「はーい」

僕の隣の席の人が手を挙げた。

「好きな色はありますか?」

「……色」

僕は少し悩む。色……か、なんだろうか。

「色であればなんでも、逆に君は何が好きなんだ?」

「私? 私はね〜、灰色かな。悲しそうな色だけど、少し暖かいような、そんな気がして好きなんだ」

「…………」

驚いた。灰色が好きな人なんているんだな。

「僕は、灰色は嫌いだな。他の色が見たい」

「ふぅーん? まぁ、好き嫌いは人それぞれだしね〜」

「はいはい、好きな人はいますか?」

男子生徒が興味津々に聞いてくる。早すぎだろ。始まったばっかりだぞ。

「居ないよ、君はいるのかい?」

「俺? 色の質問をしてた子かな」

「ごめんなさい無理です」

『はははw』と、教室で笑いが起きる。何が面白いんだか。

「ねぇ、気になってたんだけど、天月くんさっきから感情をあまり出してないよね? それはなんで?」

「え」

後ろの生徒から投げかけられた。

『そういえば確かに』

『そう思ってるのがかっこいいとか思ってるんでしょ』

「……感情は、あるにはあるよ。ただ、人よりも何倍も薄いだけ。だから、僕は気味悪がられてる。避けられてる。まぁ、それすら何も感じないんだけど」

 淡々と、だけども強くも弱くも無い声で、まるで洗脳されてるかのような口調で話す。

『…………』

 クラスが静まり返る。これは僕が悪いのだろうか。

「じゃ、じゃあ次は私だね」

話を振ってきた本人が、申し訳なさそうに手を挙げて自己紹介をした……。


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