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「はあ!?」
急に番傘の先端をこちらに向けられ、僕は混乱するしかない。
そもそも僕は怒らせるようなことをした覚えは無いし、知らない間に怒らせていたとしてもここまでされる謂れは無い。
「ちょっと!そんなの向けてきたら危ないだろ!」
「黙りなァ」
はあぁぁ!?
こんなことされて黙ってられるかってーの!
「良いから、そこを動くなよ」
「あのさあ!殴られるって分かってて動かない馬鹿が……っ!!」
……何故か、身体が動かない。
何で!?別に拘束されている訳でも、誰かに羽交い締めにされている訳でも無いのに!?
「ごめんね。少しだけ、我慢して。終わったら動けるようにするから」
神々廻さんの背後から、何故か馨ちゃんが謝る。
まさか彼女が?……でも、彼女は僕に指一本触れてすらいないのに?
「……かったるい。さっさと済ませるぞ」
「大丈夫。下級だから」
ど、どうしよう。もう明らかにあの番傘の先端で僕を突き刺そうとしているように見える。
あんなのが刺さったら軽傷じゃ済まない。最悪死ぬだろう。
う、動かないと……殺される……!
「うわあああああああ!!!!」
僕は精一杯の大声で叫んだが、それでも身体は動いてくれなかった。
必死に抵抗しようとしても、指一本すら動いてくれない。それどころか目線すらも動かせない……!
ダメだ!本当に殺される───────
「……ぇ、」
結論から言うと、僕は刺されなかった。
いや、見た目では間違いなく刺されているのだが、痛みも刺されている感覚すら無かったのだ。
『ウ……グ……ァァァ……』
そして、僕の耳元で耳障りな声が響く。いやにはっきりとした声に聞こえた。
でも、僕の後ろになんて、誰も居なかったような……。