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「うっ……わ……」
その少女はあまりにも真っ白で、綺麗で、思わず感嘆の声が漏れてしまったくらいだった。
「……誰?黎一郎の知り合い……?」
「知らねェ。さっき一緒に飯食った」
「そう……。黎一郎が迷惑かけて、ごめんなさい」
「おいコラ馨」
成程。この少女が馨なのか。
少女は僕の方に歩み寄ったかと思うと、丁寧にお辞儀をする。どうやら神々廻さんよりも育ちが良いらしい。
しかし、本当に小さいな。小学生の低学年くらいに見える。
「……私、12歳だよ」
「はッ、お前まだガキに見えるんだとよ」
「うるさい。黎一郎のばか」
僕の表情から思っていたことを読み取ったのか彼女は不機嫌そうな表情を見せる。更に神々廻が追い打ちをかけたことによって、彼女はぷいとそっぽを向いてしまった。
「……アルビノ?」
「あァ?何言ってんだテメェ」
少女……馨ちゃんのあまりの白さに僕は彼女がアルビノではないかと思い口に出してみたが、教養が無さそうなホームレスには言葉すら通じなかったらしい。
「そうですね。生まれつき、そうだったみたいですよ」
代わりに純子さんが答えてくれる。
すると少女がずいっとこちらに顔を近づけてきた。……睨んでいるのだろうか。
「……何。あなたも差別するの」
「いや、綺麗だなって思って」
「…………………そう」
今の間は、照れたのだろうか。表情にあまり変化が見られないのでよく分からない。
「そんなことより、黎一郎」
「何だ?団子食いてえのかァ?みたらし団子ならあるぜ」
「……そうじゃない。まあ、食べたいけど。でもそれは後。……気づいてないの?」
馨ちゃんは呆れた様子で神々廻さんに語りかける。
「あァ?うるせェ。俺が気づかねえ訳ないだろうが」
「……ほんと?さっきまで呑気にご飯食べてた癖に」
「おい、いい加減にしろよクソガキ」
小学生に馬鹿にされ、流石に腹が立ったらしい。神々廻さんは席を立ち、背中に背負った番傘を抜く。
「……って、別に小学生相手に傘なんて抜かなくても……!」
僕はてっきり神々廻さんがキレて、馨ちゃんに番傘を降りかかるのかと思ったから、流石にやり過ぎだと止めようとした。
しかし、彼の狙いは馨ちゃんではなく──────
……何故か、この僕だった。