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ならずや黎一郎  作者: 有氏ゆず
第一話 その男、ならずものにて
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1-3





「あァ、コイツこう見えても結婚してるんだぜ」

「そ、そうなんだ……てっきり僕と同い年くらいかなあと」

「えっ、そんなに若く見えますか?」

「おう、若い若い」


……成程。つまりこの人はこの食堂の女将さんみたいなものなのか。

道理で落ち着いた雰囲気を纏っていると思った。


「そんな黎一郎さんにサービスです」

「お、みたらし団子じゃねェか。しかもこんなにくれるのかよ」

「馨さんの分と併せて、です。一人で全部食べてはいけませんよ」


……かおる?また新たな名前が出てきた。

そもそも僕はここの常連でも何でもない。何なら一見さんだ。当たり前のように名前を出すのはやめて欲しい。




「お客様も、どうぞ」

「あ、ありがとう……」


僕の前にも同じみたらし団子が置かれる。

僕、あんまり甘い物好きじゃないんだけどな。しかしせっかくのサービスだ。食べないのも失礼に当たる気がする。


そう思いながらみたらし団子を口に運んだが、正直めちゃくちゃ美味しくてあっという間に食べきってしまった。








「そういやさ、なんか普通に僕に絡みに来てるけど、アンタ誰なの」


みたらし団子を食べ終わって一息つき、僕は先程から一番気になっていたことを口にする。


「そうですよ、黎一郎さん。お友達になるには、まずは挨拶からです」

「……あァ?お友達ィ?」


物凄く嫌そうな反応をされたが、同じ反応を返してやりたい。僕だってどう見てもホームレスみたいな奴と友達なんて御免だ。




「チッ……俺ァ、神々廻黎一郎だ」


思い切り舌打ちをして名乗られた。

《ししば れいいちろう》……何処かで聞いたことのある名前だが、思い出せない。何処で聞いたんだろうか。


「珍しい苗字ですよね。私は氷室(ひむろ)純子(じゅんこ)と申します」


自分も名乗らないと失礼だと思ったのか、女性も名乗ってくれた。

この流れだと、僕も名乗らないと失礼な気がする。


「直樹将吾です。……よろしく」


純子さんはともかく、この男……神々廻さんとは絶対によろしくしたくはないけど。まあ、形式的に。




「……そういや、馨ってのは誰なの?」


先程名前が出てきた女性。いや、男性かもしれない。馨なんて、どっちでも有り得る名前だ。


「あァ……馨ってのは、口煩い奴だ」


物凄く簡潔に説明された。分かる訳が無い。


「こら、そんなこと言っちゃ駄目ですよ。そういえば、馨さんは今どちらに……?」

「いつもは俺に執拗いくらいぴったり《ついてきて》離れないんだがなァ……たまにこうやって気まぐれにどっか行きやがるんだよ」


これじゃあ男性か女性かすらも分からないのだが……口振りからして恐らく子供、なのだろうか。

まあ、別に僕には関係の無いことだし、どうでも……。










「……まァ、どうせ陰魔に魅入られた人間でも探してやがるんだろうが」










……どうでも、良くは無くなった。




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